キミと共有したい
体が弱っていて、ああー、無理かも、と思う時って、誰にでもあるよね。私は、そういう時に、今までに見たキレイなものや景色などをまとめた写真フォルダを、ぼんやりと眺める。そうしていると、落ち着く気がする。
「あー、これいいなー……あっ? しまっ、ミスった……」
ぼんやりと色々な写真を眺めて回復していたつもりだったのだが、誤操作で写真を共有してしまった。いま付き合っている彼氏のLINEに、誤操作で送られてたのは、散歩している時に見かけたキレイな夕方の色に染まる空。キレイな夕焼け空だなとは思うけど、それをいきなり無言で送りつけるのは頭おかしいよ。
慌ててどうにかLINEって削除とかできないんだったっけと思って見たけど、私が慌てているあいだに既読も返信も来ていた。
『キレイな夕焼けだけど、あやか、急にどうかした?』
あやかというのは私の名前だ。私は慌ててどうにか返信をする。
『気にしないでいいよ、さとの。誤操作で共有しちゃっただけだから』
さとのは彼氏の名前。こんな説明でよかったかなと少し心配になってたら、さとのから電話がかかってきた。
「はっ。え? もしもし? さとの? 何?」
「いや、まあ、大したことじゃないんだけど……あやかは何してたの?」
「私? 私は、……ちょっと体が弱って沈んでたから、なんかキレイなものでも見たいかな、って。キレイなものとかをまとめてるフォルダを眺めてたの。そうしてると、なんか落ち着く気がするんだよね」
「ふーん、そう……。なんか、いいね、そういうの。でも、一人で眺めてるだけでいいの?」
「え?」
「オレの勝手な意見だけど、そういうの、二人で共有する方が楽しいんじゃない? 沈んでる時なら、なおさらさ、オレがあやかの側で気持ちを引っ張り上げてあげたいよ」
「……さとのにそんなかっこいいこと言われたら、私、甘えちゃうよ?」
「いいよ、オレはあやかのためなら」
「ははっ、さとの、かっこいー……。じゃあ、どうしよっか、これからは、沈んでる時はさとのと共有するってことでいい?」
「沈んでる時だけでなく、元気な時も、なんか、いいなって思ったらとりあえず共有してほしいな。一緒に、色んな気持ちを楽しみたい」
「……さとのって本当にかっこいいね」
「……なんだよ?」
「いや、さとののそういうとこ、好きだなあって思っただけ」
「そっか、オレも、あやかの素直なとこ、好きだよ。……じゃあ、とりあえず、またな」
「ん、またね」
電話を切って、しばらく、変わらない画面を眺めてぼんやりしていた。さとのは本当にかっこいい人だ。
さとのの恋人でいられて、私はとっても幸せだなと思った。
〈了〉