指名
ようやく、Dクラス入りを果たし、アタシは自由になった。
まだ制限付きだけれどね。
まだまだ、アタシの闘いは終わらない、もっともっと強くなるために。
この街はセイデンと呼ばれ、王都からは少し離れた場所にある。
コロッセオが地下で行われるなら、当然か、と言うところでもある。
アタシは久々の自由を満喫していた。
と言うのも、ヒロはあれから、キャシー、ロックとの訓練を重ねて行き、いくつかの技を覚え、それらを駆使しつつも闘技試合をこなし、Dクラスへとクラスアップを果たしたのだった。
ロック曰く、実質ともに最強に近づいたとか?
最強とかまだ無理でしょ!
まぁ、ラーニングを授かれば、それも普通みたい、な?
それよりも今は、アタシにもファンがついたみたい。
とりわけ、アタシの闘技試合の時には、満員状態で予約も待機状態ぽいのよね。
そんなこんなで、Dクラスとなった今は、ある程度の自由が与えられて、街まで歩けるようになっていた。
そして、ある程度であれば、銀貨も与えてくれる。
けどまぁ、事情を知った今は逃げようとも思わなくなっている。
というのも、アタシは強くなれていない。
まだまだ、訓練を続ける必要があると、アタシは思っている。
でも、自由を満喫出来るのはいい事ね。
ん?
ファンがたくさんいるのなら、変装もしないと?
それが、そうでもないのよね。
街往くアタシを知る人はみな、アタシの顔を見たら挨拶程度で済ませてくれるわ。
そればかりか、少しばかりのサービスもしてくれる事もあるのよ。
こうしているとまるで自分が奴隷だなんて思えないわ。
そんな時にコニーを思い出した。
あれから、最初のうちは一緒に稽古もしたが、今ではアタシが格上で相手にもならない。
逆にそれまでの恩を返す意味でもアタシが稽古につきあう形になってしまっていた。
そのコニーはクラスアップに苦労しているようである。
コニーも自由になれたらここで一緒に遊べるのにな。
まぁ今はとりあえず、今は久々の自由を満喫したかった。
街の中心地にある広場へと向かっていた。
その途中でアタシを知るアイス屋さんでソフトクリームをくれた。
アタシは有頂天になりつつも、ソフトクリームを味わっていた。
広場へ出ると、そこでは、ちょっと騒ぎになっていた。
何だろう?
「おい、どこにいる?」
見ると誰かが絡まれていて、誰かが何か問い詰めてるようでもある。
「あ、あれがヒロです」
掴まれてる人がアタシに気付くと指さして言う。
すると、一気に周囲の視線がアタシに集まる。 えっ、え?
何、この人・・。
「なんだ、こんなチビか?」
むっ、失礼な奴!
「誰よ、アンタは?」
それを聞いたアイツは大声で笑いだした。
「えっと・・・、今のコロッセオでCクラスチャンピオンですよ、トミー・ギリクです」
そこで隣にいた人が耳打ちして、教えてくれた。
「へぇ?
チャンピオンなんだぁ、それにしては下劣よね、アンタ」
すると、笑いを止めた。
「ふん、生意気なガキだ。
まだ俺を知らぬ者がいたとはな・・・」
近くで見ると、アタシの背丈の倍以上はある。
筋肉もすごい、どこもかしこもモリモリである。
「お前、ヒロだったか?
この俺様とやり合う気はないか?」
「は?」
「つまりだ、俺と闘えるとこまで早く上がって来いって事だ」
「アタシがアンタと?」
「そうだ」
トミーは不敵な笑いを浮かべた。
そんなマッチョな相手、つとまるわけないわ、こいつ、馬鹿?
「なんで、アタシなわけ?」
「お前、最近、人気が上がってるだろう。
どんな奴かなと見学がてらな。
そしたら、こんなチビだったとはな」
「嫌よ、誰がアンタみたいな下劣な奴。
お断りよ」
「ワハハハ・・・、俺はな。
お前みたいなチビは大好物なんだよ。
ノミみたくプチっと潰すのが楽しみでな」
「いい趣味してるわね。
大の大人がこんな子供を相手にして、楽しい?」
「あぁ!
楽しいさ、言っただろ?
俺の餌食にしてくれるわ」
「まぁいいわ、アタシもアンタみたいのは大嫌いだし、面倒だけどさ。
相手してもいいわ、いずれもクラス上がったらね」
「ふん、どうとでも言え、とにかく早く、俺のところに上がって来い!
いいな?」
「どうでもいいけど、アンタさ、これ見てもおんなじ事言えるの?」
アタシは片手を上に差し出す形で炎を出してみせた。
瞬間、周囲の人たちはどよめき引いて行った。
とは言え、こぶし大くらいの小さな炎ではあるが。
「魔法か、そういあ、聞いたぜ。
とんでもない魔法が使えるってのはな。
だが、俺にはおどしにもならんぞ」
「そう・・・、なら楽しみにしてるのね。
アンタが黒焦げになるのをね」
トミーはそれを聞くと、笑いながら去って行った。
というかさ・・・。
チャンピオンなんてのがいたなんて知らなかったわ。
チャンピオン?
そんなのがいたの?
訳判んないまま、アタシは指名を受けてしまったわ。




