第23話:君の言う事などもう信じない~ロイド視点~
資料を手にした翌日、僕は久しぶりにミーア嬢に会う事にした。
「やあ、ミーア嬢。久しぶりだね。最近忙しくて、中々会えなくてすまない」
「セイラ様があのような状況ですもの。仕方がありませんわ。ロイド様はあの後、セイラ様にお会いになられましたか?」
「いや、僕はセイラの病状を知ってから、怖くて一度も会いに行けてなくてね。それに万が一、ラファエルに遭遇したら、ショックだろう。だから…」
「そうだったのですね。大変言いにくいのですが、ロイド様はセイラ様に会いに行かなくて正解ですわ。どうやらラファエル様は、毎日時間を見つけては、セイラ様に会いに行っている様です。余命宣告を受けているセイラ様を不憫に思われた公爵様も、黙認しているそうですわ。今セイラ様とラファエル様は、残り少ない時間を存分に楽しまれているとの事です」
言いにくそうに、それでもすらすらと話すミーア嬢。
「そうか…セイラの容態はどうかもわかるかい?」
「はい、基本的にお屋敷で過ごされている様ですが、たまにひっそりとラファエル様とお忍びでデートを楽しまれている様です。ラファエル様もセイラ様も、とても幸せそうでしたわ。セイラ様も“最期の瞬間は、ラファエル様に看取られたい”とおっしゃられておりましたし」
「ミーア嬢は、セイラに会ったのかい?」
「はい、セイラ様がお屋敷で余生を送られ始めてから、何度か足を運んでおりますわ。私が行くと、喜んでくださいますの。色々とお話をして下さって。セイラ様は、今が一番幸せだとおっしゃっておりましたわ。そうそう、ロイド様から早く解放されたいともおっしゃられておられました。大変申し上げにくいのですが、セイラ様の為にも、どうか婚約を解消して差し上げていただけないでしょうか?」
「そうか…セイラは僕との婚約解消を望んでいるのだな。セイラと婚約を解消したら、すぐに新しい婚約者をとの声が上がるだろう。そうなったら僕は、どうすればいいのだろう」
「確かに愛するセイラ様への気持ちは、簡単にはぬぐい切れませんわよね。ですがセイラ様の為にも、前に進まれた方がよろしいかと」
「確かにミーア嬢の言う通りだ。ミーア嬢、いつも僕を支えてくれてありがとう。君のお陰で、吹っ切れそうだよ」
「それは本当ですか?私でよければ、いつでも力になりますわ」
「ありがとう、でも、もう君の力は必要ないよ…君のお陰で僕は、セイラを随分と傷つけてしまったからね。ねえ、どうして僕に、嘘の情報を教えたのだい?」
真っすぐミーア嬢を見つめて問いかけた。
「嘘の情報とは、一体どういうことですか?私は…」
「セイラは苦いものや辛い物は苦手だそうだよ。それに子供の頃、蛇がカエルを捕食する姿を見てから、蛇とカエルが大の苦手だそうだ。でも君は、それらがセイラの好きな物だと僕に言ったよね?」
「そうでしたか?もしかしたら私、勘違いをしたのかもしれませんね。申し訳ございません、何とお詫びをしたらいいか…」
「それじゃあ、セイラとラファエルが愛し合っているというのも、君の勘違いかい?」
「いえ、それは勘違いではありませんわ。私、はっきりとセイラ様から話を聞きましたもの。昨日もセイラ様に会って、ラファエル様の惚気話を聞いてきたところですし」
「昨日セイラに話しを聞いたのかい?おかしいな、昨日は僕もセイラの家に行っていたのだが、君が来た記憶はないな。それにセイラは今、体調がすぐれずずっと寝て過ごしているはずだが…」
「ロイド様は、セイラ様の元にいかれたのですか?えっと…昨日ではなく、一昨日でしたわ。私ったら、最近記憶力があいまいで」
「一昨日も僕はセイラの傍にいたよ。正式に言うと、セイラが病にふせてから、毎日僕はセイラの元に通っているのだよ。その間、何度かラファエルがセイラを訪ねてきたが、一度も会わせてはいないし、使用人たちにも会わせないように頼んである。公爵家の使用人たちに聞いたが、君が訪ねて来た事はないと話していたのだが。ミーア嬢、君は一体、どんな妄想をみているのかな?」
「わ…私は、その…」
「君について、色々と調べさせてもらったよ。君、色々とセイラに陰で嫌がらせをしている様だね。王宮の使用人だけでなく、教育係の伯爵夫人にまで手を回していただなんて…僕の婚約者に酷い事をした王宮使用人や伯爵夫人には、近々処罰を下す予定だよ
とはいえ、君の言う事を鵜呑みにして、セイラを苦しめていた僕が大きな顔をして君に文句を言う権利はないよね…僕が一番愚かな人間だ」
こんな女の言う事を鵜呑みにしたばかりに、僕はセイラを傷つけ、大切な時間を無駄にしたのだから…




