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余命3ヶ月と言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました  作者: Karamimi


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第18話:あの頃と変わらない想い

 休憩を挟みながら、ゆっくりと森へと向かう。


「セイラ、森が見えて来たよ。体は大丈夫かい?」


「はい、薬も飲みましたし、問題ありませんわ」


「薬とは一体どういうものなのだい?病気の進行を遅らせるものなのかい?」


「いいえ、病気の進行を遅らせたりするような薬は存在しないので、その様な物ではございませんわ。ただ、症状が一時的に楽になる薬と伺っております。とはいえ、一時的なものですが」


「そうなのだね…」


「私の病気は決して治るものではありません。だからこそ、私は残り少ないこの命を、悔いのないものにしたいのです。天寿を全うし、天国にいる母に胸を張って会える様に。ですので、どうか私の命が尽きてしまったからといって、気にしないで下さい」


 この命が燃え尽き、お母様の元に行った時、お母様にはやっぱり怒られるかしら?私を唯一愛してくれたお母様はきっと、私に長生きしてほしかったと望んでいただろうから。


「セイラ、僕は…」


「森に着いたようですね。参りましょう」


 ゆっくり馬車から降りる。王都とは違い、ここはとても暖かい。


「暖かくて気持ちの良い場所ですね。なんだか胸の苦しみも楽になりますわ」


「胸が苦しいのかい?いつからだい?」


「申し訳ございません。ですが大したことありませんので、どうか気にしないで下さい。さあ、参りましょう」


 ロイド様と一緒に、目の前にある湖へと向かう。ただ、体調がいいとはいえ、長い時間馬車に乗っていた事もあり、体が思う様に動かない。


「お嬢様、そろそろお昼ご飯の時間です。こちらに準備させていただきますね」


 私の体調に気が付いたメイドたちが、近くに簡易のソファとテーブルを準備してくれた。


「申し訳ございません、ロイド様。思う様に足が動かなくて。お昼はここでよろしいでしょうか?」


「ああ、構わないよ。それよりも、大丈夫かい?少し顔色が悪い様な気がするが」


「問題ありませんわ。さあ、頂きましょう」


 あの時ロイド様と頂いたローストビーフのサンドウィッチと、シャインマスカットを持ってきた。


「このメニューは」


「はい、ロイド様と来た時と同じメニューを頂きたくて、料理長に準備してもらったのです。早速頂きましょう」


 ローストビーフのサンドウィッチを手に取ったものの、食べられそうにない。仕方ない、シャインマスカットを頂こう。


 シャインマスカットを2~3粒食べたところで、手が止まる。せっかくロイド様と一緒に思い出の場所に来ているのに。それがなんだか悲しい。


 食後は、ロイド様が買ってきてくださったお菓子とお茶でティータイムだ。


「湖の奥に、綺麗なお花畑があるのですよね。ロイド様が連れて行ってくれたお花畑、本当に綺麗でしたわ」


 今の私には、あそこまで歩く力が残っていない。それでも今日、ロイド様と一緒にこの場所に来られたことが、嬉しくてたまらない。


「そうだったね、セイラはお花畑を見て、目を輝かせていたね。僕の為に、花冠を作ってくれたのだったね。せっかくだから、行ってみよう」


 すっと私を抱きかかえたロイド様。


「あの…私、重いでしょう。どうか降ろしてください。そこまでしていただかなくても」


「セイラはとても軽いよ。このまま消えてしまいそうなくらい…僕たちは婚約者同士だ。これくらい気にしなくてもいい」


 真っすぐ前を向いて、スタスタと歩いてくるロイド様。初めて触れるロイド様の腕の中。心臓がバクバク音を立てている。ロイド様に聞かれたらどうしよう、そう思うほど、うるさいのだ。


 でも…温かくて大きな胸。私への同情心からくる行動だろう。それでも私は、嬉しくてたまらないのだ。


 しばらく進むと、あの頃と変わらない美しい花々が咲き乱れていた。


 美しい花々を見た瞬間、一気にあの頃の思い出がよみがえった。


 使用人が、すぐに私が座れる様に、敷物を敷いてくれる。その場所にゆっくり降ろしてくれたロイド様。


「ここまで運んでくださり、ありがとうございます。本当に美しい花々ですね。お花のいい匂いがしますわ。ここはあの頃と、ちっとも変っていないのですね」



 あの頃と同じ景色に、なんだか胸がいっぱいだ。


「僕も久しぶりに来たけれど、あの時来た時と変わっていないね。セイラ、体は大丈夫かい?無理をしてはいけないよ」


「大丈夫ですわ。綺麗な空気を吸ったら、なんだか元気になった気がします」


 あの時の様に気にかけてくれるロイド様。それが嬉しくてたまらない。


 私はやっぱり、ロイド様が好きなのだ。私達の状況はすっかり変わってしまったけれど、気持ちだけはあの時とちっとも変っていないのだ。

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