第24話:許すつもりはないが…~ロイド視点~
まさかこの女が、僕と結婚するために僕に近づき、セイラを陥れようとしていただなんて。セイラとラファエルの関係をでっち上げ、2人を断罪し、自分が次の婚約者に収まるよう、準備をしていたとは知らず、僕は…
そう、セイラとラファエルは、特に愛し合っていた訳ではない。ただ、ラファエルはセイラに恋心を頂いていた様だが、彼の片思いだったという事が、調査報告で分かっている。もちろん、セイラとラファエルが僕の目を盗んで密会していたという情報は、一切なかったことが分かった。
僕はまんまとミーア嬢の嘘に騙され、自らセイラから距離をとっていただなんて。情けなくて涙も出ない。
「お許しください、私はただ、ロイド様を愛していただけです。ですから…」
「愛していた?違うだろう。ただ王妃になりたかっただけだろう?僕に嘘の情報を流した件については、正直許せないが、それを信じた愚かな僕の責任でもあるから、仕方ないと考えている。でも、セイラとラファエルの仲をでっち上げ、2人を断罪しようとしていた件については、見逃せない。罪もない人間を、己の欲の為に消し去ろうとするだなんて」
「お待ちください、確かにその様な事を計画していたのは確かです。ですが、実際に行動に移した訳ではありません。ですので、どうかご慈悲を」
必死に僕に訴えるミーア嬢。こんな女に騙されたばかりに僕は…
本当は八つ裂きにしたいほど憎い。でも…
「とにかくもう二度と、僕の前に姿を現さないでくれ!それから、準備が整い次第、君を裁判にかける予定だ。本当は僕の手で君を裁きたいが、きっと僕は権力を使い、君に厳しい罰を与えるだろう。感情に身を任せて人を裁く事は、避けなければいけないからね」
「承知いたしました。本当に申し訳ございませんでした…」
真っ青な顔をして去っていくミーア嬢。もう二度と、あの女に会う事はないだろう。
自室に戻ると、執事を呼び出した。
「ミーア嬢を僕は訴える事にした。理由は分かるよね。もっと明確な証拠を集め、手配が整い次第彼女を裁判にかけてくれ。それから、ミーア嬢に加担した使用人や教育係も一緒に裁く手配を。使用人や夫人への尋問も頼む」
「承知いたしました。殿下、後は私共にお任せください」
いつも無表情の執事が、珍しく微笑んだのだ。一体どうしたのだろう。不思議そうに執事を見ていると
「殿下が私に頼って下さるのが嬉しいのです。殿下はいつも、お1人で何でも解決しようとなさるでしょう?確かに殿下お1人でも解決できるほど、あなた様は優秀な方です。ですが、たまには私共にも頼ってください。あなた様を支えるのが、私共の仕事ですので」
僕を支えるのが、彼らの仕事か…
「ありがとう、それじゃあ、後は頼んだよ。父上や母上にも、話しを通しておいてくれると助かる」
「承知いたしました。後は任せて下さい。もうお昼過ぎです。そろそろセイラ嬢の元に、向かわれた方がよろしいのではありませんか?」
「そうだね、セイラの元に向かうよ」
こうやって誰かに頼る事は、出来の悪い人間のする事だと思っていた。でも、そうではないのだな。
今回の件で、改めてそう思った。
そして僕は、急いでセイラの元へと向かう。最近随分と弱ってしまったセイラ。このまま命を落としてしまったら…そう考えると不安でたまらない。
今日は苦しんでいないといいな…
そんな思いでセイラの家へと向かった。
「ロイド様、今日も来てくださったのですね」
なんとセイラが、笑顔で迎えてくれたのだ。
「セイラ、体調は大丈夫なのかい?」
「はい、今日は少し体調が良くて、午前中は使用人に中庭に連れて行ってもらいました」
「この寒いのに、中庭に出たのかい?また風邪をひいたら、どうするのだい?」
しまった、つい興奮して、声を荒げてしまった。
「すまない、大きな声を出して」
「いえ、気にしないで下さい。ロイド様は、私の体を心配してくださっているのですよね。こうやって誰かに心配してもらえるのは、嬉しいものですね」
穏やかな表情でほほ笑むセイラ。こんな穏やかな表情を見るのは、久しぶりだ。それがなんだか、嬉しくてたまらなかった。
あとどれくらい、セイラの笑顔を見られるのだろうか…




