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二人きり・前編

 エヴグラフが持って来た蜂蜜ケーキやラスムスキー侯爵家が用意したお菓子と共に、紅茶を飲みながら談笑しているルフィーナ達四人。


「グラーファ、それならセドウェン王国特有の薬草を入手するルートも確保出来るのかな?」

「ああ。セドウェン王国の王妃は俺の叔母上だから、コネを使えば何とかなる可能性はある」

 アレクサンドルとエヴグラフは仕事の話で盛り上がっている。

「そう言えばエヴグラフ殿下は去年の社交シーズンはアシルス帝国にはおらず、諸外国を回っておられたのですよね?」

 リュドミラが興味ありげな様子だ。

「ああ、その通りだ、リュドミラ嬢。皇妃殿下(母上)の弟君や妹君、つまり俺にとっては叔父、叔母がいる国に滞在していた」

 フッと笑うエヴグラフ。

 エヴグラフは去年の社交シーズンにアリティー王国、セドウェン王国、ウォーンリー王国を回っていたので、アシルス帝国にはいなかったのである。

(確かに、エヴグラフ・アレクセーヴィチ殿下とは去年お会いしたことはなかったわね。ご挨拶をしたのは今年が初めてだったわ)

 ルフィーナは話を聞き、納得しながら紅茶を飲んだ。


「そういえばサーシャ、この前サロンで会った時話していた件は進んだのか?」

 エヴグラフが悪戯っぽい表情で切り出す。

「ああ、それは今言うところだったよ」

 ジャムを舐めて紅茶を飲むアレクサンドル。そして改めてリュドミラの方を向いた。

(サーシャ、何をするつもりなのかしら? リュダに関係ありそうなこと?)

 ルフィーナは不思議そうにアレクサンドルを見ていた。

「リュダと私の結婚の時期を早めようと思っているんだ。今年の夏の終わり頃に」

 アレクサンドルのヘーゼルの目は、真っ直ぐリュドミラのムーンストーンの目を見つめていた。

「サーシャ……!」

 リュドミラは顔を赤くしながら嬉しそうな表情である。ムーンストーンの目もキラキラと輝いていた。

「嬉しい……! 嬉しいわ、サーシャ!」

 喜ぶリュドミラの姿はとても可愛らしく、ルフィーナは思わず頬を緩めていた。

「良かったわね、リュダ。サーシャ、リュダ、まだ少し早いけれど、お幸せに」

 ルフィーナはまるで自分のことのように嬉しくなっていた。

「まさか、めでたい場を見られるとは、俺も幸運だ」

 エヴグラフも嬉しそうにフッと口角を上げていた。

「実はその話をする為に、リュダのご両親も呼んでいるんだ。多分そろそろ到着の予定だけど」

「サーシャ、準備が良過ぎよ」

 リュドミラはアレクサンドルの行動の早さに驚いていた。

「グラーファ、ルフィーナ、二人には悪いけど、私とリュダは途中で抜けさせてもらうことになる」

 嬉しさと申し訳なさが入り混じった表情のアレクサンドル。

(エヴグラフ・アレクセーヴィチ殿下と二人きり……)

 ルフィーナはチラリと隣に座るエヴグラフを見る。

「ああ、俺は構わない」

 エヴグラフは特に気にした様子はなかった。

(わたくし)も、大丈夫よ」

 ルフィーナもそう答えるのであった。

「それなら良かった。お詫びの代わりに、ラスムスキー侯爵家の帝都の屋敷(タウンハウス)の庭園を自由に見回ってくれて構わない。今、ラベンダーが咲いているからね」

 アレクサンドルは安心したように微笑むのであった。


 しばらくすると、リュドミラの両親がラスムスキー侯爵家の帝都の屋敷(タウンハウス)に到着した。それにより、アレクサンドルとリュドミラは結婚時期を早める話をする為にお茶会を離脱するのであった。


 ルフィーナとエヴグラフは二人残された。しかし、護衛や侍女がいるので完全に二人きりということではない。

「ルフィーナ・ヴァルラモヴナ嬢、せっかくだし、サーシャに勧められて庭園に行こうか」

 エヴグラフに提案され、ルフィーナは頷く。

「承知いたしました」






♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔






 ラスムスキー侯爵家の帝都の屋敷(タウンハウス)の庭園は広大だった。

 絨毯のようにラベンダーが咲き誇っている。ラベンダーは風によりそよそよと揺れていた。

 スッキリとした爽やかな香りが、ルフィーナとエヴグラフの鼻を掠める。

「良い香りだな」

「はい。落ち着く香りですわ」

 ルフィーナは落ち着いた様子で微笑んだ。

「ルフィーナ・ヴァルラモヴナ嬢、君のドレスは、この庭園を回る為に合わせたものなのか?」

 エヴグラフはルフィーナのラベンダー色のドレスを見ていた。

「いいえ、偶然ですわ。最近仕立てたドレスを着てみようと思っただけですの」

 ルフィーナはクスッと笑い、自身のドレスと咲き誇るラベンダーを交互に見た。

「そうだったのか。中々粋だなと思ったのだが」

 フッと笑い、ルフィーナからラベンダーに目を移すエヴグラフ。

「庭園のラベンダーに合わせたとお答えした方が良かったでしょうか?」

 ルフィーナは控えめに微笑み、少しだけ目を伏せた。

「いや、ルフィーナ・ヴァルラモヴナ嬢自身の答えが聞けて満足だ」

 エヴグラフはラピスラズリの目をルフィーナに向け、フッと笑っていた。


 風が吹き、ラベンダー畑がそよりそよりと揺れる。ルフィーナのダークブロンドの後れ毛と、エヴグラフの月の光に染まったようなプラチナブロンドの髪がなびいていた。

読んでくださりありがとうございます!

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同じアシルス帝国が舞台の作品はこちら→ 『幸せを掴む勇気』
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