課題
前途は洋々としている。
アタシは闘って、闘い抜く。
それが、アタシに決められた宿命ならば。
すると、ロックに手招きされて、アタシは言われるがままにロックの前に立つ。
「もう、これは要らないな」
そう言うと、アタシの首輪を外してくれた。
「こんな話を聞いたら、お前ももう、逃げ出そうとは思うまい」
「気付いてたのね」
「当然だ。
しかしまぁ、ずっと、秘密にしてたことは謝るよ。
これも仕事なんだ」
「まぁいいわよ、仕方ない事でしょ」
アタシはロックに思いっきり笑顔を見せた。
「これで、お前も魔法が使えるようになる。
そこで、だ。
お前の方針を聞きたい。
お前はこれから、どのように闘いたいか?」
「そうね、ぜいたくは言わないわ。
魔法も使えて、剣で立ちまわって、時には弓で遠くからでも狙えるようになりたいわ!」
ロックはそこで呆れていた。
「お前な・・・、それを贅沢って、人は言うんだよ・・・」
アタシはそこでケタケタ笑って見せた。
「うん、でも、やりたいの」
◆
今、ヒロは誰もいない訓練場にいた。
首輪を外され、魔法が解放されたのを機に試したいことがあったからだ。
ここはあらゆる事態に備え、シールドされた場所だから。
つまりはここは、魔法や衝撃にも対策された空間でもあるのだった。
ここはそれを試すのにもちょうどいいわ。
アタシはあの時を思いだしていた。
鮮明にそれは体が記憶していた。
女神ディナが降臨したあのシーンだ。
そして、渾身をこめ放ったあの魔法・・・。
それは女神に授かった力によるものか、制御がなくなり解放された力によるものなのか。
アタシはそれを確かめねばならない。
今も力を制御するためにそれは首にある。
アタシは深呼吸して目を閉じた。
渾身の力をこめそれを放つ。
「ファイアロー!」
◆
それからのヒロはクラスアップに向けて、いくつかの試合をこなして来た。
ロックは呆れていたが、ヒロの希望通り、それを方針として進めていく事となった。
そうして、ヒロは日々、訓練をこなし、実力を身に付けていく事となる。
ミーティングが終わり、あくる日に訓練が再開された時。
「どこで覚えた?」
「え?」
素振りに瞬動や連続攻撃をおり交ぜていた時、唐突に聞かれた。
「そう言えば、闘技試合でも、それを見せていたな?
それまでの稽古でも、俺に見せた事がなかった。
通常、そのスキルは何ヶ月かの訓練をして得るもんだ。
だが、お前が剣術を学んだのは、聞けば、最近、始めたばかりだそうだな?」
うっ・・・。
どう答えればいいのだろう・・・。
試合の真っ最中に女神が降りてきましたぁ、なぁんて、言っても、精神異常者と思われるのがオチだよね・・・。
「ん?」
「あの・・・、ですね」
「うん?」
「判りません」
そう言って、思いっきり、微笑み、ごまかした。
それを見たロックは呆れた後に頭をかき出した。
そして、軽くため息をふいた後にまた尋ねる。
「あのな・・・、真面目に答えろよな?
俺はお前に闘技を教えてるんだぞ。
したがって、お前に今、何が出来て、出来ないのか知る権利はあるぞ。
無論、それによっては、鍛え方も変わってくる事もあるのだからな」
そう申されましても、説明に困るのよねぇ・・・。
「えっと・・・、あの・・・、うん、でも・・・」
「そうか、俺では話出来ないのなら仕方ないな」
「どうするの?」
「闘技不適格者として報告した上に、お前を別のところへ移動させる」
と、ロックは思い切り脅して来た。
ロックはそれなりに、これまでのヒロの状況を見てきて、ヒロが強くなりたい理由も想像がついていた。
なので、わざわざ脅しに切り替えたのだった。
「え~・・・」
アタシはすっかり困惑してしまっていた。
マジ・・・?
それ、ヤバいって・・・。
アタシはここで強くなるって決めたばかりなのに。
そこで、アタシは意を決して、説明を始めた。
「閃き・・・?」
「うん」
「あの試合で突然、使えるようになったって事か?」
「うん」
「う~む」
ロックは天を仰いで、しばらく考え込んでしまった。
「あの・・・」
「んっ」
「ロック?」
「まぁ待て、頭を整理してるとこだ」
ロックはしばらく腕を組んで考えていたが、大きく頭を頷くとゆっくりと聞き返す。
「あのな、どう考えてもありえないぞ。
突然スキルが使えるようになったってのはな。
その時に何かあったんだろう」
そこでロックはアタシを見据えた。
うっ・・・、するどい。
その通りなんだけれど、それだけは口が裂けても絶対に言えない事だ。
ロックは仕方がないと言ったそぶりを見せたあとに続く。
「そこはあえて聞かない事にする。
スキルが突然、使えるようになったのは事実なんだ。
そうなったら、これからの教育方針を改めよう」
「どうするの?」
「これからは基礎体力作りを中心とした訓練に切り替える。
んで、ラーニングとか言ってたな?
それは他の闘技見学や試合にて得ることとしよう。
ラーニングで得られるのなら、あえて教え込む必要もなかろう。
そのための基本的な動きやパターンを知るためにも、必要な戦闘フォームは教えるがな。
だが、その前に俺が教えられるスキルはすべて伝授する。
そして、戦法を教えてやる」
「い、いいの?」
「お前が強くなるためだからな。
普通はいくつかの段階を踏んで覚えて、訓練で身に付けて行くものなんだがな・・・。
それ使われるとベテランなんかは涙目だな。
習得するのに日にちがかかるものなのに、あっという間に身に付けられちゃあな」
「テヘヘヘ・・・」
「まぁいいよ、それはお前の特権だ。
これで一気に強くなれるのだからな」
あの時に見た閃きを信じて疑わなかったロック。
ロックは今、自分の予感を信じて良かったと、改めて思いながらもヒロをみつめていた。
「いいか?
ヒロ、戦法あってのスキルだって事をよ~く、頭に叩き込んでおけよ?
それを教えるのだからな、死ぬ気で覚えろよ」
「え~・・・」
訓練はいよいよ本格化する。
ただ、魔法が問題であった。
一人で学ぶにも限度があるよね・・・。




