第10話 仲間
すかさずツッコミを入れる。
「流石に俺も反対ですよ。明らかに仲わるわるのバラバラパーティになりますって。」
こんな2人を抱えた冒険なんて想像するだけで胃が痛い。喧嘩を常に取り持つバケモノコミュ力が前提条件だ。つまり俺には無理である。
「いーや私は気に入った。仲間にするなら絶対コイツにするんだね。他は絶対に後悔するぞ。」
「勝手に話進めてんじゃねぇ!俺は絶対に御免だからな。」
騎士が机を思い切り叩く。
おい、僕だけの特別キングお子様セットの旗が取れちまったじゃねぇか。
「こっちから願い下げ。早くかえって、土に。」
マリーも立ち上がって騎士とメンチを切った。
眼力はマリーが勝利した様だ。騎士は舌打ちしながらそっぽを向く。
「お前とは話してねぇよ!!もういい!!俺は帰る。」
乱暴に扉を閉じる音がすると肩の力が抜けた。ようやく落ち着ける。全員が自然とぼやく。
「魔族のこと以外で怒るなんて、らしくないじゃないですか。」
「医者のくせにバーバラも殴りかかってた。あーもう!あいつがイライラさせるのが悪い。」
「俺はあいつが仲間になると確信してるけどね。」
「何を根拠に……一緒に冒険する俺のことを考えてください。」
確かに仲間はもう1人欲しい。戦える、性格がいい、気が合う、なんてなかなか揃う条件でもないだろう。妥協するんだったらあの騎士も視野に入れなければ。
「あ、そうだ。お前に異世界転生のボーナスについて話してなかったな。ついでに神様とやらのことも気になるし。」
「ボーナス……。」
「そうだなぁ……俺があの騎士と戦ってたときに恩寵とか言ってたの覚えてるか?」
あの戦いのことは1フレームも欠けることなく思い出すことができる。『恩寵』はマティアスがラキィの高速移動に対して発していた単語だ。
「恩寵……神が人間に与える恵みですか。」
「まあそういう意味もある。でもこの世界では魔法と異なる特殊な能力のことを指すことが多い。この恩寵は基本的に1人1つだ。」
マティアスが勿体ぶるように間を空ける。
「で、ここからが重要なんだが、世界間を移動すると恩寵が1つ増えるという法則が確認されている。つまり転生者の恩寵は2つだ。」
「よく分かりませんが魔法で良くないですか?」
「いや、そんなことはない。魔法なんかとは比べ物にならないほど強力なことがあるからね。」
「恩寵が物につくと魔道具になる。」
マリーがスカーフを触りながら言った。そういえばマリーの服や持ち物は、この世界からすれば異世界のもので統一されている。全部魔道具ということだろう。
「マリーは恩寵を何十個も持っているようなものってことなのか。」
「そんな単純ならみんな魔導具師になってるよ。実際は人間につく恩寵より弱いことが多いし、魔力じゃなくて魔素ってのを使うから凄く効率が悪いし。」
「魔素?」
「頚椎で魔力に変換される前の状態を魔素っていうの。空気とか森羅万象色んな物質の中に含まれてる。体にため込める魔素の量は生まれつき決まってて、私はたまたま多めだったから良かったけど、これが平均レベルならこんな戦い方できたもんじゃない。しかも魔道具って、ものすごーく高価なんだよ。これ一個で家が買えちゃうから。」
「私に感謝してよねホント。掻き集めるって、モノスゴーック大変なんだよ。」
マティアスが低いトーンで威圧すると、マリーがポンコツ顔になった。コイツ、只の貰い物で自分事みたいに自慢してたのか。
それにしても魔道具1個で家が買えるレベルだとは。この世界に来た時、盗賊に服を脱がされたのはそういうことだったのか。
しかし、魔法が使えないのはかなり苦労するらしい。マリーはなぜそこまで足掻いてまで魔王を倒そうとするのだろうか。
「マリーはどうして魔王を倒しに行こうと思ったんだ?」
マリーは氷が入ったコップをクルクルと回して遊んでいる。視線すらこちらに向けずマリーは答えた。
「私、何故か心の底から魔族が嫌いなの。魔王は特にね。もしかしたら記憶がなくなる前に相当酷いことされたのかも。」
「え?」
「記憶喪失。だから首の傷のことも分かんないし、正確な年齢も分かんないし、故郷も友人も……。でも自分のことが分からないなんて絶対に嫌。私の事を心から待ってくれている人が居るかもしれない。記憶があった頃の私が死ぬほど後悔してあることがあるかもしれない。そう思ったらいても立ってもいられなくなってね。要は知っている人を探すついでに憎き魔族をボコボコにできるなら最高って感じかな。」
「なかなか濃い話をサラっと……」
中身が無いように聞こえるが、何故か俺の肌が冷えるほど、それは大いなる意思を孕んでいた。それが嘘のように、食事を終えたマリーは豪快に水を飲み干すと、お腹が満たされたからか幸せそうな顔で机に突っ伏してしまった。
「まあそれよりも、だ。ずっと聞きたかったことがあるんだが、イツキは元の世界に帰る手立てがあるんだって?神様だか。」
「神ですって?またバカな話を。」
バーバラがパスタを噛み切ってこちらを向く。やっぱり神様の話はこの世界でも不思議なものらしい。
「神様って転生者みんなが出会うものじゃないんですか?俺にもよく分からないんですけど。」
「うーん……?聞いたことがないな。」
「私は会ったことあるよ?」
マリーが起き上がりざまに頬ずえをついてニヤリとする。
マジかよ、あれとマリーがどんな化学反応を起こしたのか気になるところだが。
「ほら、前教会の前で叫んでた人居たじゃん。『俺が神だッ!!』って。」
「イツキが見た神様は青いツンツンヘアーで騎士の鎧を着てたか?」
「そんなんじゃないですよ。てかそれさっきの騎士じゃないですか。」
「へへへ、どうかな。」
「昔の話も、あとでちゃんと教えて欲しい。」
その日の夕食は何となくモヤモヤとしたお開きになってしまった。
ここら辺は書きやすかったですよねぇ。文から何も考えてないのが伝わってくる。
それにしても最近PV数が増えたものです。皆さんありがとうございます。にしても、更新していない昼や深夜にもある程度の読者さんが集まっているように見受けられます。新着欄ではなさそうですが、皆さんは何処からこちらへいらしたのでしょうか。是非教えて欲しいです




