第34話 轟く名声と人気と〇△に戸惑う
予期せぬ難敵との戦いで、ルカが身を楯にしてルナを守る。それにより死にかかったルカへ二度と自己犠牲とならぬよう釘を刺すルナ。
精神崩壊のトラウマが発症しそうになったところをあわやの所で留まるも、ルナの闇の深さの片鱗を垣間見てしまったルカだった。
ラグール宮殿、執務室。
碧眼金髪美女のサイキック隊、副隊長が意外そうに問う。
「ファスター様、今回は手を貸さなかったのですね」
「もしもの時にと備えてはいたが何とか頑張ってくれた。二人の連携が良くなれば互いの弱点も補える仲だ。成長すればいずれは強力な戦力にもなるだろう。
だからあの位は乗り切って欲しいと思ったが何とか乗り越えてくれた……やはり出張らなくて良かった」
「よく堪らえましたね」
「フフッ、それを言われると何も言えないよ。……ただ私達のこの後の計画に与する迄にはまだまだだが、この成長スピード……その日は案外遠くないのかも知れない」
「ですね。その為に動く必要があればいつでも尽力します」
「ありがとう。 だが今は陰からさり気なく手掛かりを与える位にするとしよう」
「了解しました。では次なる計画では、よりさり気なく立ち回るとしましょう」
***
アジト本営からの救出―――
苦戦した甲斐があり、親達から大層喜ばれ胸を張る二人。 後日の感謝会で盛大にモテはやされる事になった。
それもその筈、救った子達は、[取り返し隊]の非公式ファンクラブを自認する子達だった。 盛大に褒めそやされ気を良くしたルナ。その中のルナ好みの子へと想いが溢れる。
よりボーイッシュにカッコつけてアプローチ。
恒例のそれに『バチが当たってしまえ!』とばかりに睨むルカ。
一層盛り上がる感謝会。
その中に『あの子より私の方が可愛いのに』 と、ルナに声を掛けられず嫉妬した女子がイキナリ声も高らかに、
「皆さ~ん、このルナって人、ファンの子が可愛いからって手を出してますよ―っ!」
「ええ――っ、立場利用して何それ―っ! フケツ――ッ!」
「ちょ、ちょ、ちょ待って! ち、ちが……」
サイテー! それが目的~? と場内に一気に広がる侮蔑の嵐。
「だってボク、女の子なんだよ! 手を出すなんてそんな、みんな信じて!」
確かに女子のままだ。お陰で何とか誤魔化すも逆に落胆のルナ。
『やっぱ男の子になれないんだ……』
**
―――その後、家に帰るとルカは慰めとも言葉責めともつかぬカラミを開始した。
「そこまで女子にモテたいの? そもそも昨日も私をじっとり変な目で見てたけど男子になれないじゃん。諦めなよ! それかそこまで私には本気じゃない? 浮ついてばっかだしね!」
「え、男子化しないのは多分相手の人がボクに中性を求めてるんだよ、ボクってそんな感じだし」
「何それ! でもさ、だったら私みたいに一度でも男子に変身出来たことある?」
「え?!……あ、あるもんっ! えっと、確か転生した日! 悪漢相手に激昂した時に……」
ってアレ?……あの時、悪漢がボクに望むのは、当然男なんかより弱い女子の方……て事はやっぱ逆に?!
「ん? ……ね、何かまた青い顔…… ねぇねぇねぇ! やっぱ逆になるんでしょ! フフフ」
やり場なくプリッとむくれたルナ。ソソクサとトイレに逃げ込むのであった。
* * *
―――うなぎ登りの功績と実力。
破竹の勢いの救助活動。既にタブレットの依頼を数百とこなしていた。
この日は当初のアジト地図攻略。それもいよいよラスト。そこは言わば残党の巣窟だった。寝返った人間の軍、現代兵器部隊……百人ほど。
「酷いなあ、こんな裏切り……全員吊るし首でしょ、こんなの……」
静かな怒りとともに堂々と踏み込むルナ。
「魔の瘴気に取り込まれて仕方ないんだよ。私達が正気に戻してあげないと……」
『ヤベェ、例のが来たぞっ!』
そこでは既に有名人となり、極度に恐れられていた。
ドドドドドガガガガガドドババババババババゴゴゴゴゴゴドドドドドドドドドドドドドガガガガガガガドシュンドシュンドシュン、ガガガガガブフォアアアアアアアアア――――――――ッ
ジャミングマシンと機関銃、更にランチャー砲、火炎放射器等を百人程で一斉大乱射
だが万倍物理耐性で備えるルナ、そしてサイキックバリアのルカ。二人は全く避けようともせず敢えて攻撃を受けるもダメージゼロ。
「ヒイィ……バケモンだ……」
力の使い方に習熟して来た余裕の二人に為す術もなく全隊逃げ出す始末。
結果はルカのサイの覇気一喝だけで全員昏倒しアッサリ楽勝。だが。
ピシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ……
突如、亜空間から転移を一斉に繰り返して数百体もの小型邪妖精の強襲が。
超音速での一斉魔槍攻撃にメッタ切りされる。
あまりの数と速さ――――ルカの予知力と千倍速合気術でさえ間に合わない。
あわやの所、慌てて万倍速で盾となるルナ。
《数が多過ぎて転移が捉えきれない! しかも魔力も合わせて威力も超増幅してる、ヤバイ! でも二度とルカをあんな目に合わせない!》
秒で数万の突き蹴りで叩き落とすも、後方組による全方位からの魔弓の雨からルカを守ろうと身を挺してガード、無数に射られ針のむしろに。
「はぐうっっ!」
それでも決死のヌンチャクで弾いて劣勢を凌ぐルナ。
「ぬおああああ! 負けるかぁ――――――っ!!」
死の鉤爪を無茶振りして薙ぎ払う。
遂にルカを守り切って、安堵と共にバッタリ倒れ込む。
*
昏倒のルナから無数の矢を抜き、治癒カプセルで介抱し終わると愛おしく抱きしめるルカ。
―――ルナ、ありがとう……私、守れなくてゴメン。キミを守る為にこの世界まで追って来たと言うのに……
悔し涙をルナの頬に落として溜め息をついた。
はぁ……。キミの事、時々分からなくなるけど、結局は大切にしてくれるんだね……色々あるけど、やっぱり私は信じてついていくよ……
そうして女子30数名を救出。
「遠方だと連れて帰るの大変、運転手雇わないと」
「うん……それにしてもこんな女の子ばっかり誘拐って……地下世界の目的って何?……」
数日後。
評判が過ぎるのも困りもので、遂に[取り返し隊]のニセ者事件まで発生、本物の周知を、との事で行政の防災課主催の安全対策教室にメインゲストで呼ばれた。
本物の顔見せ、そしてタブレット連絡網の推進、オマケにサイン会など、芸能人の様な待遇で大盛況となった。
特にルカの誘拐対策、合気の技による『護身術ワンポイントレッスン』は親御達も身を乗りだし人集ひとだかりに。
当日はルナもサイン会を意識してひと房だけ三ッ編みにして、リップもグロスに。装いもお出かけコーデで可愛くキメてアピール。
もうノリノリのヒロイン気取りだった。
「あの~、女の子なのにどうしてそんなに強くてカッコ良いんですか?……」
ん! カワユイ子! そして憧れの眼差し!……しかも女子として! なら男子になれなくてもカッコ良ければモテる ?! よし、だったら!
……ムフフ…… これは利用しない手は無い、 今度こそ! とデへ顔を隠しつつ急いで髪を解き、幾らかハーフアップ気味に後ろで束ね、サイドはウルフっぽく落とす。
更に一枚脱いで襟を立ててワイルド路線に変更。そしてイケボを装いながら、
「うん、鍛え方が有るんだよ。良かったら今度一緒にやって見ようか、手とり足取り教えてあげるね……じゅる……ゴクッ」
それを横にルカが睨む。
またか! 一体どうして? いつも私の着換えとかヨダレたらしてノゾくクセに!
今朝だってヘアメイク中に『今度こそ押し倒す』とか思ってたクセに! なんで他の子をっ!
「それでね、突きとかはこう、蹴りはこんなカンジで~……」
睨みながらそのルナの様子の変化に気付くルカ。顔が妙に凛々しく胸も平ら。
そう、ルナは男のジェンダーになると僅かだがハンサム系、そしてより筋肉質に変化するのだ。ウットリと目に星を湛える女の子。ルナに釘付けだった。
……ル、ルナちゃん、カ、カッコ良い!
「スゴ~イ、ね、ルナちゃん、ちょっと触ってもいい? うわぁ、筋肉スッゴイ固いね。まるで男の子みた~い。あれ、最初見たときよりムネとか無くない?」
何気にルナの襟元を引っ張り中を覗く女子。中身に驚き飛び退く。
「なっ!……このコ女装?!」
「えっ、ウソっ、そんなハズ……」
今度は女子として好かれたことで男子になってしまうルナ。
「あの~、助けてくれたのは感謝するけど……キモい……サヨナラッ!」
「あ、待って~!……って行っちゃった。でも何でムネが無くな……って、あれ? ボクの足の付け根に何かが存在して……何か主張までしてる……ってまさか……」
「ル~ナ君っ! 今日もカッコイイね、元気そうだし!
クスッ。良かったね~、今日は有って! 」
人前のため、しゃがみ込んで動けなくなるルナ。
真っ赤になって頭を抱え込み、
「ヒ~ッ、ルカ助けて~! これなに~、ど~したらいいの―――っ?!」
立ち上がれぬルナへ『知らん! ほっとけば落ち着く!』
とおざなりに切り捨る。
「あ~ん、でもやっぱ逆ジェンダーになっちゃうんだぁ~! 神官のバカ~! ど―してくれるんだぁ――――っ!」
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遂に男になれたのに上手く行かないルナ。ルカへの誠意を見せないワケ。 そんな不器用なルナにもし応援頂けるなら コメント・フォローの応援にて宜しくお願いします。




