第42話:溺愛カップルになりました
「セイラ、もうラファエルの姿は見えなくなったよ。いつまで手を振っているのだい?」
耳元で呟くのは、ロイド様だ。
「ロイド様、いつからいらしたのですか?それに王妃様も」
後ろには不機嫌そうな顔のロイド様と、ニコニコ顔の王妃様の姿が。
「いつからって、ラファエルが君に話しかけた時からずっと見ていたよ。ラファエルの奴、あのタイミングで僕のセイラに気持ちを伝えるだなんて。図々しい男だ」
「あら、ラファエル様はずっと、セイラちゃんの事を思い続けていたのでしょう?あなたから冷遇されていたセイラちゃんを支えたのも、ラファエル様だったわけだし。よかったわね、ロイド。セイラちゃんがラファエル様に気持ちが傾かなくて。私ならこんな薄情な婚約者よりも、辛いとき傍で支えてくれた殿方に気持ちが傾くわ。
それにしてもラファエル様が留学を決めた理由が、そういう理由だっただなんて。そりゃそうよね、今まで散々冷遇してきた婚約者が、急に大きな顔をして思い人を愛しだしたら、腹が立つものね。
たとえ仕事でも、そんな男を支えたいなんて思えないわ。ラファエル様は非常に優秀だもの。きっとシルバー王国でも活躍してくれることでしょう」
王妃様…いくら自分の息子だからって、ちょっとロイド様に対して酷すぎやしませんか?そう言いたいが、言える訳がない。
「別に僕はラファエルがいなくても、仕事をこなせます。そもそも、セイラを思っていた男を傍においておけるほど、器が大きくはありませんから。本当はさっきだって、セイラとラファエルを2人きりに何てさせたくなかったんだ。でも母上が、2人で話をさせろとうるさくて」
どうやら王妃様が、私とラファエル様を2人きりにして下さった様だ。
「王妃様、ラファエル様とお話しする機会を与えて下さり、ありがとうございました。お陰でお礼とお別れの挨拶が出来ましたわ」
「そんな事は気にしないで。セイラちゃん、本当によかったの?ラファエル様の事。今ならまだ間に合うわよ」
そう言うと、王妃様がウインクをしたのだ。
「母上、なんて事を言うのですか!セイラは僕の婚約者だ。誰がラファエルなんかに渡すか」
「王妃様、お気遣いありがとうございます。ですが私は、ロイド様を愛しております。それこそ、恋焦がれ病気になるほどに」
好きで好きでどうしようもない気持ちが大きくなり過ぎたことで、私は病気になった。それほど私は、ロイド様の事が大好きなのだ。
「セイラ、僕もセイラの事が大好きだよ。もしセイラがいなくなったら、今度は僕が恋焦がれ病にかかってしまうかもしれない。だからどうか、僕の傍にいて欲しい」
「ロイド、あなたはそんな繊細な病気にはかからないから、安心しなさい」
「母上は黙っていてください!セイラ、どうか僕を捨てないでほしい」
真剣なまなざしで訴えてくるロイド様。
「私はロイド様を捨てる事なんて、決してありませんわ。どうか安心してください」
「ありがとう。これからもずっと一緒だ。セイラと数時間離れただけでも、僕は気が狂いそうだった。やっぱり僕たちは、ずっと一緒にいないとダメだね」
ギュッと私を抱きしめるロイド様。この温もりがとても落ち着く。
つい4ヶ月前は、寂しくて辛くてたまらなかった。何のために生きているのか分からず、一人静かに生涯の幕を下ろすことを覚悟した。
でも今は…
「ロイド様、私は今とても幸せですわ。私の病気を治してくださり、ありがとうございました。あなたを恋焦がれて病気になってしまった私ですが、これからもよろしくお願いします」
「僕もとても幸せだよ。僕のせいで君には随分辛い思いをさせてしまった。随分遠回りもした。辛い思いをさせてしまった分、これからは目いっぱい愛情を注ぐから、覚悟しておいてね」
そう言って笑ったロイド様。
「ロイドもセイラちゃんも、お互い溺愛しているのね」
そう言って笑った王妃様。
お互い溺愛している…
その言葉がなんだか嬉しい。
私はきっとこれからも、ロイド様を溺愛し続けるだろう。だからロイド様も、私を思い続けて欲しい。
この命が尽きるまでずっと…
おしまい
これにて完結です。
この後少しだけ番外編として、今後の2人を書いていこうと思っております。
もう少しお付き合いいただけると、嬉しいです。
お読みいただき、ありがとうございましたm(__)m




