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【死ぬほど頑張る】を極めてしまった 〜社畜は異世界でやり直す〜  作者: 汚醜
第二章 盗賊

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第23話 進捗:さらなる深みへ

 ジメジメと、やりようもない不快感に襲われる。

 ギリギリ壁と前の人が見えるだけで、どう進んでいるのかはさっぱりだ。


「これ、ちゃんと合ってる方向に進めているのですか?不安が止まりません……。」


 バイヨンにおんぶされたミザリーから気の抜けた声が漏れ出す。

 その様子に少しイラついたのは俺だけでは無いはずだ。


「アナタ一番楽じゃないですか。俺と変わってくれません?そこ。」


 敢えて俺が率先して文句を言った。ソウとマリーはメンタルを破壊するレベルで毒を吐きそうだからだ。


「だめですわ!私のバイヨンですから。」

「当然です。言うまでもない。」


 いや、このお気楽2人組のメンタルを破壊することなどできるのだろうか。

 蒸発しきれなかった汗が額を通り抜けて顎から落ちた。足も1歩ずつ重くなっていくのを実感する。


「……足跡を辿ってるから多分間違いないよ。この先に何かがある。」


 マリーの眼鏡は、暗視に加えて魔力の流れが見える。そのまま迷いなくズンズン進んでいくマリーに振り回され続けて20分ほど経っただろうか。


「ン?なんか明るくなってんな……。奥の方に向かって空間も広くなってる。」


 ソウの一言でようやく気付いたが、確かに最初より明るくなっている。徐々に明るくなっていたから気づかなかった。マリーが足元の草を採取する。


「これのせいだね、“カゲクイソウ”。普通の植物は日光で育つけど、このカゲクイソウは闇を吸って育つ。お陰でこの草の周りは青く発光するんだ。ちなみに食べることもできるよ。冷えた水分を中に溜め込んでいるのが特徴だね。」


 持っていた水で軽く洗って、マリー以外の全員が同時に食べてみる。

 葉っぱにしては分厚く、噛んでみるとドロドロした液体が口に飛び出してくる。一瞬泥でも飲み込んだかと思い、反射的に吐き出してしまった。


「ちなみに味は最悪ね。あれ?食べちゃったの?」


 マリーが申し訳無さそうな顔で振り返る。あまりにも苦すぎて頭が痛い。


「ひっどい……何だこれ。」

「ウッ、ツメタイ……スイブン、デスわ!!」

「あ?そうか?別に食えねぇこたぁねぇよ。」

「今私は姫様と同じものを口にしている!!それが!嬉しい!!」

 

 意外にも感想はそれぞれ大きく違った。


 更に歩みを進めて十数分。さらに空間が広がる。下を向いていた俺に見えるように緑のローブが差し出される。


「ここからは着ていた方がいいらしいですわ。」

「これを被っていたところで直ぐにバレるのでは……。」

「この盗賊団では何があってもローブやフードを外さない決まりになっているらしいですわ。」


 最初に会った盗賊達と同じものだ。ソウがマティアスからの依頼で事前に作成していたらしい。あんなヘンテコな甲冑だが、一応騎士団に所属しているらしく、ソウよりも上の階級だったことが判明して逆らえなかったとのことだ。

 ちなみにマリーはマティアスの部下として働いており、丁度ソウと同じくらいの階級だ。

 盗賊団に存在する謎の決まりに困惑しながらもローブを受け取ると、強力な力で取り上げられた。


「貴様ッ!!姫様の触れたものに気安く触れるな!!」

「バイヨン。」

「とは言うつもりもない。好きにするがいい。」


 なんだコイツら。

 哀れみに近い目つきで見つめていると、俺と愚かなメイドの頭に拳骨がヒットした。


「お前らッ……。静かにしろよッ……!建物が近くにあんだろがッ……!!」


 よく目を凝らすと、ソウの言う通り殺風景な洞窟に変化があった。岩でできた丸い家だろうか、いくつも集まって集落のようになっている。まるで魔物が住み着くダンジョン。その手前には簡素な門と見張り台があった。ここが盗賊団の根城。抜け落ちていた緊張感が一気に戻って来る。

 奥にいたソウが静かに戻って来る。


「じゃ、軽く作戦会議すんぞ。」


 ソウの合図で近くの岩陰に集合する。観察した結果、監視塔の上にいた人影は1つ。しかし隠密できる人がいないため、どうにかすることは不可能だろう。よってここで待機して、どのように入るのかを観察することにした。

 しばらく時間が経った後、5人組の盗賊がいくつかの戦利品を抱えて門へと進んでいく。

 あれはマティアスがボコボコにした盗賊達だ。確か穿孔機だか。持っているカゴいっぱいに食料が入っている。

 さぁ、どんな方法で監視は味方を判別しているのか見せてもらおうじゃないか。

 門の下にたどり着く。全員が固唾を飲み込んで静かに見守った。

 ――しかしなんのアクションもなく通り過ぎていく。


「はぁ、1番最悪なパターンだね。」


 まさかの顔パス。当然といえば当然か。全員の顔を覚えられない規模ではないだろう。早速行き詰まった。

 そんな中、バイヨンが手を上げる。


「違和感を発見しました。ええ、もちろん確実ですとも。」


 圧倒的自信満々な真顔に不安を感じているのか、ソウが渋い顔で質問する。


「おう、確実なのはいいんだが内容だよ。何見つけたんだ?しょうもないもんだったらお前の言葉はこれから信用しねぇぞ。」

「では、あちらをご覧下さい。」


 ビシッとバイヨンの掌と顔が見張り台の方へと向く。視力が足りず、その先はボヤけててよく見えない。


「なるほど、バイヨンは獣人なので目が良いのです。その視力で暗号などを確認したのでしょう。」


 ミザリーが解説を入れる。なるほど、初めてこの人達がいて良かったと感じた。


「そこまで複雑なことでもありませんでした。」


 簡単な合図で済ませているなら、あの一瞬で通り抜けたということに納得がいく。

 バイヨンが両手を合わせて横に倒し、その上に頭を置く。


「よろしいですか?あの見張り台の上にいる人物。……寝ております。」


 村の中へ入ることに成功した。なんなんだよこれ。

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