発現
重い足取りで向かう奴隷たちとヒロ。
いよいよ、闘技場で闘う時が来た。
いざ開幕!
そして、ある広場に出た。
ここが闘技場らしい。
奴隷たちは集まって固まり、おどおどしてたり、キョロキョロしてたりとまちまちだった。
「ヒロは僕が守る。安心して」
コニーはアタシの前に出て、長剣を構える。
魔物の雄叫びが聞こえた。
どうやら入場してきたようだ。
見ると、仰天した。
通常人の2倍はあろう巨体が見えたからだった。
「さぁ、いよいよ始まりますよ~。
ブラックベアーを倒せるか?」
場内のアナウンスが流れた。
だが、こっちはもう戦力にもならない。
そのほとんどが足をすくんでしまってるからだ。
アタシだって、どうなるか判らない。
キャシーと一緒に何度か狩りに出ていたけど、こんな大きいのは初めてだ。
こんなの倒せるのかな?
もう闘いは始まっている。
次々と奴隷たちが飛ばされていく。
アタシは出来るだけ、弓矢を射って対抗するが、効き目がない。
「あ~ぁ、これは無理だなぁ」
隅っこでジャッカルが見ていたが、呆れ顔だった。
よく見ると、ジャッカルと一緒に並んでるのが数人はいる。
多分にこの闘いで残った者をスカウトするために選別しているのだろう。
場内では一層ざわめきが響く。
実況も含めるとやたらとうるさくなっている
見ると、いつの間にか、コニーがブラックベアーの背後に回っていた。
アタシはそれを引き付けるかのようにブラックベアーの前に躍り出た。
「来なさい!」
ブラックベアーは雄叫びを上げると突っ込んできた。
アタシは逃げる格好で弓矢を射ち続ける。
その背後から、コニーがブラックベアーの背中を斬っていくのが見えた。
成功したけど、致命傷とはならなかった。
次の瞬間には狙いすましたブラックベアーの爪がコニーを襲う。
「コニー!」
その時だった。
ブラックベアーの動きが止まった。
観客席も周囲の奴隷たちも止まったままだ。
歓声も何も聞こえなくなった。
な、何があったの?
そして、ブラックベアーも周囲も消えて、真っ白に染まっていく。
上から何か光が降臨していた。
「私は女神ディナ、其方の失われし力を覚醒させるために、舞い降りました」
なんと、女神が現れたのだった。
アタシは不思議な温もりに包まれ、もはや見ているだけだった。
「其方の本来の力を戻すため、正義の光を目覚めさせます」
次の瞬間、アタシは光に囲まれた。
「それは祝福されし精霊の心、そして、聖なる光に変え、其方に力を宿します」
そして、アタシの周囲を囲む光の筒が羽に代わり、散らばるかのように静かに周囲を舞っている。
「さぁ、精霊に祝福されし勇者よ、正義のためにその力を自在に奮えよ」
そう言い終わると消えていく。
気付けば、アタシの首輪も消えていた。
「ちょ、ちょっと待って」
アタシにも一つ二つ話を聞かせてよ~。
そして、ブラックベアーが現れ、コニーが襲われようとしていた。
アタシは無我夢中で短剣をブラックベアーへ斬りかかる。
すると、あっさりと斬れた。
その腿足から出血が噴き出ていた。
次の瞬間にブラックベアーは吠えた。
「コニー、動いて!」
それを聞いたコニーはすぐに動き出した。
次はこっちがピンチだ。
ブラックベアーはゆっくりと巨体を向けて、視線がアタシを捉えていた。
さて、どうしたもんでしょうね。
けれど、ブラックベアーはアタシを見据え、身動きもしない。
何だろう?
先程までの迫力が今のブラックベアーにはない。
まるでアタシに用心してるかのようにも見える。
どういう事?
アタシの攻撃でも歯が立たなかった、それなのに・・・。
あ、でも、あの刀傷、アタシがやったのよね?
気付けば、今までの体じゃないようにも感じる。
さっきのアタシがブラックベアーへ、突撃する時の身体能力も以前のものではない事に気付いた。
何もかもが軽いのだ。
アタシの何かが変わった?
けど、そう言えば力を宿すと言ってたわ!
それに勇者とも・・・。
何かが使えるのか?
アタシに?
そう思うと自然と手をブラックベアーに向けて動かした。
「ファイアアロー!」
そして、威力も数倍の火の矢がアタシの手から放たれた。
うっそーん。
アタシは信じられずに目を見張った。
それはブラックベアーの目に当たり、大ダメージを与えていた。
ブラックベアーはその痛さからか、吠えた。
イケる!
「もっかい、いっけ~!
ファイアアロー!!」
今度は渾身を込めてそれを撃った。
それは先程放ったのよりもさらに大きな威力で放たれた。
まるで手元で大砲でも放ったようなようにも見えた。
それはヒロの体よりも大きな火の矢、いや、火の玉だった。
それがブラックベアーの胸元に刺さり、その威力は止まらずに観客席下の壁にまでぶつかっていった。
壁がボロボロに崩れてしまった。
ブラックベアーの胸元には大きな穴が空き、炎に包まれた。
まだ動く?
渾身の一撃をブラックベアーめがけ、魔法を撃ったヒロ。
それは致命傷を与えたのだろうか?
ヒロは静かにブラックベアーを見ていた。