岐路
夢を見た後、アタシは訓練を途中で終了させて、いつもの部屋に戻ろうとしていた。
そしたら・・・。
今、アタシは男爵邸のある奴隷屋敷を出て、とある伯爵領へと馬車を進めて、5日は経つ。
アタシは奴隷の身だから当然、別々に荷物と一緒に馬車に乗せられている。
先頭を進む高価そうな馬車には、当然、アタシのマスターであるカイデン男爵様がいる。
間もなく、街の大きな門の前に着いたようだ。
正門で受付を終え、伯爵邸へと向かうと門の前でアタシは降ろされた。
ここからはカイデン男爵様の馬車に付いて歩いていく。
これからはここの有力な伯爵様と面会する事になるのだ。
ほんとに緊張するわ・・・。
なんで、ここにいるかと、こういう事である。
それは、去る先日の事・・・。
アタシは朝から、カイデン男爵様に呼ばれ、応接間に通された。
そこにはカイデン男爵様は無論、ジャッカルもいた。
戸惑っていると、カイデン男爵様が口を開いた。
「最近、活躍しておるようだな」
「え、い、いえ、お陰様で・・・、カイデン男爵様の恩情の賜物ですから」
「ふむ、今回、お前を呼んだのは・・・他でもない」
カイデン男爵様はちらっとジャッカルを見る。
「は、後は私が説明させて頂きます」
「手短めにな」
そして、カイデン男爵様とジャッカルは互いに軽く会釈をする。
「ヒロ、お前は出張で、そこで仕事がある」
うむむ?
出張?
何だろ、この展開は!
「これはシュナイダー伯爵家による正式依頼だ。
その詳細についてはそこで説明がある。
貴様はかの伯爵に失礼のないように。
話は以上だ」
ん~、でもいくつか疑問がわいてきたので、色々と聞いておきたいなぁ・・・。
「あの・・・?
お尋ねしたいことが・・・」
「私共に答えられる範囲であれば、なんなりと」
「はい、では、ここで実際の話、そういう事ってあるのですか?」
そこでカイデン男爵様が舌打ちをした。
ん?
何だ?
カイデン男爵様が不満そうだ。
「ありませんよ。
これは極めて異例中の話です。
私共には初めての出来事なのです」
ジャッカルもその気配に気付いたらしく、口調が重そうだ。聞いちゃいけなかったのかしら・・・。
なにやら、空気が悪くなってる気がするったらする~・・・。
でも、まだ確認したい事があるから、非常に尋ねにくいが、あえて、聞くことにした。
「異例・・・、正式依頼・・・ですよね?
そこで何があるのですか?」
「依頼内容につきましては、伯爵領で説明があります。
これも先程、説明したはずですが?」
「なるほど、では、それはアタシに対するアレ・・・ですかね?」
「アレ・・・とは?」
「え、いえ、もういいです・・・」
うわぁ、カイデン男爵様からの無言の圧迫がすごい~・・・。
カイデン男爵様は何やら睨んでるし、ジャッカルが困ってるなぁ。
これは受けないとダメな空気のようね。
「判りました。
これ以上はもういいです。
正式依頼、承ります」
そこで、カイデン男爵様が静かに頷く。
ようやく、場が収まった。
ふぅ~・・・。
アタシはやっと安堵していたのだった。
「よし、準備が出来次第、私と共に明日、出発する。
いいな?」
「はい、了解いたしました、カイデン男爵様」
「では、話はここまでだ。
ヒロは準備しておけ。
後はジャッカルと話があるのでな」
「了解いたしました。
では、これにて失礼いたします」
アタシはこのまま、部屋を出て、いつものように一日を過ごし、今に至るってわけだ。
なんとなんと、アタシはここへかっさわれて以来、初の外へと出る事になったのだった。
積み荷と一緒の旅ではあるが、久々に見る外にアタシはいつになく興奮していた、が・・・。
これから向かう場所がね・・・。




