第71話 せめて死ぬなら一緒って言ったのに
大怪物スーパーラヴァを1/5程までに切り崩したルナたちは遂に力尽きようとしていた。
しかしファスターの励ましで、何故か底力が沸き立つルナ。
それを見たアンドロジャナスは焦りからファスターとの対峙に根負けしてパワーバランスが傾く。
優位に立ったファスターは秘策を講じ、ジャナスお得意の瞬間移動を利用した攻略で撃退する。
急ぎルナ達の元へ駆けつけ死にかかるルカの応急処置をすると、ルナと怪物の切り取り破棄を入れかわる。
ジャナス準戦士とルナ・ルカとの2対2の戦いは激しさを増すが、それは前世での夢と全く同じ光景だった。
アンドロジャナス準戦士と2対2になったことで互角の勝負を繰り広げるルナとルカ。
一方―――
全ての解体に目処が立つファスター陣
《アブレーションもあと少しで終わる。
…… BROS、いよいよ例の頼む!》
「さすがファスターさん達、 あっという間だ! これで皆で飛ばした上空に漂う分も宇宙へ葬れる。さあ、墜ちてくる前に行くぞっ、メイッ!
爆発の瞬間、シールドを上向きに解放するんだ、パラボラシールドで全衝撃を宙へと向けろ!
絶対しくじるなよ! いっくぞぉ―――っ!」
「見くびるな兄さん! シールドも、爆発連鎖だって! タイミングがズレた事なんか、ただの一度も無かっただろ。
これは僕にしか出来ない阿吽の呼吸なんだ! 任せろっ!」
〈ヌークリヤ――――ッッ、
……ディビジョンッッッ!〉
凄まじい光芒が目を眩ませる。
――――そして遅れて大轟音が発生。
その魔法界最大威力の大爆発の衝撃
それは、遥か上空に留まっていた膨大な共同作業の解体群を、余すところなく宇宙へと吹き飛ばしていった。
**
《ルカ、レイさん達やってくれたよ! こっちも一発で頼む! ボクの腕はそれで限界》
《任せて……ルナ、次だよ!》
テレパスと共にルカが合掌し屈みながら瞑目。
〈この一手に全てをかける! ねえ、お願い! キミの全部の力を貸してっ!! 〉
そしてダブルヌンチャクと共に
《いっけぇ―――――っっ! 》
〈 死の鉤爪! 裂閃―――――――ッ 〉
ありったけの残りの力を振り絞り猛威を振るうと、ルカによる正鵠を射た位置出しでリーサルクロウの超振動が遂に二体の敵・出現場所にガッツリ的中、見事バラバラに。
《ああ、この最高に愛しいこの人と共に……遂に……やり遂げたんだ!》
その瞬間、脳内で二人の歓喜の念が衝突し、花火の様に炸裂した。
《やった――――――――――――っっ!!》
しかしその超振動が余りに強烈な物質の重なり現象『スーパーオーバーラップ』を発生させ、超核融合を誘発。
天才錬金術による特殊金属であるリーサルクロウでさえ散る大爆発発生
神の怒りと云われる爆発速度は瞬時に二人を襲う。
――――死を前にした一瞬、
それはあたかも超スローモーションのよう――――
予想になかった事態に二人は逃げきれないと直感する。
超速状態の感覚は時の流れが激しく緩み、ましてや超倍率活動出来る二人にとってテレパスは数百語さえ一瞬で解する。
二人の意識がその刹那に膨大に交錯した。
女のジェンダーに戻ったルナは最後の力でルカにテレパスを送っていた。
《『私』はもう限界。この爆圧は逃げられない。ルカはテレポート出来るんだから逃げて!》
ルカへとそう願う。ルカもこの準備無き状態では『連れテレポート』は無理と判断。
逆にルナを庇うために僅かな残力のサイ・バリアで身を盾にするテレポート。
庇い返そうにも腕はもう殆ど上がらぬルナ。もちろん、合気術・ファントムアームズにガッチリホールドされ、何もさせてくれない。
《せめて死ぬなら一緒って言ったのにっ!
裏切り者―――――――――――っ!
これだけはもう絶対にイヤなの――――っ!
ルカァァ―――――――――ッ!!!》
悲痛に念ずるルナを幸せそうな笑顔で抱えるルカ。
誘爆に飲まれて行くのが分かる。
《そんな事ないよ。多分一緒に死ねるよ。でも万一助かる可能性があるなら、ルナのためにこうしたいってズット思ってた。
それでやっとあの日の恩返しが出来る……だから一緒に死ぬとしても形だけでもこうさせて》
……それでもしルナだけ助かってしまったら、それは私のワガママ。その時はゴメンね。
短い間だったけど楽しかった……私も愛してたよ
念願を果たした一点の曇もないルカの表情。対して苦悶のルナ。
……ああ、また一番大切なものを守れない。
結局生まれ変わってもこんな結末。
所詮私は不幸だ……
この悔いだけはもう二度と受けたくなかったのに―――
完全に誘爆に呑まれ意識が飛びゆく二人。
その体が霧散する間際、直前に予知していたファスタ―が決死の飛び込みをしていた。
二人を抱えての連れテレポートに死力を尽くす。
ルナの混濁する意識の中――――
え !! お兄ちゃん?!
今度こそ迎えに来てくれたの?
もうお兄ちゃんの所へ行ってもいいの?……
ファスターはズタズタに傷付きながらも、超絶テレポーテーションしながら、上空で仲間をシールドするソフィーへテレパス。
《後は頼んだ!》
《お任せ下さい、ファスター様》
その瞬間、ギガダンジョン第一、第二層の間に巨大な爆圧が急拡大、
ソフィーの大シールドで丸ごと球状に保護された面々は二つの層が焦土と化して行く様を宙から見届けながらゆっくり退避してゆく。
神の怒り、超オーバーラップ爆発からギリギリ飲み込まれ切る前に抜け出したファスター。
戦場処理をソフィーに任せ、王宮の医務室へと瞬間移動を繰り返して急いで飛んで行く。
* * *
連邦政府 作戦指令室―――――
敵数約千倍。何億という軍勢を前にあと何十日、何百日戦い続けねばならぬのか、或いはそこまで保もつのか、長官の焦躁が司令室全体の空気となって重くのし掛かる。とそこへ
「長官、現場各方面指令部隊長から不思議な報告が次々と入っております」
苛立つ様に、何があった? と嫌な報告を警戒するが如くエアウインドウを見やると、
「押され気味の全ての部隊を含め、何故か敵が追撃を止めて戻るような動きがあると」
腕組みで後追いすべきから訝って戦局を伺う長官。そこへ四天星の副隊長からも報告が。
「敵に明確な撤退の号令が出たもよう。急いで引き上げて行きます!」
一体これはどういう? ……と、顎に手をやり沈思する。すると更にそこへ決定的朗報が舞い込む。
そう、長たる四天星から直々に――――
「長官。 我々は特別任務の完了、及びこれの成功を報告申し上げます。
特務隊は目的を達し、敵の鉄壁の守護魔・スーパーラヴァの殲滅を果たし、ギガダンジョン第一、第二層を攻め落とし、無防備な状態にまで持ち込むことに成功しました!」
「なんとっ! 百年ぶりに第二層を……しかし千倍もの敵が一気に引くのは何故だ?」
「ファスター隊長は妖精界とも交渉していました。
そして彼らさえ完全に諦めていた『地獄の門番』をもし攻略した暁には、取り返しを狙っていた妖精族の親や戦士等、魔力ステータス10万以上を有する使い手の八千体を超える大軍勢を整え、一気に奇襲する事を密約していました。
今それが一斉に動いたのです。そのため敵も急遽戻って仕切り直さざるを得ないのです。
――――――作戦勝ちです!!」
「おおお、遂に先に進めるというのか、いや、実によくやってくれた!」
「妖精族は友軍誤撃とならぬ様、少なくともひと月は手出しせぬよう要請しています」
敗色すら感じていた司令室の重い空気は一変し、笑顔が飛び交う司令官達の面々。そして長官が高らかに宣言する。
「ではこれより我が軍は、一度戻って陣を整える。
――――― 全軍、撤っ収ーっ!」
地上防衛戦の勝利。
その情報は各方面へと一斉に駆け巡る。浸食地域も取り戻し、更に待望の第三層への扉を開いた。
新境地の幕開けに全大陸から歓喜の声が沸き上がる。
* * *
その頃、宮殿の医療施設に到着するファスター。
爆発をまともに身に浴びて満身創痍のファスターとルナ、ルカ。
力尽きて昏睡する二人をそっと寝台へ下ろす。
だが深刻な二人の症状を見て、自分の治癒を後に回す。
急ぎ、手かざしのサイ治療を始めるファスタ―。
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