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第1話:孤独です

 “セイラ、あなたは愛する人とではなく、あなたを愛してくれる人と幸せになりなさい。いいわね、分かったわね…”


 ベッドに横たわり、私の頭を撫でながら、何度も呟くお母様。


 “分かりましたわ。私、必ず私の事を愛してくれる人と幸せになります。ですから、どうかお母様も元気になってください”


 必死に訴えるが、にっこり微笑むとそのままお母様は瞼を閉じてしまった。お母様の瞳からは、一筋の涙が…


 次の瞬間、ぱちりと目が覚めた。またあの夢を見たのね…


 10年前、私が5歳の時に病気で亡くなったお母様。最近なぜか、毎日の様にお母様の最期の瞬間の夢を見る。まるで今の私を、お母様が戒めるかのように…


「お嬢様、やっとお目覚めになられましたね。早くご準備を。今日も王宮に向かわれるのでしょう」


 王宮…


 私は3年前、この国の王太子殿下でもある、ロイド様と婚約を結んだ。と言っても、お互い愛し合っている訳でなく、お父様と陛下が勝手に決めた婚約なのだ。とはいえ、私は初めて会った時から、ロイド様の事が大好きだ。


 口数は少ないが、それでも私を気遣って下さっていたロイド様が。


「お嬢様、朝食を召し上がっている時間はありません。馬車の中で軽食を召し上がってください」


 使用人に連れられ、そのまま馬車に乗り込んだ。そして、サンドウィッチを手渡される。1口で食べられる様な、小さなサンドウィッチ。


「ありがとう、でも、なんだか食欲がなくて…」


 最近食欲が全くないのだ。食欲どころから、体もだるい。もしかして私、何らかの病気にかかっているのかしら?最近頭がボーっとするし、胸も苦しい。


 ふとそんな事を考える。そしてそっと窓の外を見た。


 たとえ私が病気にかかったとしても、誰も心配しないか…お父様もロイド様も、私に興味がないのだから…


 お母様が亡くなってから…いいや、物心ついた時から、お父様はあまり屋敷にいなかった。公爵の仕事と、陛下の補佐の仕事が忙しいと執事は言っていたが、お父様は昔から私とお母様に興味がない。


 お父様は私を、政治の道具としか思っていないのだ。最近お父様と話したのは、3年前、ロイド様と婚約した時。あの時以来、全くと言っていいほど話をしていない。


 お母様が亡くなってから、ずっと孤独だった。だからこそ、ロイド様と婚約できた時、嬉しかった。これで私も、愛する人と幸せになれる。この孤独からも、解放されると。


 でも、そううまくはいかなかった。ロイド様は私になど、眼中にないのだから…


「お母様の最期の願い、結局叶えられそうにありませんわ…」


 空を見上げながら、そっと呟いた。


「お嬢様、王宮に着きましたよ。さあ、参りましょう」


 使用人たちと一緒に、今日も王妃教育を受けるため準備された部屋へと向かった。ロイド様の為に、必死に頑張っている王妃教育。ただ、私は要領があまり良くない様で


「セイラ様、そこは昨日教えたところでしょう?いい加減、マスターしてください」


 はぁっと先生にため息をつかれるばかり。先生もきっと、私の出来の悪さを呆れているのだろう。


 なんとか王妃教育が終わり、部屋を出る。今日も大好きな中庭に行こう。そう思い、中庭に向かった。


 私が王宮で唯一心穏やかにいられる場所。それがバラ園なのだ。中庭の奥にある、私の為に作られたバラ園。その場所が、唯一の居場所。


 今日もそこに向かおうとしたのだが…


「どうして私のバラ園に、お2人が?」


 私のバラ園で、楽しそうに話しをしているのは、侯爵令嬢のミーア様と、ロイド様だ。私には笑顔一つ向けないクールなロイド様、でもなぜかミーア様には時折笑顔を向けるのだ。ミーア様とロイド様は、子供の頃から仲が良かったらしく、ロイド様はミーア様と婚約を結びたかったらしい。


 でも、父親でもある陛下から私と婚約する様に強要されたと、王宮のメイドが噂で話をしていたのだ。


 楽しそうに話しをしているロイド様とミーア様を見たら、一気に胸が張り裂けそうになり、クルリと反対側を向くと、そのままその場を走り去った。

新連載始めました。

よろしくお願いします。

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