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第62話 地上の敵の全掃討

絶望に打ちひしがれた王宮帰りのルナ。寄り添うように(いざな)いながらその心の火を再び灯せるよう支え続けるルカ。

それにより復活したルナは再び新たな地上掃討作戦に。

次第に本領を発揮してゆく二人。







挿絵(By みてみん)




 全土の制圧……やってやる!

 ルカ、キミが居てくれるなら!



 ルカの後押しに応える様に更なる加速で捕縛して、捉えた魔物をポシェットへ。


 続々と投げ込まれた者らは、内部では地に落ちる前にノエルのシャボン玉に宙で捕らえられ、森の収容所へとベルトコンベアの様に運ばれて行く。




挿絵(By みてみん)





 無我夢中で捕獲に勤しむ中、セイカ喪失直後のレイとの会話を思い出したルナ。


『哀しい顔してるけど負けないで。だってキミの力は俺らよりそれに適してるんだから』


 あのレイの言ってくれた励ましはこういう事だったのか、と、滞っていたそれを驚異的に巻き返してゆく。


 確かにこんな速さで対応できる者など居ない。


 光速移動のエマでさえ全動作が早い訳では無い。

 〈見分けて、捕縛して、連行〉

 となれば日常動作全てが速くないと無理である。




 ―――取り戻される自信に瞳の輝きが増すルナ。




挿絵(By みてみん)




 やがてその加速による空気摩擦で体が燃え光り始める。走り回る光の軌跡が流星の様に尾を引いて、意気揚々と街中を駆け抜ける。




挿絵(By みてみん)




《もう千里眼探索も指示するテレパスさえも追い付かなくなってきたっ、だったらルナッ、あの技、今こそ使おうよ! さあ、行くよ~》



〈サイキック・ユニティーッ!〉



 二人の精神合一技が発動。脳内でルカの千里眼の視覚と位置情報がダイレクトに共有。





挿絵(By みてみん)





《うわっ、はははっ、ルカの千里眼ってこ~んなに見えてるんだぁ! 指示なしで索敵出来てロスタイムゼロ! もう超快適~。どんどん見つかるぅ~~~! 》


《どうルナ、遣り甲斐あるでしょ!だってこの活躍で大好きな可愛い子達が安心して暮らせる様になるんだから。

 そうだ! 今まで助けたカワイイ子でも想ってジェンダーチェンジでもしてみなよ、そしたらもっと速くなれるかもよ! あ、でもそれじゃ女子にしかなれないか。フフフッ 》



 そう言われ、禁句の『カワイイ』に耳がピクリ。

 その瞬間浮かんだのはルカの顔。



 あれほど落胆していた自分。一人なら未だまだ塞ぎ込んでいただろう。その自分がこんなにも早く前を向けたのは。



 感謝と愛しさに瞳が潤んだ途端、想いが溢れてルカの望む逆、男のジェンダーにチェンジする。結果、ルカでさえ度肝を抜かれる異次元のスピードへ。


《ちょ、なっ! なになにルナって男になったらこんなにパワーアップするの~ ?! ケタが違う !! キミ以上にこんな風にこなせる人なんて絶対居ないっ!》


《クスッ、人一倍 物理(フィジカル)重視で転生したボクがここで役立たなかったら意味無いよ! 》


 ルカのくれた勇気。(みなぎ)る力。


 摩擦で(ほとばし)る閃光が至る所で燃え咲いて、どんな裏路地でも見逃す事なく狩ってゆく。



 激しく行き交う光と熱気が街中に満ちあふれると、その明滅と(ほとぼ)りが絶望に冷たく凍る人々の心さえも照らし、溶かしてゆく。




挿絵(By みてみん)




 退魔を肌で感じた人々に戻りゆく安堵の表情にルナもつられて迷いが消える。そして全開となるパワー。




《そう……だからルナ、今はただ前だけ向いて突き進め!


 キミは音速(マッハ)を遥かに超えて光になれ!


 文字通り皆の希望の光に!




 ありったけの力で、


 行っけぇぇぇ――――――――――っ!》








「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――――――――――っ!!」







挿絵(By みてみん)







 その雄叫びと共に(あまね)く街路を驀進するルナ。


 同時多発に出現するそれは途轍も無く複雑な集積回路を暴走する電気の如く、(まばゆ)く煌めき縦横無尽に疾駆しまくった。







 それは街全体が強烈に明滅する程だった。





 そして……





 捕獲が進むにつれ魔物に浸食された国々に蔓延(はびこ)っていた瘴気もその大いなる光に全て消されて行った。





挿絵(By みてみん)






 突如気付く二人。





《あれ? 何かもう魔物が何処にも見つからないよ、ルカ ?!……これがセイカちゃんの言っていた最も望ましい結果……》


《そうだよルナッ!……やった!……遂に……遂にやり遂げたんだよ、これは!》



 その瞬間、上空のルカの元へと飛びついて両手を掴み、無邪気に市街の全掃討に喜々とするルナ。



「やった~っ、ありがとうルカッ! キミのお陰だよ! キャハハハハハハハ……」





 ルナ、前世での約束……『人助け同盟』

 今その大きな目標の一つに届いたんだよ。


 良かったね!


 私もあの日の約束を果たせて本当に嬉しい!


 ……でも私、本当はその顔がただ見たくて。


 これからも全力で支えるから……

 また一緒に頑張ろうね。





 宙を舞い狂うルナに猛烈な勢いで引っ張り回され上も下も分からなくなる程振り回される。




「うわっ、ちょっ、ルナ、コラ、わわわ……」


 と困り笑いのルカ。





挿絵(By みてみん)





 **




 お兄ちゃん、見てた ?! 


 今度こそ褒めて貰えるよね! だってこれは独りじゃなくて、ちゃんと仲間とやれたんだよ。


 スゴイ進歩でしょ?


  ねえ、もし褒めて貰えるなら、何かそのサインだけでもいいから見せてほしいな……




 その瞬間、『モチロン、自慢の妹だよ……』




 そんな優しげな声が頭の中に直接鳴り響いた様な気がした。




 えっ ?!




 辺りを見回すも、またしても誰もいない。


 ちょっと苦笑して空を仰いだルナだった。






 * * *






 こうして光るチョウバエが、今、魔物の存在する方角、即ち北の戦争の地へと一斉に向かい出した事を各地の監視団が確認。



 任務完了ミッションコンプリートを確信し連邦政府へ報告する。



 遂に全市中に潜む一万超に及ぶ魔の者を一旦退治しきった人類。それは百年前でさえ成し得なかった偉業。しかも僅か十日足らずでの制覇だった。


 連邦政府から全世界へと発信される撲滅宣言。

 それは歴史的快挙だった。



 やがて積年の念願達成に戦士達への褒章を望む声が各地から沸き起こる。



「なあ、今戦地で戦ってる人達にも凄く感謝してるが、俺達にしてみれば今この生活がマトモに出来る事がどれだけ嬉しいか」


「そうだ。いつ娘が居なくなるか常に怯え続け、奪われた人達の辛さにもずっと付き合わないといけない、そんな人生に初めて歯止めをかけてくれたんだ」


「おーよ、少しは表彰式かなんかで称えてやってくれよ。街の皆も顔ぐれー見てーって言ってるんだ」


「そうだそうだ! 表彰式の中継を是非頼む~!」




挿絵(By みてみん)



 そう、確かに遠くの戦争より身近な事件の方が、より深刻に感じてしまうのは誰もが実体験している事だ。止まらぬ身近な愛すべき人達に降りかかる悲劇の連鎖の終焉。どれだけ待ち望まれていたか。


 世界は狂った様に歓喜に包まれた。


 そうした民衆の声に推され、早速準備された政府の表彰の式典。



 会場では壁に掲げられた捕獲数トップテンの表を見て、例の少年少女パーティがルナ達に歩み寄ってくる。


「どうですか。僕ら、2位になりましたよ」


 少しだけ誇らしげにルナ達に報告する少年少女。




「頑張ったね。並居る先輩転生者達を越えて2百も!やったね!」


「はい! 頑張りましたぁ! 捕獲数2百は3位と倍の差で、かなりの達成感で嬉しいです!……まあでもルナさん達に比べると……」



「エヘヘ……」



 そう、トップテンの表の1位は表示し切れず幾重にも折り返されていた。




「だって捕獲数1万って……もう神ですか! さあ、表彰状授与、呼ばれましたよ、ルナさん!」


「えっ……チョッ……ル、ルカ、ボクこう言うの苦手~っ。行って来てよー、それにこれはルカのお陰なんだからぁ~!」


「フフッ。ダ・メ。地上の敵の全掃討はキミが言い出しっぺなんだから。そして最初に行動に移したのもね。だから胸を張っていってらっしゃい」




「ルカァ……」


「ホラ、ルナにはその資格と、そして責任が有るんだよ。だから。 ……さぁ! もっとしゃんとして!」



「う……うん」



 そうして全世界へ中継される中、授与と同時に会場の総立ちで盛大に祝福され恥じらうルナであった。





挿絵(By みてみん)





 ……お兄ちゃん、皆、こんなにも喜んでくれてる。


 あなたの事で、すぐダメダメになっちゃう自分だけど……でも今は仲間たちが支えてくれる。だからいつまでも引き摺らないようにしなくちゃね。


 ボク、もっと褒めて貰えるよう、また頑張るね。



 中継により全世界へと轟く栄誉。そして心から寄せられた感謝と賛辞。盛大な拍手。


 その壇上のルナを誇らしげに見るルカとノエルの瞳は潤んで耀いていた。





  * *





 式典も無事終わり、『地上の敵の全掃討』 という目標に限りなく近づけた事、更に多くのハーフも救出した事に一先ひとまず胸を撫で下ろしたルナ。




 それにより更に徳を積み重ねたルナ達のステータスを見て決心するファスター。


『予想を上回る成長だ。これは次の私の計画の要としてもぜひ欲しい! ルナ……』




 ファスターは式典の帰りに宮殿に立ち寄るよう指示、ルナ達を作戦室に呼び出した。






< continue to next time >











口絵コーナー  ♥・*:.。。.:*・゜♡・*:.。。.:*・゜♥


海岸沿いのカフェバーで兄を想うルナ


挿絵(By みてみん)




・*:.。。.:*・゜♡・*:.。。.:*・゜・*:.。。.:*・゜♡・*:.。。.:*・゜



――――――――――――――――――――

ルカの支えによる復活、そして更に絆を深めるルナ。

こうして世界の長年の苦悩と実害を取り払う。


この後、何やら更なる使命を授かるのか。より大きな運命の渦に巻き込まれて行く三人。


こんな彼女達へ応援頂けるなら コメント・フォローにて宜しくお願いします。


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イメージBGM (youtube)

▼ Believe

https://youtu.be/F7bnkcMs8CA

(失意から引き揚げられ蘇ってゆく魂。勇気と漲って行く力。……失望から全掃討へ一気呵成のルナ達そのもの。

ぜひ、前話のルカが慰め始める所から併せて聞いてみて下さい! その為にストーリーまで調節した程です!!)


―――――――――――――――――――


▼ Men of Honor

https://youtu.be/7HNcIIjH8qk

(大いなる栄誉、誇り、そして感慨深き達成感……正に今話の表彰式典と賛辞のシーンにピッタリの曲。人は必要とされ、感謝されてこそ自分の存在理由を見出せる。ようやく一つ、自分の人生で納得の行く責任を果たせてヒシヒシと大きなものを感じとるルナの想いが伝わるような曲。)


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