第19話 正義のみかた
バーバラの魔法講習が終わって、宿に戻り始めた頃には完全に暗くなっていた。
今できることをまとめると、体内の魔力を筋肉へと押し込むことで力を引き出す“強化魔法”、魔力で体を覆う“魔力装甲”に加えて、火属性の魔力を体外へ放出すること。実は全て、厳密には魔法とは言えないものらしい。
暗い道を進んでいると、何か鈍い音が徐々に大きくなるのに気づいた。
「ごめんなさい……ごめんなさい…………。」
――足音を殺してその場所へと近づいていく。家の影へと潜む。
4人程の集団が、1人の人間を取り囲んでいる。集団リンチか、盗賊といいなんて治安の悪い国なんだ。
「あの……何をしているんですか?」
小さな声で刺激しないように姿を現す。向こうは驚く様子もない。4人のうちの1人が口を開く。
「ははは!何だ、ただの人間かよ。何ってこいつをよく見れば分かるじゃねえか!悪の種を取り除いてんだよ。こいつ、よく盗賊に紛れて盗みをはたらいたりしてるからなぁ!」
たった今リンチにあっていた人を観察する。
死にかけだ、殴られて消耗している。ボロボロの布を纏っているだけで服は着ていない。髪や体も汚く、まともな生活を送っている人間では無さそうだ。よく見ると頭の上から耳が生えている様に見える。
しかしこんなこと、どんな理由だろうと許されたことでは無い。
「その子、今にも死にそうですけど。」
「殺そうとしてるから当然だろ。しかも獣人だしな。もっと苦しめてもいいところだ。それにしてもお前も死にそうな面じゃねぇか。大丈夫か?」
腹が立った訳ではない。気づけば走り出していた。強化魔法を全力でかける。拳に炎を纏った。
1番前のやつの顎を思い切り吹き飛ばす。
軽く脳震盪を起こしたのか、ジタバタしても立ち上がることはない。
それを見た周りの奴らが騒ぎ出す。
「てめぇ!何してんだァ!!」
敵も強化魔法を使用する。
炎自体はただの現象に過ぎないため、質量を押し出すことによるダメージはない。炎が出せたところで、現段階では一気に強くなったとは考えにくい。油断すれば人数不利でやられるだろう。
手前の1人が走りだした。
「死ねぇ!」
ナイフが鼻先を掠める。素早く屈んで、ソイツの足を払った。暫く動けないようにしようと思ったが、他の2人も近づいてくる。
「闇よ。這い寄り、滲み、掴めッ!」
俺の足下が暗くなると、影が足を掴む。動けなくなった。
魔法を使った奴とは別の巨漢が更に距離を詰める。走るスピードは遅いが、筋肉質なため、倍率強化である強化魔法の恩恵が大きい。攻撃を貰えばただじゃ済まないだろう。
俺は前方に向かって指を指した。まるで銃のように。
「穿て!」
そう言うと、人差し指の先から魔素が放出される。
実はマリーから指輪を貰っていた。勿論魔道具で、『穿て』の合図で魔素の弾を放つことができる。
球は巨漢の横を通り過ぎ、魔法を使っている男にヒット。足の拘束が解ける。
巨漢の攻撃を躱して、カウンターを数発浴びせると簡単に倒れた。
「ま、待ってくれ!何故そこまで……!」
何か言いかけた男を無視して攻撃、起き上がっていた男も戦闘不能にした。
「こ、怖かった……。」
勝てたのは運が良かったとしかいえない。相手も舐めてかかっていたから倒せた。
一段落着いて、虐められていた子に話しかけてみようとしたが、その前に走り去ってしまった。
「おい。」
俺が通っていた道の角から声が響く。振り返ると、影に紛れて人の姿が見えた。近づいてくる度に光が強くなる。
「何で助けたんだ。」
全身が硬直するほど鋭い声、正体はソウだ。ミザリーの時もそうだが、人間観察が趣味なのだろうか。
「なんでって……そりゃ可哀想だったからですよ。」
「アイツも盗賊団と同じだ。人のモノを盗んで生きてやがる。暴力を受けたって当然の報いじゃねぇか。」
「でも死にそうだった。」
ソウが更に距離を詰めると、目の前で止まった。俺の額に強く人差し指を押し付けながら口を開く。
「自己満野郎が。お前みたいに自分の主観だけで生きてるやつは、自分の行動に伴う責任が分かってねぇ。テメェが助けたことで助けが必要になるやつもいんだよ。バカが。」
確かにあの子は再び盗みを繰り返し、困る人が増えるだろう。しかしあの場は助けない訳にはいかない。もっともらしい理屈にしようと悩んでいると、ソウは指の力を強め、俺のことを軽く押し飛ばした。気づくとソウは居なくなっていた。
あまり星がよく見えない空だった。今日、ソウは宿に帰っていないらしい。その日はよく眠れなかった。
ルールルールルル……
神「こんにちは!神の部屋へようこそ……。今日も誰かの紹介をしていくぜ!今日はコイツだ!」
名前 マリー
年齢 21歳?
誕生日 11月2日
趣味 技術が要らない運動、魔道具のメンテ
特技 子どもと打ち解けるのが早い
身長/体重 171cm/「教えないが……?」kg
弱点 寒いとこ、苦いもの(何故か飲む機会が多い)
また来週〜!




