終章 汚濁の白
朝が来て、目が覚める。
身を整えて、洗濯をしながら献立を考えて、料理を作り出す。
そして、料理を終える頃には、洗濯機も止まり、洗濯物を干し、未だ眠っているアイツを起こす。
それでもなかなか起きて来ず、呆れて煙草をふかす頃には流石のアイツも起きて来て、朝ごはんを温め直す。
居間でテレビを観ながら朝ごはんを共に食べ、皿洗いを賭けて刀の稽古を庭で行う。
8割の確率で俺が負け、皿を洗い、ついでに昼飯を作り、また二人で食べる。
それから、テレビを見て、それが終わると料理を出来ないアイツに料理を教えつつ、晩酌の準備をする。
準備が整い、二人で酒を飲み交わし、酔い潰れて眠りに落ちる。
そんな、懐かしい、けれど、見た事のない、あった事のない、いつか夢見た夢を、見た。
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この世の何処かに。
獣の、住む古びた屋敷が、あると言う。
その白い霧に覆われた屋敷は、蔵があり、見合った代償さえ払えば、人の願望を叶える異端具を得られるらしい。
しかし、欲深いものはその屋敷では蔵に入る事は許されず、獣に喰われてしまうらしい。
逆に、獣に好かれれば、蔵に入れ、死ぬまで屋敷に留まることもできるらしい。
そして、その獣は、常に物憂げな顔を浮かべ、何かを待っているらしい。
名前の無いその獣は、7番目の厄災「汚濁の白」と呼ばれている。
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「…俺の、執着の果ては、何処なんだろうな…白鋭。」