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余命3ヶ月と言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました  作者: Karamimi


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番外編:お母様のお墓参りに行きます

「セイラ、明日は久しぶりに、王都の街に視察に行こう。せっかくだから、美味しいお菓子のお店もたくさん見て回ろうね」


 爽やかな笑顔で私に話しかけてくれるのは、ロイド様だ。彼と気持ちが通じ合い、私の病気が完治して1ヶ月が過ぎた。ロイド様は王宮で、私は公爵家でそれぞれ暮している。


 それでも毎日私は、王宮に来ている。今日も王妃教育後、2人でお茶を楽しんでいる。目の前には私の大好きなお菓子がこれでもかと並べられ、ホットミルクも準備されている。


「申し訳ございません。明日は王妃教育が終わったら、父と一緒に母のお墓参りに行こうと思っておりまして」


 私が奇跡的に息を吹き返して以降、少しずつだがお父様との関係も改善してきている。とはいえ、まだぎこちないが、それでも毎日必ずお父様と話す時間を作っているのだ。


「夫人のお墓参りか…」


「はい、母は私と父の幸せを強く望んでおりました。今私たちが幸せに過ごしている事を、父と一緒に報告したいと思いまして」


「それなら僕も一緒に行くよ。僕は散々セイラを傷つけ苦しめてしまったから、きっと夫人は僕に怒っているだろうし。きちんと謝罪したいと思っていたのだよ」


「母はロイド様を怒ってなんていらっしゃいませんわ。むしろ感謝していると思います。きっとロイド様が来て下さったら、母も喜びますわ」


 私の命を救い、沢山の愛情をそそいでくれるロイド様。きっとお母様も、ロイド様に感謝しているだろう。そんなロイド様が会いに来てくれたら、お母様も喜ぶはずだわ。


「それじゃあ明日、よろしくたのむよ」


 翌日

「ロイド殿下まで付いていらしたのですか。あなた様は毎日セイラを独り占めしていらっしゃるのですから、今日くらい親子水入らずの時間を与えて下さってもよいと思うのですが…」


 お父様が私の隣にいたロイド様を見つめ、あからさまにため息をついている。さすがに失礼だろう。


「公爵は毎日公爵家で、セイラと2人の時間が取れるでしょう。それに僕も、セイラの母上に挨拶をしたいと思っていたのです。天国の夫人にしっかり謝罪をして、セイラとの仲を認めてもらいたいのです」


 お父様に熱く語るロイド様。そんなロイド様に、お父様が小さくため息をついた。


「殿下、セレイナは最初からあなた様を認めていたと思います。彼女はセイラと同じように、心の優しい女性だったので…きっとあなた様に、感謝しているのではないでしょうか」


 お父様が少し寂しそうに、空を見上げた。そんなお父様の姿を見たら、胸が張り裂けそうになり、そっとお父様の手を握った。お父様には私がいますわ!そんな思いを込めて。


「セイラ、慰めてくれているのかい?君は本当に優しいな。それじゃあ、行こうか」


 お父様と手を繋ぎ、馬車に乗り込んだ。慌ててロイド様も馬車に乗り込む。


 まさかこんな風にお父様と一緒に、お母様のお墓参りに行く日が来るだなんてね。


 しばらく進むと、丘の上が見えてきた。あの丘の上に、お母様が眠っているのだ。早速3人でお母様の眠るお墓に向かった。


「セイラの母上のお墓は、とても素敵な場所にあるのだね。街が一望できる場所だなんて」


「母は生前、自分が亡くなったらこの場所に埋葬して欲しいと。既にお墓も準備していた様で。この場所は、母の大切な思い出の場所だそうです」


 お母様は生前、この丘が大好きだった。大好きな場所で眠りたいと自ら土地を買い、自分の入るお墓を建てたのだ。


「そうか…セレイナはこの場所を覚えていてくれていたのだな…ここにセレイナのお墓がある事を聞いた時、まさかとは思ったが…」


 隣にいたお父様が、ポロポロと涙を流し出したのだ。


 一体どうしたのだろう。


「お父様?」


「すまない、実はこの場所は、私がセレイナと一緒に、初めて2人で出かけた場所だったのだよ。婚約が決まって、ふらりと2人で出かけたのがこの丘だった。偶然だと思っていたのだが…」


「そうだったのですね。お父様とお母様が、初めてデートをした場所だったのですね。そんな場所にお母様は、自分のお墓を建てるだなんて。お父様を心から愛していたお母様らしいですね」


 私もお母様と同じく、ロイド様との思い出の場所に、自分のお墓を建てたいな。ついそんな事を考えてしまう。


「セレイナの気持ちも知らずに、私は…セレイナ、こんな愚かな私を愛してくれて、ありがとう。今更ながら、私は今でもセレイナを愛している。もし許されるのなら、どうかあの世で私に会ってくれるかい?」


 そう言うとお父様が、立派なバラとカスミソウの花束をお母様のお墓に備えたのだ。


 あら?このお花は!


「お父様、このお花は…」


「セレイナはバラとカスミソウが好きだったのだよ。せめて彼女の好きな花を供えたいと思って」


 お父様が準備した花、見覚えがある。お母様の月命日に必ず供えられていた花だ。使用人が供えてくれているのだと思ったが、皆知らないと言っていた。


 私がいけないときは使用人がお墓参りに行ってくれていたのだが、必ずこのお花が供えられていたらしい。


 まさかお父様が、お供えしていただなんて…


 毎月欠かさずお母様のお墓参りをしていたのね。そんなお父様の姿を見て、天国のお母様もさぞうれしかっただろう。


「セイラの母上。初めまして、ロイド・レアル・ボルリスと申します。僕の愚かな行いのせいで、セイラの命を奪ってしまった事、本当に申し訳ありませんでした。こんな僕がセイラの傍にいてはいけない事は分かっています。ですが僕は、セイラを誰よりも愛しています。これからは命を懸けてセイラを愛し抜きます。ですからどうか、天国で僕たちを見守っていてください。お願いします」


 今度はロイド様が、お母様のお墓の前で手を合わせ、お母様に話しかけていた。


「きっとロイド様のお気持ち、母に届いたと思いますよ。今日は一緒について来てくださり、ありがとうございました。天国の母も、今頃喜んでいる事でしょう」


 まさかお父様とロイド様と一緒に、お母様のお墓参りに来られるだなんて。


「セイラ、公爵も、これからは3人で夫人のお墓参りにこよう。きっと僕たちが一緒に来たら、夫人も喜ぶはずだし」


「そうですね、お父様、そうしましょう。これからは、3人でお母様のお墓参りに来ましょう」


「そうだな、きっとセレイナも喜ぶだろうな。殿下、セイラ、今日はありがとう」


 お父様がそっと涙を拭きながら、頭を下げてきたのだ。今まで顔色一つ変えなかったお父様が、最近は随分泣き虫になってしまった。


 でも私は、昔の何を考えているか分からないお父様よりも、今のお父様の方が好きだ。


「さあ、そろそろ帰りましょう。お母様、また3人で来ますね」


 お父様とロイド様の手を握り、お母様に挨拶をして歩き出す。


 一瞬クルリと後ろを向き、お母様のお墓を見つめた。


 お母様、あなたが亡くなってからずっと孤独でした。余命宣告を受け、死を覚悟したこともありました。


 ですが今は、愛する人たちが傍にいてくれます。私はもう、孤独ではありません。だからどうか、お母様も安心してください。


 心の中でそっとお母様に語り掛けた。


 その時だった。


 “セイラ、ありがとう。あなたのお陰で私は今、幸せよ。どうかお父様と殿下と共に、幸せな未来を歩んでちょうだい。愛しているわ、セイラ”


 今の声は…


「セイラ、急に立ち止まってどうしたのだい?」


 お父様とロイド様が不思議そうにこちらを見ていた。今間違いなく、お母様の声が聞こえたのだ。


 ただ…


「いいえ、何でもありませんわ。さあ、帰りましょう」


 にっこり2人に微笑みかけ、再び歩き出したのだった。

書き溜めていた番外編が全て投稿できましたので、一旦これにて完結にします。

最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m

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