第43話 エマの前世 BROSの実力
地上での強さは折紙付きのルナたち。だが空中戦となると……。
エマと共闘した際に、その課題であった飛行戦闘のための向上について幸運にもアドバイスして貰える事に。
それにより思わぬ方法で劇的にステップアップしたルナ、ルカ、ノエルであった。
「エマさん! こないだは有難うこざいましたぁ!」
エマのお陰で自在かつ超高速で空を飛べる様になり、魔物退治の効率も上がるルナ達。近場で活動しているが故に程なくして再会。
「大分慣れて自分のモノになって来ましたよ。お陰で更にスッゴク速く飛べる様になって、ステータスまで爆上がりデス!」
良かったな、ニオイも取れたか~! と相変わらず憎めない屈託のなさ。苦笑するルナ達。
「でもここはボク達が先に魔物片付けちゃって、スミマセン、もう出番はありません」
「そっか……なら今日はヒマだから今からランチなんかどうだ~。おごってやるよ」
ルナ達はこの前の恩があるからと、遠慮はおろか逆にお返しさせてと申し出たが「いいって事よぉ」といつもの気っ風の良い姐御肌。
気に入ると滅法面倒見の良いエマなのだ。
丁度昼時でノエルを含む4人で近くの評判の良い老舗へと入り、注文と支払いを済ませて席につく。
すると、ノエルが大事そうに手にするそれを見たエマは、この世界では見かけない種類のてんとう虫を持ってる事を不思議がるが、ノエルの手のひらの中でそれは消えた。
まだ空いていたこともありアッと言う間にオーダー品が賄われて、早々に御子様ランチにありつけてゴキゲンな様子で大人しく食べ始めるノエル。
それを横目に質問するルナ。
「そう言えばこの前、前世で電気技師って言ってましたよね」
「まあな、こう見えて理系なんよ、その技師の仕事自体は嫌いじゃなかったんだけどこの美貌だろ~、その上オカマだったからスカウトされてオカマバーのお姉さんに転身さ」
「オカマバー! 前世は男! (ナルホドそれで女装男子風に見えたわけか!)」
「あ、今は転生時に希望して本当の女にしてもらったけどな。いや~前世はモテモテだったなぁ、チトいい思いしたしな。
ただある日オカマヤクザ同士の痴話喧嘩を止めに入ってさ、身を挺して客を守って死んじまってさぁ、つまらん命の落とし方をしたもんさ……」
「それで転生……何だか……」
と、どう言って良いやら僅かにたじろんでいると、
「笑えるだろ!……人助けなんてガラじゃなくてさ……でも報奨の倍率いっぱい貰っちゃって……ハハハハッ」
一緒に笑むルナ。
……でもこの人、良い事しても自慢気げにしたりしないんだよな……
「あと何か姉御肌とか言われて慕われてさぁ、後輩や客によく相談のってたら、ホラ、ジェンダー的にも悩んでる子が多くてさ、よく自殺防いだりして。
自分も男に生まれた事が超~苦痛だったから何かほっとけなくてな。したら徳の倍率も沢山貰っちゃって」
「私も性別越境者でずっと女になりたかったのでスッゴイ共感です! いつかゆっくり話したいです!、それにしてもその頃から面倒見が良かったんですね! フフフッ」
その点でルカとは話しが合いそうだ。しばし歓談していると……
そこへ隣の席の噂話が。四天星が倒したとか。
『中央地区に出た魔人だろ、四天星の一人がやってくれたか。やっぱ頼れるのはそこか』
「エマさん、四天星って?」
「政府直属の魔法師の頂点の四強の事さ。魔法属性の四元素それぞれを得意とする魔法使いのリーダー。
火、水、風、土のグループがあって各千人以上の魔法使い集団を率いている」
「魔法の実力があって正義漢なら多分グループへの勧誘がくるけどアタシの特性はそのどれにも属してないってのもあって誘われてないね。
ン? 性格のせいかな、フッ。
……ま、アタシ達みたいなフリ―でも強い転生者は『ハグレオオカミ』なんて呼ばれてるのさ」
さらに噂話が聞こえてくる。
『南方では爆裂ブラザーズが大物をやっつけたってよ、やっぱスゲエな……』
「エマさん、それはどんな戦士?」
「レイメイ兄弟だよ、知らないの? 結構有名だゾ。フリーなのに政府御用達だからな」
「えっ、それなら知ってマス! でもそんな異名があったのかぁ」
「……彼らはマジ強い。だがそれに満足せず普段はニガ手を克服する為に『不得意ワザだけ』で戦ってるからな、滅多に本気を出さない!」
「そ! そうなんですかぁ!?」
「BROSの真の実力『爆裂ブラザーズ』その本気は全部二人の連携技にある。二人でやってる理由……
それは役割分担で同時にやるからこそ高強度に出来るものがあるのさ!」
そう言って我が事の様に語り始めるエマ。
「例えば一人が超低温氷結して封鎖、もう一人が完全な粉まで爆裂連鎖。打撃や電撃が効かない流体怪物でも徹底的に粉化、更に頑健な物体も凍ると膨張で壊れる氷結破砕作用で何でもバラバラ。フリーズドライ解体の
<アイシングスキャッター>
超強固な大型魔力ド―ムシールド内をもう一人が原子炉並みの熱地獄になるまで爆発で充満し尽くして完全に蒸発させきっちまう
<爆発三昧>
……そして以前だがアタシでも倒せなかった超弩級のヤツを倒したときの究極技、さっきのを更に発展させ魔法重金属を互いの超臨界にしたエネルギーで核分裂にあてた爆裂連鎖反応による超巨大核攻撃……
――――超核分裂 〈ヌークリア・ディビジョン〉……」
「ち、超巨大核攻撃……」
「ただし二人で放射能を除去する『お片付け』がキライで滅多に見せない。強力過ぎて巨大獣はおろか魔力シールドが耐えきれず、感謝されるどころかその時は放射能を撒き散らして連邦政府からさんざん叱られたらしい」
「……って、普段の姿からは全っぜん想像出来ませんっ!」
「地下世界ギカダンジョン第二層まで行って帰って来れた数少ない生残り組さ。帰った時、あの強い彼らでも全く歯が立たなかったって言ってた……
何があったのかショックで語ってもくれなかった……。
だが彼らの考えはハッキリしてる。そこで戦える様に成る事に賭けているんだ。
でもまぁ、アタシもそこそこ強くなって来たし速さもあるから、いつまでも人拐い阻止なんて~のもまどろっこしいからナァ、直に乗り込んでこの目で確かめるつもりさ」
野心に溢れてるはずの顔にはいつもの余裕は感じられない。
「行くんですか……ボクも行きたいけどまだ全然勝てる気が……早く強く成らなきゃって、ずっと焦るばかりで……
エマさんぐらい凄く動けるようにしないとダメなんです!……」
ルナの渋い表情から何かを読み取ったエマ。
―――ン? いくらスーパールーキー転生者だからって何でそんなに行きたがる? それにその悲壮な顔。
ワケありなのか? ……
ま、話したければその内に話して来るだろ。それよりもう少しこの世界の事でも話しておいてやるか……。
「……ところでお前らどこ迄知ってる? 百年前の伝説。遥かずっと昔から続いていた人拐い。それが少しずつ増えてきて遂に百年前立ち上がった勇者の逸話」
この世界のただならぬ女子誘拐。
その核心に迫れるか、と思わず身を乗り出すルナ達。
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更に核心に近付いていくルナ達。 今後の異世界での活躍にもし応援頂けるなら コメント・フォローにて宜しくお願いします。




