表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/46

第12話:彼女の為に出来る事~ロイド視点~

 僕の婚約者になったセイラは、毎日王宮に通った。どうやらセイラは、王妃教育がうまく行っていない様で、教育係から何度も叱責を受けていた。


 人目を避けて泣いている姿を何度も目撃した。僕と婚約したばかりに、セイラが泣いている。それが辛くて苦しくてたまらなかった。


 僕がセイラに出来る事は、一体なんだろう。そう考えた結果、極力彼女に関わらない事。せめて愛するラファエルとの時間を確保してあげる事。そう考えた僕は、極力セイラとの関りを避けようとした。


 でも僕は、セイラが大好きだ。セイラの気持ちを知ってからも、僕の気持ちが色あせる事はない。


 いいや、むしろ増々セイラの事が好きになっていく。セイラとの時間を少しでも取りたくて、毎日1時間お茶をする事を義務付けた。


 この時間だけは、セイラと一緒にいられる貴重な時間。でも、セイラにとってこの1時間は、きっと苦痛でしかないだろう。そう思うと、上手くセイラに話し掛けられない。


 本当はもっと傍にいたい、彼女の笑顔が見たい、隣で笑っていたい、そんな思いを抱きつつも、それは決して叶わない夢。


 せめてセイラの好きな物を準備してあげたい、でも僕は、セイラの事を何も知らない。そこで僕は、ミーア嬢にセイラについて色々と相談した。


 ミーアは僕に協力的で、セイラの好みを色々と教えてくれた。セイラは意外とワイルドで、蛇やカエルを好んでいるとの事。


 彼女の誕生日には、大きな蛇の皮をプレゼントした。セイラ、喜んでくれているかな?ただ、セイラはプレゼントを受け取った瞬間、顔を引きつらせていた。


 もしかして、愛するラファエルから受け取りたかったのかな?そう思い、落ち込んだ。それでも僕は、めげずにセイラが喜ぶプレゼント送り続けたが、どれも反応は微妙だった。


 やはり僕からのプレゼントは、嬉しくないのだろう。


 いっその事、婚約を解消してセイラを自由にしてあげたら…


 いいや、無理だ。たとえセイラが僕を愛していなくても、僕はセイラと一緒にいたい。彼女と離れるくらいなら、僕は…


 どんどん心が荒んでいく僕だったが、それでも僕は王太子だ。公務だけは完璧にこなした。上辺だけの貴族との付き合いも、上手くこなしていく。恋敵でもあるラファエルとも、それなりの関係を築いている。


「殿下、こちらの書類も目を通しておいてください」


 いつもの様に、ラファエルが書類を置きにやってきた。相変わらず、表情一つ変えないこの男。


 それでもセイラは、彼を愛している。


「ラファエルはいいね…僕は君になりたいよ」


 ポツリと本音が漏れてしまった。ゆっくりこちらを向いたラファエル。


「殿下。何をおっしゃっているのですか?…私も代われるなら代りたいです」


 切なそうに呟くラファエル。そうか、こいつもセイラが好きなんだよな。お互い愛し合っているのに、結ばれないのも辛いよな。


 セイラ…


 いっその事、ラファエルを排除してしまえば、セイラは僕の方に気持ちが動くかな?でも、ただでさえセイラは、王宮で辛い思いをしているのだ。唯一の心の支えでもある、ラファエルを失ったら…


 悩んだ末、ミーア嬢に相談した。すると


「ラファエル様はセイラ様にとって、心の支えの様な方です。どうかセイラ様の為にも、ラファエル様を傍に置いて下さい」


 そう言われたのだ。やはりセイラの事を考えると、ラファエルを排除するのは良くないか…


 悩んだすえ、ラファエルをこのまま傍に置く事にした。それがどんなに僕にとって辛い事でも、セイラが少しでも喜んでくれるなら…それが僕にできる事だから。


 セイラ、君が僕の事を好いていない事は知っている。だから僕は、君からラファエルを奪う事はしないよ。ラファエルとたくさん話をしてもいい、だからどうか、僕の傍にいて欲しい。


 たとえ心が通じ合わなくても、それでも僕は君が大好きで傍にいて欲しいから…


 でもいつか、もし願いが叶うのなら、僕の事も見てくれると嬉しいな…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ