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【死ぬほど頑張る】を極めてしまった 〜社畜は異世界でやり直す〜  作者: 汚醜
第二章 盗賊

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第24話 獣人村

 盗賊団の拠点に潜入した。

夜のイルミネーションのようにカゲクイソウが至る所に生えている。所々にある、見惚れるほど透明な宝石の結晶が光を拡散させ、足下を照らす。お陰で明るさにも困っていない。そして奥には一際大きく、周りの家々とは違い木造の建物があった。間違いなくあそこが本拠地だろう。しかし窮屈な場所だ。空に蓋をされただけでここまで不安になるのか。

 顔が見えないようにやや下を向いているせいで前がよく見えないにも関わらず、人の気配を多く感じる。


「あ!騎士団の人達だ!!」


 前から知らない声が響く。騎士団というのは間違いなく盗賊団を討伐しに来た俺達のことだろう。バレている。

 俺以外も明らかに焦っている。ソウとバイヨンは何時でも武器を取れるように構えているし、その他は思考を巡らせている。


「今日はどんな冒険をして、どんなお宝を持ってきたの?」


 ''今日は''ということはいつも冒険に行っているのか。もっと思考を巡らせろ。お宝とは何か。こんな盗賊団以外に出入りしない場所で使う言葉ということは、間違いなく盗品のとこだろう。それを俺達に向かって言うだろうか。

 ダメだ。考える時間が長ければ長いほど不自然になる。何か言わないと。


「残念ながら今日は何も無かったよ。」


 マリーが口を開く。そうだ、それが今のところ最適解。


「そっかあ、残念だったね。じゃあお菓子とかは無かった?」

「本当に今日は何も得られなかったんだ。ごめんね。」


 マリーが大胆にも頭を撫で出した。確かに淡白な反応でそそくさ逃げても違和感がある。しかしフレンドリーに接し過ぎるとボロが出始める。ここは程々にして行かないとだめだ。


「……っ!?」

「どうしたの?」


 マリーが驚いたように手を止めた。何があった。フードを深めに被っているせいでよく見えない。


「奥の方のお姉ちゃん……もしかして。」

「私か?」


 子どもがバイヨンの方に顔を向ける。頭の方に指を指した。小声で話し始める。


「へへへ、ちょっとフードが盛り上がってるよ。獣人なのに外に出たの?」

「獣人が外に出たらマズいのか?」

「当たり前でしょ。僕だって外に出たいのに。」


 ソウが慌ててバイヨンの口を塞ぐ。今後バイヨンは喋らせない方が良さそうだ。いつボロが出てもおかしくない。


「いけないんだーいけないんだー。そんなことしてるんだったら、騎士団の偉い人にバラしちゃうぞ!」


 まずい。話の流れ的にここでいう騎士団は俺たちにとっての盗賊団のことだ。もちろん偉い人とやらにバレたら一発アウトだろう。


「ちょ、ちょっと待って!実はこの子を内緒で連れてったのは私なの……。もし偉い人にバレちゃったら、私達騎士団を続けられないわ!許してくれないかしら……?」


 いつも城から抜け出しているミザリーは身元バレに敏感みたいだ。ここを平和に抜け出すには情に訴えかけるしかない。下手に出るのは少々危険な気もするが、ナイスだミザリー。


「うーん……じゃあ今からみんなで集まるから一緒に遊んでよ。」

「……え!?」


 手招きされたので、その子に弱みを握られている俺たちはついて行くしかなかった。

 着いたのは洞窟の端っこにある、グラウンドを4等分したくらいの公園だった。真ん中に大きな木が立っている。


「遅いぞーコロ!」

「へへへ、ごめんごめん!」


 この子の名前はコロというらしい。4人いる仲間の元に向かって走り出した。相手側もこちらに気づいたようだ。そのうち3人が一歩後退りして、残った一人が困惑を隠しきれず頭を抱える。そのまま喉の浅いところから出たような声で喋り始めた。


「……その人たちは?」

「最近人数足りないと思ってたから、新しく遊び相手連れてきた!」

「遊び相手って騎士団じゃねぇか!!」


 驚愕するコロの仲間に、ミザリーだけがペコりとお辞儀をする。


「いつまでフード被ってるの?早く脱ぎなよ。」


 コロに促される。ここは人の気配が少ない。おそらく脱いでも大丈夫だろう。

 ソウが脱ぐのを見て他の面々もフードを脱ぎだした。

 次の瞬間、驚愕した。


「やっぱり獣人だったんだ。同類だもん、分かっちゃうよ。」


 そう話すコロ、いやその仲間達全員の頭には獣の耳が付いていた。


「成程。この集落の人々から私と似た匂いがした訳です。」


 1人冷静なバイヨンが自分の耳を触りながら話す。


「当たり前でしょ?ここには騎士団以外に獣人じゃない人なんて居ないよ。」


 またボロが出る。ミザリーが目配せすると、バイヨンは口をチャックするようなジェスチャーを見せた。

 この集落の人々は獣人で構成されているということか。よく考えてみればジパランで獣人を見たことはない。何故ここには集まっているのだろうか。


「なるほどな、こりゃ予想外だ。」


 ソウが腕を組みながら考え事を始めた。


 ボール遊びに誘ってくる子ども達を上手くあしらって、木の上にある秘密基地へ入れて貰った。丸い机を囲んで全員が座る。

 しばらくの静寂を断ち切るようにマリーが口を開く。


「さて、ようやく作戦会議の場が出来たね。目標は覚えてる?」

「勿論。この中の構造、敵の配置とかを把握して脱出することだよね。」

「うん、合ってる。でもあの子達を何とかしないと。」

「申し訳ありません。私が獣人であるばかりに面倒なことになってしまいました。」

「獣人であることは悪くないよ?でも勝手に着いてきて足を引っ張っていることには怒ってるけどね。」


 マリーがバイヨンに顔を近づける。バイヨンは真顔のまま硬直している。このメンタルだけは見習いたいものだ。

 そんな様子も気に留めず、1人あぐらを胡座をかいて思考する騎士が居た。


「ソウ?」

「……獣人ってのが引っかかるな。十中八九、昔の事件と繋がってんだろうな。」


 バイヨンの耳が立つ。ソウが神妙な面持ちで続けた。


「15年前だ。イツキとマリーは知らねぇだろうが、獣人と一部騎士団によるクーデターが起きた。」

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