相伝
ホーリーフェンリルと歩きながら、会話していると、やがて、神殿前に着いたようで、ホーリーフェンリルはやんわりと動きを止めた。
見れば、神殿の入り口には美しい緑色の姿をした女性たちがいた。
「ようこそ、おいでくだされました、勇者様。私はドライアドのアドラと申します」
アドラたちは一同に、うやうやしく挨拶してくれた。
アタシはそれを見た後、挨拶をかわした。
「アタシはヒロ、ヒロ・オイカワよ、そして、アナタがアドラなのね。
アナタたちはアタシを待ってたの?」
「はい、私共はずっと長きに於いて、勇者様の精霊具をお守りしてきました。
どうぞこちらへ」
アタシはアドラの案内のまま進もうとする、が。
一度、ホーリーフェンリルを見た。
「私はこちらでお待ちしております。主様、どうぞ、行ってくださいまし」
アタシはすぐアドラに追いついた。
ずいぶんと長く歩く。
沈黙が続くので、場が持たないな・・・。
にしても・・・。
道中、何度か違和感を感じたが?
「失礼、いくつかの結界をくぐらなければなりませんのでね」
ヒロの気配に気付いたのか、アドラが振り返り口を開いた。
結界?
そうか、これはそれをくぐった時の感覚か。
「ところで・・・」
「いかがいたしましたか?
勇者様」
「聞いていいかしら?
精霊具って何?」
「それは女神さまや精霊たちによる加護を受けており、また、精霊たちからの贈り物でもある物です。
それは勇者様をお守りするための神器でございます」
「加護?」
「はい、まず、女神さまの加護により、身に着けると能力が飛躍的に上がり、防御も高まります。
また、宿る精霊の霊力に拠りますが、今回のは風の霊力と加護が勇者様に与えられるはずです」
「それはやっぱり、魔王を倒すために?」
「左様でございます」
「ずいぶんと長く、ここで精霊具を守っていたみたいだけれど、ここってどこなの?」
「ここは聖なる地、貴女方の世界から離れたところにあります。
それを女神さまのおられる地から、精霊たちの霊力に依り、繋げておられます。
かつては女神さまと人々との交わされた場所でもあります」
「へぇ、精霊具がそこにあるのも?」
「左様でございます。
精霊具は以前の長き闘いにより傷付かれておりました。
そこで、この地に於いて、回復すると共に邪なる者の手からお守りしております」
「その精霊具がかつて、アタシが所有していたみたいだけれど、それって、アタシがこの世界にいたって事?」
「左様でございます。
精霊具と共に私たちは長い間、勇者様がいらして下さるまで、お待ちしておりました」
「でも、どういう事?
アタシ、一度、あっちの世界に生まれてたって事よね?」
「一度どころか、何度もあちらの世界で生まれ変わっておられますわ。
私たちが精霊具を女神さまに授けられてから、悠に三千年は過ぎておられます」
三千年!?
そんな長い間に?
「勇者様はあちらでの回帰が長かったがために、その記憶に影響がございます。
ですが、それも致し方のない事です」
「でも、なんで、そんな長くに?」
「それはまず、勇者様と魔王の対決は、実は今回が最初ではございません。
何度も繰り返されてるのでございます。
今回は数えて実に7回目となられます」
「えぇ?
魔王は倒されたんじゃないの?」
「いいえ、眠っておられます。
いずれも既に目覚められているでしょう。
勇者様が既にいらっしゃいますので、魔王が目覚める時、勇者様がこの地に下りられますのでね。
つまり、勇者様は何度か魔王と対峙しておられますが、魔王は不滅なのか、度々、復活なされております・・・」
実にショッキングな現実・・・。
「そっか、魔王って、しぶといのね、それで今も復活してるのか・・・」
「左様でございます。
かつての勇者様も、こちらで何度か回帰しておられます。
勇者様の魂は、ここ聖地にて、ごゆっくりと回復されるのでございます」
「え?
でも、アタシはあっちの世界で生活していたよね?」
「魔王は前回、ただ眠ったままではございませんでした。
眠ってる間にも、さらなる力を得て、復活なされたようでした。
それでも、勇者様は魔王をかろうじて倒しました。
しかし、その闘いはこれまで以上に凄まじく、流石の勇者様でも、重く深く魂までも傷つかれました。
聖地での回復が難しい状況にまで、追い込まれたのでございます。
故に、女神さまのお力であちらの世界へと送られました。
が、しかし、魔王も無事では済まなかったようです。
復活までのお時間が長かったのもその影響があるようですね」
「あっちの世界の方が、回復するのに都合が良かったって事?」
「はい、こちらの世界と違いまして、あちらの世界は魔力のない世界でございました。
なので、あなた様が今も、魔力の制御が不慣れなのもその影響でございます」
「魔力の有無が関係してるの?」
「はい、魔王により受けた魂の傷は、邪悪な魔力に蝕まれておられました。
その影響で回復にまで影響を受けました」
「そっかぁ・・・、それで魔力の影響のないあっちの世界で・・・」
「左様にございます。
私供は何年も勇者様が、いらして下さるのを心待ちにしておられました。
なによりも、精霊具が勇者様をお待ちしておられますよ。
貴女様のお帰りを、お喜びになさっておられるようですね。
いつもよりも輝きを増してございますね。
ほら、あちらにて、見えられている物がそうですよ。
あれが勇者様の所有なさる一つ目の精霊具、疾風のアンクレットでございます。
どうか、勇者様の御手にてお受け取り下さいませ・・・」




