第27話:覚悟は出来ています
首の後ろを見た瞬間、お医者様の目が大きく見開き、悲しそうな顔をした。その表情で、私は全てを悟った。
そして今にも泣きそうな目で、私を見つめた。そんな彼女に微笑む。
「セイラの容態はどうなのだ?かなり苦しそうだけれど」
「そうですね、随分と弱られている様です。もってあと3日というところでしょうか?」
「3日…」
3日だなんて、大げさね。持ってあと1日ということろでしょうに。
「ロイド様…そんなに悲しそうな顔をしないで下さい…元々余命宣告よりも、長く生きているのです…もういつ逝ってもおかしくはないのですから…」
私は余命宣告を受けていた3ヶ月よりも、長く生きているのだ。きっとあなたのお陰ね。
「ロイド様、あなた様のお陰で、私は幸せな3ヶ月を送る事が出来ました。私は今…幸せです…ですからどうか…」
「言わないでくれ!それ以上は…言わないでくれ…すまない、ちょっと席を外すよ」
ロイド様が部屋から出て行ってしまったのだ。言いたい事、まだあったのだけれどな…
それでも私は、もう悔いはない。
「先生…私の命、もう1日も持たないのではなくって?」
「お嬢様、なんて事を」
「分かるのよ…だって、自分の体の事だもの…胸の苦しみも、体の痛みも、今までに感じた事のないほど辛いのに。なぜか心は穏やかなの…不思議でしょう?きっともうすぐ、お母様が迎えにいらっしゃるわ。そんな気がするの…」
「お嬢様…」
「お嬢様、その様な事は言わないで下さい。私共は、もっともっとお嬢様と一緒に過ごしたいのです」
「殿下だって、お嬢様にもっと生きて欲しいと望んでいるはずです」
ロイド様が?
「そうね、彼は優しい人だから。でも、心のどこかできっと、早くミーア様と幸せになりたいと願っているのではなくって?そんな気持ちを抱えている自分が嫌で、苦しんでいらっしゃるのではないかしら?」
彼は誰よりも優しい人だ。
「だからね、私が亡くなったら伝えてほしいの…“私はあなた様の幸せを誰よりも願っています。どうかミーア様と、幸せになってください。それが私の最後の願いです”と。ゴホゴホゴホ…」
「承知いたしました、必ず殿下にお伝えいたします。お嬢様、もう話されない方がよろしいです。どうかもう…」
何かを感じ取ったのか、使用人たちが次々と私の部屋に集まって来た。皆泣いている。私の為に、涙を流してくれる使用人たち。
どうか皆がこれからも、幸せに暮らせますように。
「皆…お別れの時が来たようです…どうか皆、私の分まで幸せになってください…私はずっと孤独でした…でも、皆がいたから今まで生きてこられた…あなた達は、私の大切な家族です…」
「「「お嬢様」」」
お母様を早くに亡くし、お父様からも相手にされなかった私を支えてくれた、使用人たち。彼らの存在が、どれほど心強かったか。
“セイラ…”
この声は…
使用人の後ろでほほ笑んでいるのは、お母様だ。優しい眼差しで、ほほ笑んでいる。
お母様が、迎えに来てくれたのだろう。
お母様に向かい、にっこりとほほ笑んだ。
そしてゆっくりと瞳を閉じた。
こうして私の生涯の幕は、静かに降ろされたのだった。
次回、ロイド視点です。
よろしくお願いします。




