第22話 のうナシまぞく
「君分かってる?さっき何もしてなかったくせに口を挟む余地なんてあるわけないでしょ。しかも的外れなこと言われると尚ムカつく。」
魔族が絡むとマリーの口調は荒くなるらしい。
この状況をなんとかしなければ。必死に周囲を観察する。
――ある一点に目が留まった。ラキィの胸には階級を示すと思われるバッジがついていた。そしてこの魔族にも。
白の星1つ。ラキィのバッジは黒の星3つだった。隊長というのはかなり位が高いはず。ソウに小さく話しかける。
「あの……あのバッジの意味ってどういうことなんですか?」
ソウも重い空気に気圧されているのか、声がかなり小さい。
「……チッ、あれか?あれは階級を示すやつだな。プレートの色が上から順に黒、茶、緑、黄、白、そして魔王は紫だ。枠の色は所属している隊。特殊な部隊は変な色だったりもするがな。魔王以外は星で区切られてる。最大で3個、最低で1個だ。」
考えれば考えるだけ疑問が浮かぶ。目の前の魔族に枠なんてものは付いていないように見えるが。
「位が低いにも関わらず、魔王の勅命で単独行動をしていたってこと?なんでそんな面倒くさいことをしてるんだろう。」
思ったより声が大きくて焦った。この静まり返った空間にはよく響く。マリーが鋭い眼光をこちらに向けたのを見て、ソウがフォローを入れる。
「はあ……言われてみれば確かにな。今までこんなの聞いたことねぇし、俺でも気付けるレベルでつけてくんならやる意味が無ェ。もうちょっとよく審議してもいいんじゃねぇか?アンタも洗いざらい話したほうが互いの為になると思うぜ?」
魔族の口が小さく開いた。口の端がピクピクと震えている。
「本当は……。王の勅命というか、適当な仕事を押し付けられただけで。私が何もできない無能だから……。その……。」
しばらくまともに話してくれなかったので話をまとめてみた。
最初は兵士としての役割を果たそうとしていたが、虫も殺せない甘すぎる性格から、非戦闘員としての役割を任されるも全て足手まといになった。
要はこの子が何もできないから一番安全で失敗しても影響のないことを魔王から任されたらしい。その仕事の内容はこの森の監視。
ちなみにここはほとんど人も来ず、ここを拠点とする盗賊の方もわざわざ魔族に近づいたりはしないため安全。監視した結果の報告義務すらない。
それをなんと数百年続けているという。窓際社員というやつだ。
正直、前の世界の自分と照らし合わせてしまい、可哀想に感じてきた。
「正直これは殺しても殺さなくても変わらないんじゃない?ここは平和にいこうよ。」
マリーの機嫌を伺うようにそーっと顔を除く。ジトッとした目。呆れたような口。
頼む、誰かもう一押し。と、思っていたところにソウが追撃を入れた。
「お前も一応騎士なんだろ?無駄な殺生は避けるのが俺らの決まりだったはずだ。何より、多数決的にはこいつら3人が殺さない側だろうし、お前に決定権はねぇよ。」
「私は無駄な殺生だとは思わない。コレはこの世界にとっての癌でしかないから。はあ……私は納得してないけど、これを許すのは今回だけだから。」
圧倒的不機嫌オーラを漂わせているも、彼女はできるだけ俺達を尊重しようとしてくれているみたいだ。
これはつまり、許されたということか。
「ヨイショー!!」
ミザリーが大袈裟に喜ぶ。
ソウは少しニヤけている。バイヨンは空気と同化していた。
縄を解くと、魔族が笑顔になった。勢いよく立ちあがる。尻の砂をほろってこちらに向き直った。
「ふぅ、魔族だからってすぐに攻撃したらだめなんだぞー。じゃ!我は王の勅命があるのでな!!」
「うん、雑務にも満たない無駄働きね。」
マリーが毒を吐くと、魔族が苦しそうに悶えた。そんな様子を尻目にソウが口を開く。
「そういえば魔族さんよ、ここの森になんか怪しいもんとかなかったか?例えば盗賊の拠点とかな。」
400年間。彼女がこの森の監視をしている期間だ。確かにこの森のことを誰よりも知っているはずだ。怪しいものの1つや2つ見つけていてもおかしくない。
「うーむ……人間であるお前らを助けるのは駄目な気もするが……。まあ友達だもんな!教えてやる!」
「いつから友達になったの。」
豪快にソウの肩を叩いて笑う魔族に、またマリーが毒づいた。
そして現在、この森に存在する断崖絶壁の麓に来ている。ここは何度も通ったはずだが?
魔族に誘われて木の上に登る。
「ん?」
1本とても脆い枝がある。ちゃんと登って見てみると切れ目が入っていた。1週ぐるっと切れているのに地面に落ちることがなく、1方向にしか曲がらない。
微妙な顔付きで、枝を指差しながら魔族を見つめる。
「ここらへんに同じような枝の木が3本もあったぞ!!」
魔族は腕を組みながら自慢げに言った。正直ため息しか出なかった。魔族はそれを見てしょぼくれている。
「アテが外れたかな……。」
俺の一言にマリーの指摘が入る。
「いや、動きが機械的すぎる。流石におかしいでしょ。」
「そうだな、3つ同時に動かしてみようぜ。」
マリーとソウが言うままに枝を引いてみた。一番手前まで引くと、枝の一部が発光して魔法陣の形になる。すると静かに崖の一部が回転して大きな洞窟が現れた。空いた口が塞がらない。そういえばここは魔法の世界だった。俺の小さな発想力を悔いた。
「ふふーん……で、さっきのは何のため息だったのかな?」
魔族の口が小文字のオメガみたくなっている。そして顔が近い。
分かったすごいすごい。
「なるほど、木の上にギミックがあるんじゃ誰も気付けないわけだ。この子を殺すのを止めてくれた皆。そして悔しいけど、サボらずに仕事していた君の功績だよ。」
マリーが微妙な顔持ちになる。魔族を認めたくないのだろう。魔族が照れくさそうに鼻の下を擦ると、マリーが張り手をしたため木の上から落下した。
下に降りて、この洞窟をしっかり観察してみる。深い、そして暗い。この先には何かが確実にある。そんな気迫を感じさせる。しばらくぶりの景色の変化にワクワクが止まらない。
マリーとソウがそそくさと先へ行こうとするので、俺は簡単に挨拶を済ませることにした。
「あー、俺達はここでお別れかな。えーと……。」
「マギコォだ!未来の最強剣士マギコォ・ジャウカーン!覚えておくといい。」
拳を堂々と腰に置いてアピールする。底なしの明るさ。こいつとは是非ともまた会いたい。
「未来の最強剣士よ。覚えておけ、お前の主をぶっ倒すのはこの俺、柴又伊月だ。」
「えーっ!?」
愕然とするマギコォに手を降ると、振り返って闇の中へと歩みを進めた。
洞窟の入口が自動的に塞がると、当たりは真っ暗闇になった。
「おい、色々あって忘れてたけどよ。姫様達どうするんだ?」
「あ。」
初期メンバー3人で扉を開くギミックを探すも、暗すぎて見えない。手探りで探し出すのは非現実的だし、あるかも分からない。
しばらく経ってマリーが口を開く。
「いつ盗賊団が来てもおかしくない。このまま探していてバッタリというのが最悪のパターンだ。仕方ないけど先に進もう。」
拳と拳をぶつける音がする。
ソウが腹を括ったように言った。
「問題ねぇ。この扉をぶち壊す。」
「そんなことしたら侵入したことがバレるでしょ。痕跡を見た盗賊団に拠点を移動されて、この森ですらなくなったらあの魔族も頼れない。ここは進むのが懸命だね。」
怒りを通り越したソウは真顔になった。ミザリーは冷や汗を垂らしながら苦笑いしている。今更やらかしたことに気づいたのか。
重い足取りを壁伝いに奥へと進める。不安で堪らない偵察任務がついに本腰に入った。
ルールルールルル……
神「こんにちは!神の部屋へようこそ……。今日も誰かの紹介をしていくぜ!今日はコイツだ!」
名前 マティアス
年齢 「数えるの忘れてた」歳
誕生日 3月23日
趣味 コーヒーを淹れる(飲めないけど)
特技 手先が器用
身長/体重 212cm(ウサミミ込み)/150kg(鎧込み)
弱点 リアクションがデカすぎる人
また来週〜!




