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【死ぬほど頑張る】を極めてしまった 〜社畜は異世界でやり直す〜  作者: 汚醜
魔女の追憶

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第13話 マリーの誕生3

 やや身震いしたが丁度いい。両頬を軽く叩いてポーチを受け取る。


「確かに同感だね!本当に私の実力についてこれるのかテストしなくちゃ。」


 マットの顔を見つめて言った。私は反応を気にも留めず、直ぐに魔王軍の元へと走り出した。

 今は好奇心が止まらない。魔王軍とは何か、魔道具の性能はどうか、私はどこまでいけるのか。


 家の外に出た瞬間、焦げているような悪臭が私の鼻を劈く。周囲を見渡せば直ぐに原因が分かった。北の方から黒い煙が上がっている。そこに吸い寄せられるように私は足を動かした。

 景色が流れる度に衰えた町の様に変化していく。自分だけが進む世界から置いていかれると錯覚した。

 そして道の角を曲がった時に奴らは居た。鎧を着た二本角の集団。何が目的かは分からない。ただ破壊の限りを尽くしている。周囲には倒れている人が幾つも見えた。少なくとも人間を殺すことに躊躇はないのだろう。

 吐き気が止まらない。首がどうしようもないほど疼くので掻きむしった。人間とほぼ変わりない生物の筈なのに、百足や毛虫のような嫌悪感が走る。

 そして目が合ったときに一瞬で理解した。お互い問答無用だと。

 直ぐにポーチから小型の銃を構える。数発放つも、扱い慣れていない為か全く当たらない。相手もこちらに接近してきた。

 相手がぶつぶつと詠唱をしながら魔法陣を展開する。

 本来、魔法陣というのは見えないモノだ。長い歴史の中でそう進化している。色や展開の仕方などで粗方攻撃を読むことができるからだ。恐らく目にかけている魔道具のお陰だろう。

 赤い、腕に巻き付くように小さな魔法陣が複数見える。


「爆発系……?」


 私が呟くと、相手が動揺したのか隙が生じる。

 3m程の距離、流石に外すことは無い。更に何発も放った。

 しかし照準はブレて、皮膚が露出しているところに当たったのは僅か1発。頬に風穴を空けた。それを見た他の仲間が助けに入ってきた。ここにいるのは10人。分隊か。

 流石に不利すぎる。何の違和感もなく戦闘を開始したが、記憶を無くす前は単独行動が可能な程に強かったのだろうか。

 敵の中でも一際魔力の波動が大きな奴が前に出て剣を構えた。


「よくもやってくれたな。」


 出てきた言葉はとても短い。怒りに満ちている表情。こうも分かりやすい光景なのに、どうして私は理解を拒むのだろうか。

 コイツも人間を殺しているじゃないか。その言葉と感情が出てくる筈がない。

 

「種族感で争ってるんだ。恨み言は王様に言って。」


 私が再び銃を構えると、急に視界がぼやけた。目の前の魔族が2つになって見える。

 いや、視界に狂いはない。相手が分身したのだろう。


「分かりやすい恩寵で助かるよ。」

「こういうのは単調な程使いやすくて強いもんだ。お前こそ大丈夫なのか?まるで魔力を感じない。」


 2つの影が横並び同時に動く。双方に意識を向け続けるのは無理だ。各個撃破が現実的だろう。幸い他の魔族が出しゃばる様子はない。

 とにかく横に広がられると不利だ。縦に並べておきたい。しかし距離を取ろうにも機動力では大きく負けている。

 ……そういえばこの靴も魔道具か。魔道具の力はそれ自体が本来持つ用途や逸話に影響されると聞いたことがある。よく考えてみれば靴の先だけ削れているというのはおかしい。まるで走るためだけに作られたようだ。

 元々魔道具の試験運用のためここに来たのだ。足に魔素を込めてみる。

 次の瞬間、膝へ大きな力が伸し掛かった。


「なるほど……単調な程使いやすくて強い!!」

 

 右斜め後ろへ大きくジャンプした。壁で視線を切って不意打ちを狙ってみる。勿論こんな単純は手に乗るとは思っていない。相手の出方で攻略の糸口を探るのだ。

 魔族は角で待ち構えていたパターンを警戒したのか、やや距離をとって姿を現した。意外にも2体同時にだ。少しタイミングをずらせば簡単に挟み撃ちにもできた筈だ。そもそも分身のメリットはそういった所にあるはずだ。よく考えろ、この違和感が勝ち筋だ。

 お互いが離れることに何か不都合がある。強化魔法の出力から言って、力が等分されている気配はない。本体がどちらか本人すら知覚することができないと仮定しても、魔力を感じない私に対して守りに入りすぎではないか。

 つまり離れることができない。分身を操り人形のようにしか扱えないのではないか。仮説でしかないが試す価値はある。

 再び建物の角へと逃げる。体が2つに増えるような恩寵ならば操るのは相当難しい。何か1つでも感覚を奪えばかなりやり易くなる筈だ。

 ポーチの中からカラフルな鉄の容器を取り出す。小さな噴出口があって、完全に密封されている。中には液体が入っているようだ。毒にしてはポップすぎるので、おそらく染料だ。魔道具となって強化されている。目潰しとしてはかなりの効力があるだろう。

 また同時に出てきた。遠慮なく中身を吹き付ける。中身は煙だったようだ。都合が良い。あっという間に辺りを包んだ煙は視界を奪う。しかし私のレンズ型魔道具は魔力の影を捉えた。


「予想的中。動きが鈍いぞ!!」


 片方の影の動きが止まり、もう片方が逃げ出していく。そっちが本体か。

 今度こそ外さない。両手で持ち手を包み込む様に固定する。弾丸は真っ直ぐ魔族の心臓を捉えた。

 魔力の影は地面に伏した。


「やっぱりちゃんと試してから戦うべきだった……。」


 正直甘く見ていた。今日はこのくらいにしておいて後はマットに任せよう。

 しかし、どうもやりきった筈なのに違和感がある。風が冷たい、私がかいた冷や汗から熱を奪っているのだ。

 

 ――煙が晴れた途端戦慄した。死体どころか、血痕すらない。


「……ブラフ!?」

「そこか。詰めが甘かったな。」


 後ろに魔族の本体が居た。

 煙の中で動かしたのは偽物の方だったのか。

 剣を振りかざしている。もう防げない。


「まぁ……合格点かな。」


 それは剣よりも早かった。気づくと拘束された魔族が壁に寄りかかっていた。

 よくもまぁ、その図体で素早く動けるものだ。思えば魔道具の加工なんて高等技術をなぜ一個人ができたものか。魔法への尋常じゃない理解度が成し遂げる技だ。

 そんな人物が弱くて良いはずがない。どんな変な見た目であったとしてもだ。


「ありがとうマット。」


 ちっとも誇らしげに見えない。これくらい成し遂げて当然のことなのだろう。

 

「マリーをアルメリア王国騎士団ジパラン特設部隊副隊長に任命する。」

「別に騎士になりたかったわけじゃないんだけど……給料は出るんだよね?」

「マリーが新しい仲間を見つけるまでは保証する。」


 周りの状況をよく確かめてみると、魔族の騒ぎはすべて収まっているようだ。マットの功績であることに全く疑いはない。

 この人の近くに居れば、魔王を倒す方法も簡単に見つけられるかもしれない。

 期待を胸にその日は幕を閉じた。

マリーって戦闘IQ高すぎないですか?読んでて不気味に感じました。マリーは他の人たちと比べて頭が良いので意図的であるといえばあるのですが……。伊月もちゃんと考えて戦うせいで、それを上回るマリーはどこか戦闘AI感があるんですよね。

原因がわかる方いらっしゃいましたら、ご教授頂けませんか<(_ _)>


伸びが悪くなったので、7:00に時間を戻してみます。

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