選抜 (8/9up)
かつして、チャンピオン・カーニバルは開催された。
街はいつもより活気が満ち満ちており、大層な賑わいだ。
人々の関心事は誰がチャンピオンになるのか、また、防衛に成功するのか、その話題で盛り上がっていた。
特にヒロの活躍について、どうなるかが、大きく話題が街全体にとどろいていた。
そんな中で、もはや、街の中にすら、出歩くのも難しくなったヒロであるが、今はキャシー、ロックと一緒になって、机上に広げられたトーナメント票を見ていた。
「ヒロは一位指名を受けたので、シード扱いだ。
だから、1戦少なく済んで助かるよ」
「でもいいの?
これ・・・、アタシ、今のクラスでは、ぽっと出の新人なのに、この扱いで・・・」
「いいんだよ、確かにCクラスに上がり立てのヒロはランキング外だ。
だが、この中でも体力的に劣っているのだから、少しでも闘技戦数は少ない方が確実にいい。
ここは素直に喜ぶべきだぜ」
人気投票一位指名を受けたヒロはオマケでDからCクラスへと上がった。
その恩恵で、権限がまた附随された訳だが、ヒロはそれでも腑に落ちない態度でいた。
見れば、ランキング第一位が第一シード、その下に第二シードとして二位がいて、さらに下には第一闘技戦として三位と十位の名があるようだ。
事実、その第三シードにヒロの名前があり、その下には第四闘技戦があり、それぞれ、六位と七位が対決することになっている。
ヒロが登場するのは、第六闘技戦でまだ先とも言えた。
「そういえば。チャンピオンの名前がないね」
ヒロはトーナメントに載ってる格闘技士の名前を見回したが、現チャンピオンであるトミー・ギリクの名前がないことに気付いた。
「これは挑戦者選抜のトーナメントだからな。
チャンピオンの名前はない。
簡単に言えば、ランキングがもっとも移動する機会でもある。
当然ながら、番狂わせも多く、起きやすい」
「つまり、この優勝者がチャンピオン挑戦権利を得るのね」
「その通りだが、まず、チャンピオン・カーニバルに於けるCクラスではヒロを含む11人で行われる。
そこで、ヒロは第三シードなので、第四戦の結果次第で相手が決まるわけだが・・・」
「この二人は実力的にどうなの?」
「それは今から説明する、まず、マーク・ウォーカー。
こいつはCクラスでランキング六位なので、侮れない実力を持つ。
また、スピードを活かした動きで青き旋風の二つ名を持っている」
「スピード戦かぁ・・・」
「そんで、その相手が現在七位のリック・ソーン。
こいつが勝ち上がれば、ヒロには初の魔道戦相手となるだろうな。
ま、どちらが勝ち上がっても、ヒロには強敵であり、厄介なのは変わりはない」
「魔道戦・・・、で、予想は?」
「順当で行けば、ランキングでは上位のマークだろうな。
動きで翻弄し、魔法をかわすだろうからな。
ただな、リックもそれなりに防御力は高い。
かつてはタンクだったからな。
マークでも苦戦するだろう。
だから、まだ楽観は出来ない」
「タンク?
なのに、魔法を使うの?」
「そうだ。
そこがリックの変わり種だ。
途中で魔法力に覚醒して、魔道闘士となったようだ」
「それで拮抗してると?」
「まぁ、そうだな、そこは、二人の戦いを見て、参考にすればいいだろう。
そこまで実力が揃っているなら、スキルも見放題だろうからな」
「なるほど・・・ね、どっちが出てもアタシなりに備えられるわけね」
「そういう事だ。
次戦については後で見学がてら、説明する事にする。
あと、判っているだろうが、トーナメントに名が上がってる面々は、Cクラス・ランキング保持者でいわゆる猛者揃いだ。
チャンピオンと当たるまでは厳しい戦いが続くだろう」
ヒロはまだ考え込んでいる。
「どした?
何か問題があるのか?」
「う~ん、アタシとしては、魔道戦体験したいのよねぇ・・・」
「そうだな・・・、それはいずれも勝ち進んで行けば、やがては当たることになると思うが?」
「だからよ、戦いが厳しくなる前に一度は経験してみたいのよね・・・」
「つまりは、リックが上がればいいと?」
そこでヒロは黙り込んでしまった。
「大丈夫よ、ヒロ」
「キャシー?」
そこで先ほどまで静かに説明を聞いていたキャシーが口を開いた。
ヒロは視線先をキャシーへと向けて、キョトンとしていた。
「魔道戦に於いてはどれだけの術を多く知るかで決まるわ。
その点、ヒロは色々と覚えてるしね」
キャシーはヒロを見て、にっこりと微笑んだ。
魔法と言えば、ヒロには既に加護が付いていた、が、ここでは使えない。
そもそも、その加護はきたるべく魔王戦のためにあってこそなので、対人ではむやみに使えない。
無論、例外もある。
それを除いても、ヒロにはいくつかの魔法を使った戦いも経験している。
何よりも今ではキャシーの指導により、一級品の実力はあるはずだ。
「でも、今までは相手が魔法使ってきてなかったから・・・」
「うん、経験不足なのは仕方ないわよ。
ヒロは私たちから見たらまだまだ子供なんだから」
そう、今でこそ、立派に戦ってきてはいるが、ヒロ自身は弱冠12歳なのだ。
実力的に見ても大人顔負けの強さを発揮してはいるが、いかんせん、経験数が乏しい。
そこから、不安を感じてとっているヒロであった。
「ヒロ、焦るな」
「う、うん・・・」
「それはいずれも場数を踏んで行けば、得られることだ。
それまでは、自分の持てる力を常に発揮できるようにしておく事こそ、肝心なのだからな。
要は相手にリードされなければいいのだ。
常に戦いに於いて、相手よりも手数があるかなのだ。
なので、まずは戦略を覚えなければならない。
幸いにもヒロには、ラーニングスキルがあるのだからな」
「そうだね、今からアレコレ考えてても仕方ないし」
「そうそう、ヒロが今やらなければならない事は、ひたすらに強くなることだけを考えればいいのよ」
「そうだぞ、ヒロ。
今のお前に必要なのは自信だ。
誰が来ても実力を出し切るだけだ。
そのために俺たちがいるのだ」
「うん!」
ヒロにはまだ、思うところはあるようだが、誰が相手でも勝ち進むだけだ。
今、ヒロは燃えに燃えたぎっていた。




