第33話:明かされる真実~ロイド視点~
何も話さない執事に、僕も公爵も視線を送る。
すると小さくため息をついた執事が、真っすぐと公爵の方を向いた。
「確かに私は、セレイナ嬢を愛しておりました。彼女は美しいだけでなく、誰にでも優しくて笑顔が素敵で、一緒にいるだけで幸せになれる人でした。あわよくばセレイナ嬢と共に未来を歩めたら…そう願った時もありました。ですが…」
一瞬悲しそうな顔をした執事だったが、すぐに元の真顔に戻った。
そして
「ですが、セレイナ嬢に、はっきりとフラれたのです。”私には心から愛している方がいます。私は彼の元に嫁ぎたい、だからあなた様のお気持ちには応えられません。申し訳ございません“と。ショックでした、正直私の方が、セレイナ嬢との仲は良かったと思っていたから。でも、違ったのです。セレイナ嬢は、ツィンクル公爵様、あなた様を愛していらしたのです。だから私は、身を引きました」
「そんなはずはない。セレイナはずっと君を…」
「それは本人から聞いたのですか?」
「いや…だが…」
「あなた様と結婚した後、時折寂しそうにあなた様を見つめている姿に、私はどうしようもなく胸が締め付けられました。ですが、彼女が愛しているのはあなた様なのだから、私にはどうする事も出来ない。そう思い、歯がゆい思いをしたこともありました。そんな中、彼女が病に倒れたと聞きました。まさか恋焦がれ病だったとは…
もしあの時、私があなた様にセレイナ嬢の気持ちを伝えていれば…もしあの時、あなた様としっかり話していれば、セレイナ嬢は命を落とすことはなかったでしょう。セイラ様も、寂しい思いをする事もなかったかもしれません。そう思うと、私はやりきれなくて…」
いつも冷静で何を考えているか分からない執事が、ポロポロと涙を流し出したのだ。
「そんな…それじゃあ、セレイナは、私を思って死んでいったというのか?そんな…」
泣き崩れる公爵に、執事がそっと寄り添った。
「あなた様だけのせいではありません。誤解を与える様な行動を起こした私にも、責任があるのです。セレイナ嬢にフラれたあの日、私はセレイナ嬢の幸せを間違いなく願っていたはずなのに…彼女が辛い思いをしている事を薄々気が付いていたのに、何もして差し上げられませんでした。
それはセイラ様にも言える事です。セイラ様が王宮で寂しそうにしていらしたのに、何もして差し上げられなかった。セイラ様は、あまりにもセレイナ嬢に似ています。セイラ様を見ると、胸が締め付けられて苦しくて…」
「いいや、君のせいではない。私が愚かだったのだよ。すまない、セレイナ。本当にすまない。私が愚かなばかりに、君を死なせてしまった」
声を上げて泣く公爵に寄り添い、涙を流す執事。彼らもまた、辛い思いをして来たのだろう。
「公爵殿、あなたは僕に似ておりますね。僕も一歩間違えれば、あなたと同じ道をたどっていた事でしょう。僕もセイラが病気になった時、何度も何度も後悔しました。過去に戻れるなら戻りたいと。
セイラの命が尽きた時ですら、僕は傍にいてあげられませんでした。僕は最後までダメな人間です。そんな中、セイラは奇跡的に息を吹き返しました。僕はもう二度と、セイラから離れるつもりはありません。
確かにセイラの母上の件は、もうどうする事も出来ません。ですが、セイラはまだ生きています。公爵、どうか今からでもセイラに目を向けてあげてください。セイラはずっと、あなたの愛情を求めていたはずですから」
「だが私は、あの子から母親を奪ったのです。その上、今まで父親らしいことを、何一つしてあげられなかった。そんな私が、今更父親面なんて出来る訳がない。セイラだってきっと、私の事を憎んでいるでしょう。母親を死に追いやったのだから」
「セイラがその事実に気が付いているかはわかりません。ですがセイラは、誰よりも優しい子です。僕はずっと、彼女に酷い事をしていたのに、それでもセイラは僕を愛してくれていました。僕の方こそ、どの面下げてセイラの前に顔を出したらいいのやら。それでも僕は、セイラが大好きです。ずっとセイラの傍にいたい。だから僕は、しっかりセイラに謝罪し、これからはずっとセイラの傍にいるつもりです。公爵はセイラの事が嫌いなのですか?セイラの傍にいたくないのですか?」
「いたくない訳ない。だが、私は…」
「ブツブツ言っていないで、一緒にセイラの元に向かいましょう」
公爵の腕を掴み、セイラの部屋へと向かった。




