段階
腑に落ちない。
アタシがチャンピオンに狙われるわけがないのよ。
今はまだ強くなる段階なのに、ね。
あれから、ロックに呼ばれ、今日あった事について話していた。
「チャンピオンから指名を受けたって?」
「まぁね。
なんで、そうなったかは知らないわ。
ほんとは嫌だけれど」
「ふむ・・・。
まぁ、ここのシステムについては前に説明したが・・・」
「クラスが上がるにつれて、特権を得るんだったかな?」
「その通りだ」
微妙な間が流れた。
「その一つがチャンピオンだ。
Cクラスからは、各クラス毎の闘技者ランキングが設けられる。
その最上位にいるのがそうだ。
そのチャンピオンとなって、次のクラスへの挑戦権がえられ、クラスアップの条件にもなっている。
ただ、本来であれば、Dクラスのお前が知るには早かったんだがな・・・。
まぁいい。
いずれにしても、近いうちにクラスはまた上がるだろう。
今のお前ならBクラス辺りが妥当なとこだ。」
そっか・・・。
「拒否も出来るけどな?」
「でも、いずれも相対する事になるなら、闘うしかないでしょう」
ロックは思った。
まぁ、拒否続行は、ある意味、死を意味するからな。
稼げない闘技者は不必要となる。
ヒロはそれに勘づいてるのだろう・・・おそらくは、な。
どっちにしても・・・、いずれも死しかなくなるかも知れん。
「だが、まぁ試合は行われなくて済むかも知れん」
え?
一瞬だが、耳を疑った。
「以前にも話したな。
闘技者はイコール商品である事。
そして、お前にとっては幸か不幸かは知らん。
が、王侯貴族らからだがな、ヒロの買い付け希望が、上に殺到してるらしい」
どういう事?
アタシは混乱してるので、言葉が浮かばない。
「初耳か?」
アタシは頷いた。
けど、疑問がある。
「それって、アタシに商品としての価値が?」
「まぁ・・・そうだな・・・。
そういう事だ」
「へぇ・・・?
なんで、アタシが?」
「そうさな、女性でチビッ子闘技者なんて前代未聞だから、多分、そんなとこだろう。
早々と消える前にと思ってるのがいるのだろう」
アタシはゾクっと寒気がした。
つまり・・・、変態・・・。
ゴメン被りたいわ。
「だが、ひょっとすると次の試合で決まるかも・・・な」
うん?
何が?
アタシは話の内容が見えて来なくて、キョトンとしていた。
「まぁ、しかし、この話は可能性として、だがな」
あらら・・・、まだ不確定なのね・・・。
「どうした?」
「え?
いいえ、なんでもないわ」
でも、それなら、早く買い付けに来て欲しいわ!
その方が手間もかからない!
だけど、嫌なマスターだったら・・・!。
こうなったら、いいマスターに恵まれるしかない!
「どのみち、本部はまだまだ、お前を手放すつもりはなさそうだぞ。
これから活躍させて、もっと値を吊り上げるまではな」
なんとまぁ腹黒い・・・。
この分では、ここの稼ぎは多分、王都に吸い取られてるのかも。
まぁ考えてみれば、そうである。
「あら、でも、チャンピオンはいるのね?」
「フッ、当然だ。
金のなる木を手放すはずがなかろう。
まぁ、理由はそれだけじゃないし」
あ、なるほど、納得。
そうなってからでは居残り確定っと。
「お前にはまだ知るには早いから、ここだけの話だがな。
Sクラスのチャンピオンになれば、大金が得られるし、市民権が認められるぞ?」
え?
それって初耳!
「市民権って・・・それマジで?」
「まぁ半々ってとこだ。
契約上は奴隷である事は変わらない。
だが、大まかなところ、行動は制限されてはいない。
ほぼ自由と言っても差し支えはない。
闘技報酬はそのまま与えられるしな
ただ、チャンピオンが負けたらクラス落ちになり、権限は無効になるがな」
あら・・・、ペナルティは大きいのね。
「ふぅ~ん・・・」
けど、納得いった。
誰もがチャンピオン目指し修行してるって事よね。
そして、チャンピオンはその座を守るのに必死ってわけだ。
だから、アタシんとこにもチャンピオンが来たって訳か。
けど、チャンピオンねぇ・・・。
あっ、でも、市民権かぁ・・・。
それもいいかも!
「そればかりではない」
「まだあるの?」
「チャンピオンともなれば売出し価格は格段に上がる。
それなりに人気も出れば、オークションで売られる事もあるのだ」
あらあら、またしても腹黒い事だ。
「まぁ、興味はないだろうな」
「でも、市民権は魅力ね」
「ハハハ・・・、ヒロらしいな」
いずれにせよ、チャンピオンも悪くはないかもねぇ。
市民権で動きの制限がなくなれば、あれこれも出来るようになるわね。
「だが、幾多の相手を倒して行かねばならぬぞ?
特に今のヒロには厳しい闘いになるな」
「でしょうねぇ・・・」
確かに言える。
ここでアタシは奴隷戦士として雇われてはいるが、何より、アタシはまだ12歳の子供だ。
非力なアタシがそこまで行くには、もっと強くならなければならない。
「ロックはどう思うの?」
「どう思う・・・とは?」
「アタシがそこまで強くなれると思う?」
「可能性としてはゼロではない。
何よりも魔法の使用が解放された今では、ほぼ敵はいないと見た方がいい。
が、今のクラスではな、上に行けば、それなりの強者がいるのが普通だ」
ゼロではない。
しかし、現実は厳しいって事ね。
「しかしまぁ、方法はある」
「え?
それって・・・」
「幸いながらもヒロは魔力が高い。
それに・・・。」
ロックは間をおいて、ヒロを見た。
「闘いながら、相手の得意技を覚えるんだ」
「あぁ・・・ラーニングね」
「無論、闘技観戦でも出来るだろうが、簡単には見せはしないだろう。
だが、闘いで手ごわいと思わせれば・・・」
それで、強化できる!
「でも、クラス上がって行って・・・だよね、時間かかるわ」
「でもないさ、もうすぐチャンピオン・カーニバルがある」
チャンピオン・カーニバル!?
「年に一度のコロッセオでの祭りさ。
一週間は続くからな、それはもう盛大になるぞ。
そこで一般人気投票があってな、それで10人までは一般人によって選ばれる。
そのあとはチャンピオンへの挑戦権を得るためトーナメントで競い合うんだ。
一般人気投票で選ばれる闘技者はDクラスからは可能だよ、確かな・・・。
そうなると、トーナメントで一戦、勝てば、無条件でクラスアップ出来るぞ」
「そうか・・・、それが早道なのね」
「うむ」
「だけど、アタシ、選ばれると思う?」
「その点、ヒロはついてると思うぞ?
お前の人気はいま、うなぎ上りだろうが。
それで気がかりになったのではないのか?」
そこでロックはニヤリとしてヒロを見る。
あっ!
「ふん、やる気はあるようだな。
それなら、明日からは猛特訓だぞ」
「え~・・・そんなァ・・・」
やっと、納得いったわ。
そっか、上へ駆け上がるために必要な事なのね。
ならば、アタシは目指す。最頂点へ・・・。




