表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/46

第31話:公爵との話し合い~ロイド視点~

 眠るセイラのおでこに口づけをした。


「セイラが元気になるまで、公爵家で寝泊まりさせてもらう事にするよ。今すぐ僕の荷物を持ってきてくれるかい?」


 近くに控えていた執事に指示を出す。


「殿下、何をおっしゃっているのですか?殿下が公爵家で生活をなさるだなんて、そんな事はいけません。それにツィンクル公爵様の許可も取っておりませんし」


「君は医者の話を聞いていなかったのかい?セイラは僕を恋しがったことで、命を落としたのだよ。今後セイラが回復する保証もない。そんな状況で、どうして僕がセイラから離れられるというのだい?もう二度と僕は、セイラを1人にしたくない。それに何より、僕がセイラと離れたくないんだ。公爵には、僕が話をするから」


 僕がいつも間違った道に進んでしまうせいで、セイラを苦しめ命まで奪うところだったのだ。もう二度と、間違いを犯したくはない。


 今まで無駄にした時間を、これからしっかり取り戻したい。もう二度と、セイラと離れたくない。もう二度と、セイラが苦しむことをしたくない。あんな思いをするのは、もうたくさんだ。


「ですが…」


「僕が公爵家で暮らすのが駄目なら、セイラを王宮に連れていくよ。とにかく僕は、セイラと離れるつもりはないから!そういえば、公爵はどこにいるのだい?セイラがこんな状況なのに、あの男はまだ王宮で仕事をしているのかい?どこまで薄情な男なんだ」


 夫人もセイラと同じ病気にかかって、命を落としたのだったな。きっと夫人は、公爵を思って死んでいったのだろう。夫人も気の毒だな…あんな男を愛したばかりに…


 その時だった。無表情の公爵が部屋に入って来たのだ。


「殿下、今日も来ていらしたのですね。セイラが息を引き取ったと聞いたのですが」


 顔色一つ変えずに、淡々と話す公爵。この男には、血も涙もないのか?娘が命を落とした(実際はまだ生きている)のに、こんなにも冷静でいられるだなんて。


「旦那様、おかえりなさいませ。お嬢様は殿下の深い愛情により、奇跡的に息を吹き返しました。ただ、まだ予断を許さない状況です」


「それはどういう意味だい?殿下の深い愛情で息を吹き返すとは…」


 さすがの公爵も、困惑している様だ。


「公爵、セイラの病名は恋焦がれ病だったそうです。僕が愚かなばかりに、セイラに不安な思いをさせてしまったせいで、セイラは僕への想いを募り募らせ、ついには病気になってしまったそうです」


「恋焦がれ病?そんな病気は聞いたことがない」


「公爵が聞いたことがないのも、無理もありません。どうやらこの病気は、本人以外伝える事が出来ない病気だそうです。たまたま傍にいた使用人たちも、他の者に口外する事が出来なかったとか。まさに何かの呪いの様な病気の様ですね。ただ、セイラが息を吹き返した事で、急に話せるようになったそうですよ」


「そんな事があるのか?信じられない」


「公爵、今セイラは一命を取り留めてはいますが、この病気にかかった人間が息を吹き返したこと自体、初めての様で。今後セイラがどうなるかは、わからない様です。セイラは僕を恋焦がれるあまり、病気を発症しました。これ以上症状を悪化させないためにも、どうかセイラの傍にいさせてください。僕はセイラを愛しています。もうセイラと離れたくはないのです」


 自分でもびっくりする程、すらすらと自分の気持ちが出てくる。


「いつもクールで眉一つ動かなさい殿下が、こんなに感情的になるだなんて。そんな殿下の姿は、初めて見ました。セイラはまだ、あなた様の婚約者です。どうかあなた様の思う様になさってください、王宮に連れていくなら連れて行ってもらって構いません。ついでにセイラの使用人も、一緒に連れて行ってやってください。それでは私は、まだ仕事が残っておりますので」


 クルリと反対側を向いた公爵が、スタスタと部屋から出て行ったのだ。


 あの男、どこまで冷酷なのだ。娘が一命をとりとめたというのに。


 それに僕が好きな様にしていいだって?確かに僕にとっては有難い話だが、いくら何でもセイラが可哀そうすぎる。


 あんな男でも、セイラにとっては、唯一の肉親なのに!


 公爵に対する怒りがこみ上げてきた僕は、そのまま公爵の後を追ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ