足掻
どうやら、ヒロの使役先が決まったようだ。
そこで待ち受けるは新たな宿命。
ヒロはそこで何を見出せるか?
見たところ大きな屋敷ね。
どこかの貴族の屋敷なのだろう。
アタシを含む奴隷たちはその屋敷前の広場を進んでいた。
そして、ステージが見えて来た。
その側には、大きな小屋があり、その前で並ばせられた。
「お静かに」
すると、ステージ上に人が現れた。
「俺がお前らの新たな主人となるラーク・カイデン男爵である。
以降、見知りするがいい」
あれが新たなマスターね。
見るからに太っていて、悪人面しているわ。
嫌な予感しかしない。
「そして、君らは奴隷闘士となり、私が主催するコロッセオにて、殺し合いをするのだ」
その発言でどよめいた。
殺し合い?
コロッセオ?
あのローマと同じ?
そこで奴隷闘士として闘わせられると?
ふいに誰かが前に出る。
「しかしながら、ご主人様」
「何だ?」
「私はただの村人です、闘うすべを知りません」
「それは心配無用だ。
私は優しい男だ。
これから君らを鍛えるトレーナーが一人づつ付く事になる」
「え、で、でも・・・」
「ただし、その前にだ。選別させてもらうよ」
「せ、選別?」
「選別とは何をするのですか?」
「判らぬのか?
まぁよい、ようするに君らの中から、使える者だけ選び、闘技させてもらうのだ。
つまりだ、使えない者には、さらに過酷な条件が待ってるだけだがな、フフフ・・・」
何ですって?
冗談じゃないわ!
この男爵の言葉でどよめきが大きくなった。
アタシは魔法があるから、いいけれど、闘えない人たちはどうなるの?
「では、後は宜しく」
男爵が下がると、うやうやしく礼をした者が前に出る。
その人は、舐めるようにアタシ達を見て、こう続いた。
「俺はトレーナー筆頭のジャッカルだ。
聞いた通り、お前らは今夜、ここコロッセオで闘う事になる。
いいか?
それまでは大人しく待機していてもらう。
では、俺に続いてついてきてもらおうか」
そうして、ジャッカルの後に続き進んで行く。
が、しかし、たまらず列から逃げ出す者がいた。
ただ、その次の瞬間には、叫ぶ間もなく倒されていた。
「連れていけ!」
ジャッカルは部下の一人に指示を与えると、その人は奥へと連れていかれた。
「ああ、一つ言い忘れていたが、逃亡を犯す者は、ああなる。
つまり資格を剥奪されて、さらなる地獄を見るはめになるのだよ。
逃げ出さなければ、良かったのにな。
よく覚えておくんだな、判ったら、ついてこい」
鞭をしならせて腰に付けながらジャッカルは言った。
どこにも逃げれないのね。
気付けば、魔法無効がかかったままだわ。
先程から隠蔽魔法が利いてくれない。
もしかして・・・、魔道具かな?
この首輪が多分、それだろう。
「僕、君と闘いたくない・・・」
コニーだ。
「闘っても闘わなくても、同じ事よ」
「それはそうなんだけど、ヒロは闘えるのか?」
「判らないよ、けど、闘うしかないのよ。
アタシは絶対に生きてみせる」
これは逆を言えばチャンスだ。
闘技を教わるいい機会とも言えた。
ただ、そのためにも、これから始まる闘技を勝たなければならない事だけは確かだ。
「ヒロは強いんだな」
「アタシには魔法がある。
けれど強くはないし、なれもしないのよ」
「けど、魔法があるんだろ?
だったら君は強いよ、ぼ、僕なんて震えてるだけなんだ・・・」
「だったらどうするの?
諦めるの?
コニーらしくもない、希望を持てと言っておきながらね。
ただね、今は何をしたってムダよ。
ああ、なりたくなかったらね」
アタシは先程の者が連れられたところを見て言った。
コニーはそれを聞くといっそう顔を青くさせた。
らしくもない。
アタシがつい熱くなってしまった。
そんなコニーなど放置しておけばいいのに。
それにしても、今夜か。
アタシは覚悟を決めて、ジャッカルの後をついていった。
そうこうして、闘技場の控えの場でアタシは他の奴隷と共に待機していた。
判ってる事は、ここで使いたい武器を持たせ、闘技場で魔物と全員で闘わせられるという事。
幸いながら、今は奴隷闘士同士で闘わせる事はないらしい。
ちなみに魔物は日によって変わるらしいので、判ってはいない。
周囲を見るともう既に青くなって震えている。
「これでお別れになるかもね」
相変わらずコニーが一人で話しかけてくる。
アタシは何も言わないし、答える義理もない。
ただ、変に心地よかった。何故かな?
これから闘いの場に赴くのにコニーの言葉を聞くと、不思議と落ち着いていられる。
「ヒロは魔法を使って闘うんだよね。
僕は一応、剣で闘うつもりだ」
「アタシもそう思ったけれど・・・。
今は無理ね」
「え?」
「この首輪、見えてる?」
「う、うん」
「これが魔法を封じてるぽいから」
「え?!
じゃあ、どうするんだ?」
「まぁ、それなりになんとかなるでしょ」
「で、でも・・・」
ここには闘うための武器が並べてある。
ただ、厳重に警備員が何人かいる。
多分、暴動を起こさせないためだろう。
とはいえ、今のアタシ達の力では返り討ちにされるだけね。
「始めるぞ。武器を取って闘技場に出ろ」
始まったわ。
アタシは短剣を持てるだけ持って、弓矢を備えた。
どれも使った事ないけれど、なんとかなるでしょ。
控えの場を出て、アタシ達はぞろぞろと歩いていく。
ヒロは闘技者として見世物にされるようである。
魔法なしで闘えるのか?
ヒロ!
新たな決心を胸に、さらなる地獄を付き進め!