第16話 チートおみくじ
最近不穏な噂を聞きました。
曰く、『男を出すと読者が減る』だそうな。
いやそんなことないでしょ。ない……ですよね?
止めきれなかった。よくよく考えたらあんなの無理難題すぎる。俺たちだけ、俺たちだけでやるのか。盗賊団も魔王軍も全部。
確かに魔王討伐に向けて戦闘経験は積んでおきたい。だがこんな最初から難易度が高くていいのだろうか。
隣で歩いているのは青騎士ソウ。巻き込んでしまって申し訳ない。当たり前のようにマティアスが行かないと言ったので、王様の命令で一緒に盗賊団討伐に赴くことになったのだ。
こいつにあまり良い印象はないが、この世界では珍しく常識人らしい。この状況を前にして白目を剥いて無になっている。
そして今俺たちは城を出て教会へ向かっている。そういえば流れに身を任せすぎていたせいで聞くのを忘れていたことかあった。
「今なんで教会に向かってるの?」
「まあ、着いてからのお楽しみ。」
「なんだよそれ……。」
マリーが胸を叩いて楽しそうに笑った。苦しいことではないとは言うが、正直この人が言うと何にも期待できない。
「ゲッ着いちまった……俺ァ教会が嫌いなんだよ!」
ソウが毒づく。そういえばこいつ教会の前で何かやらかしたとか。連れて来てよかったのか?
教会の扉を開けて中に入る。結婚式以外で入ったことなんてなかったが、人が居ないとなんとも寂しい場所だ。特に感動もない。奥にいるのは神父さんだろう。いや、服装はプロテスタントに近いので牧師さんだろうか?歳は40程に見える。
「ようこそいらっしゃいました。私はここの神父のメリンと申します。確か冒険者様御一行と……神様でしたかな?」
ニコニコと出迎えられたかと思ったが、神父は嘲笑うかのような表情をソウに見せつける。
「ああああ!!うぜぇな!!来るんじゃなかった……。」
「まあそれはさておいて……恩寵、ですかな?」
自分から絡んだ癖に、神父がソウを無視してマティアスに話しかけた。
「ああ、さっさと頼む。」
「ではこちらへどうぞ。」
神父が奥にあった扉へ手を向けた。促されるがままにその前に来た。
マリーは無表情、それに対してソウの顔はなんだか不満げだ。
本当にこの先には何があるんだ……?
俺が開けるのを躊躇っていると、横から神父の手が伸びる。
ガチャ。
「ようこそ、神の書斎へ。」
カンフー映画のようなポーズで眼の前の空間に備える。
正直身構える程のものではなかった。現代風に言うなら図書館のような、ただ本棚がずらりと並んだだけの部屋。しかし、部屋の真ん中には禍々しい紫の書見台があった。
「さて、もうご存知かもしれませんが。あなたにはこれから恩寵を授けます。」
「ご存知なかったです……。」
「言ったでしょ?期待していいって。ワクワクタイムの始まり。」
マリーが無表情でピースサインを掲げる。立ち尽くしている俺を見て、ソウが話しかける。
「チッ、魔王退治に向いた恩寵が受けられるとは限らねんだ。糠喜びにならないように期待はすんじゃねぇ。」
「いやいや、いきなり過ぎて糠喜びすらないんですが。」
ソウはさっさと終わらせろと言わんばかりに、大きく舌打ちをした後にそっぽを向いてしまった。
マティアスが改めて説明を始めてくれた。
「これからイツキの体に宿る恩寵を活性化させる儀式が始まる。恩寵、個人に宿る特殊な力のことだ。まぁ、薄々感じ取れたとは思うが、恩寵の内容はランダムだ、必ずしも戦闘に向いたものとは限らない。とんでもなく地味なものの可能性もある。」
「ちょっと上がってた期待感下げないでおいてくれませんかね……。」
「期待しすぎると痛い目を見るってことだよ。でも、イツキには受けられる恩寵が2つもある。つまりチャンスは2回あるんだ。」
「さぁ、始めましょう。準備は宜しいかな?」
神父が書見台の奥に立って言った。俺は小さく頷く。
「では……天にまします主よ、あなたがこの世界に、あなたが創りなさったこの身に注がれているように、彼女にもあなたの栄光をお与えください。」
マティアスが神父に宝石を渡す。ダイヤモンドだろうか。一瞬輝くと塵になって消えてしまった。
次の瞬間、部屋中に夥しい数の魔法陣が現れた。とてつもない光を放ち、視界が真っ白になった。しかし照明が壊れたときのように一瞬で元に戻った。
「な、何が起きてるんです!?」
視界が歪み始めた。光の当たり方も何かおかしい。照明の側の手の平が暗く、裏が明るくなっている。光が反転しているのか。他の人達に視線を向ける。
「!?」
そこにいたはずの皆が黒い影になっている。音もなんだかノイズが混ざって歪んでいる。
「あ、しん、ろイマ、だ、け。」
誰かが喋っているようだがうまく聞こえない。部屋の隅からは光が消えていた。すると光の線が俺を貫通する。いや、書見台に集まっている。
今度は世界が元の明るさよりやや暗い程度に戻った。
「終わった……ですね。ではお探し、ださい。あ……の恩寵を。」
言われるがままに部屋を歩き回ってみる。すると、1冊だけ薄く光っている本を見つけた。何となく手を伸ばしてみようとした。
「ん……?」
10冊分ほどの幅で隣にある本がギラギラに輝き始めた。次の瞬間には空中に文字まで浮かび上がってくる。
「こ……れ、に、しろ?」
どういうことだ。薄く光っている方には何の意味がある。これが2つの恩寵ということか。
そういえば何故日本語なのだろうか。レストランのメニュー表は異世界語だったのに。
「どう……たんだ?」
マティアスが近寄ってくる。距離が縮まる度にその本の光が強くなり『早く』と浮かび上がってきた。
その文字に急かされたので、光が強い方の本を取ってしまった。手を乗せた瞬間に光が消滅する。
「おい大丈夫か?」
本に手をかけたまま立ち尽くしてしまったので、マティアスに肩を叩かれた。
「いや、本がふたつ光って……。」
「2つ?人によって見え方は違うが1つに絞られるはず……。」
マティアスが首を傾げる。俺何かやっちゃいました?不安そうにキョドキョドしていると、また一筋の光が本を指す。
「見えたか?よく分から……ど、次は怪しい……は選ばんように……ろ。」
光った本を取ろうとすると、後ろの本にまた同じ現象が起こった。今度はそのまま普通の本を取ってみる。
すると光の消えざまに。
「ふざけるな……?」
なんとも不気味だ。これで俺死んだりしないよな?
「よし、終わったな。じゃあ早速明日からは……。」
ドクッ、心臓の鼓動が一瞬遅れた。
胸を見ると一筋の光が俺の心臓を貫いていた。後ろを振り向く。
今度は2冊じゃない。1冊だ。その本には大きく文字が浮かび上がっていた。『これにしろ』と。
「3つ目……?」
ルールルールルル……
神「こんにちは!神の部屋へようこそ……。今日は誰かの紹介をしていくぜ!今日はコイツだ!」
名前 柴又伊月
年齢 21歳
誕生日 11月25日
趣味 ラノベ、ゲーム、漫画を描く
特技 収集
身長/体重 172cm/64kg
弱点 感情に振り回されがち
また来週〜!




