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爾後

 ヒロは今、大きな転換を迎えようとしている。

 そんな予感がしてならない。

 ヒロは満足気に闘技場を後にするのだった。

「さて・・・と」


 あれから、バトルの後、ロックの部屋でミーティングが行われるみたい。

 アタシはロックの前でテーブルに付き、椅子に座り込んでいた。

 どんな話が振られるのやら、ね。


「おめでとう」

「え?」

「お前は先の試合でノービスクラスからFクラスへと上がった。

 今から行われるのはコロッセオのしくみとその営利目的を説明する」

「どういう事?」

「それを今から話す」


 アタシはまだ頭の整理が出来ていない。

 そもそも、ノービス?

 Fクラス?

 言われてみれば、アタシはコロッセオのしくみを、まだまだ、知らないのだったわ。


「まず、闘技者の強さをクラスによって分け隔てられ、それぞれのクラスに応じた相手と組み合わされ、試合が行われる。

 クラスには、上からSS、S、A、B、C、D、E、Fと続き、ノービスがある。

 今のお前のクラスは元はノービスであり、クラスアップの条件として、1体の魔獣を単独で倒す事にある。

 それによって、今のお前はFクラスへと昇格したのだ」

「へぇ~・・・」

「まぁ、それに伴わって、初めてコロッセオの全容を知る権利が与えられたという訳だ」

「何それ?」


 クラスが上がるまでは何も知らされないって事?


「多少の演出が必要だろ?」

「うわぁ悪質~・・・」

「まぁそう言うな、そういうシステムなのだ」

「クラスによって分けられるのはなるべく実力差のない試合をって事だよね」

「うむ、そして、クラスによって与えられる権利が拡大されるしくみだ」

「へぇ、それでFクラスになって、初めて、事実を知ると?」

「そういう事だな。

 ちなみにEクラスに昇格すれば、対魔獣から対人へと相手が変わる事となる」

「対人・・・」


 殺し合いは嫌だな・・・、アタシ、人を殺せるかなぁ・・・。


「まぁ、散々脅されてきたからな。

 当然の反応だ。

 だが、ちなみに殺し合いはない」

「え?」


 何ですって?


「もしかして・・・、それも演出だったり・・・、する?」

「その通りだ、これに関しては代表して俺が謝罪する。

 今まで申し訳なかった」

「人が悪いわねぇ。

 でも、ホッとしたわ!

 酔っぱらってたのもそれ?」

「いや、それは俺自身の問題であって、本件とはまた別の話だ。

 だが、心配するな。

 これからはお前を一流の闘技者として、育成するからな」

「それならいいけど、ね。

 あ、でも、気になるんだけど、いい?」

「何だ?

「今までの対魔獣戦で倒された人たちは?」

「うむ、それはしっかりと治療されている。

 そうした事はすべて対策はされている。

 万が一を考え、魔獣使いも控えているからな。

 場合によっては闘技試合の没収もあるのだ」

「安全対策は抜かりないって事ね。

 ちなみに不合格となったら、どうなってたの?」

「あの事を言ってるのだな?

 あの試合で倒された者は、合格するまで、また同じ試合が繰り替えされるしくみだ」


 うげっ!

 アタシ、あそこで倒されていたら、あのブラックベアとバトルし続けられるのね・・・。


「なるほど、そんで登竜門として、Fクラスへの試験みたいな事を繰り返すって事ね」

「理解が早いな、その通りだ」

「でも、殺伐とした雰囲気じゃなくて良かったわ。

 それにしても・・・、悪趣味よねぇ。

 Fクラスになるまでは脅され続けられるってのはさ」

「まぁ仕方ないさ、ある意味、闘気のある者の選別でもあるのだからな」

「つまり、向いてないって判った場合もある訳?」

「その場合は別の奴隷として、売り出されるな」


 そうか!

 しまったなぁ、わざとやられて別々の奴隷になれば良かったのかなぁ。

 いや、その場合はアタシ自身が強くなれなくなる。

 それでは意味がない。

 そうとなったら、アタシはここで強くなるしかない。


「ここまではしくみとして判ったかな?」

「そうそう、それぞれのクラスに応じた権限って?」

「それは、いずれもクラスが上がってからの話になる」


 う~む・・・。

 今は知る事も出来ないかぁ。


「さて、次の話に移るとしよう」


 ロックは困惑するアタシを横に話し出した。


「これで、お前はもう、うちの商品となった訳だ」

「商品?」


 そこで訝しげにロックを見てると、まぁ待てとでも言うように右手で牽制した。


「言い方が悪かったようだな。

 実はコロッセオ自体が大きな奴隷市場となるのだ」

「!」


 つ、つまり・・・。


「コロッセオにはもう一つの目的があってだな、有望な闘技者を求めて、売出しも行われるのだ。

 買手は様々だが、王侯貴族の他、旅商人相手にも商売される。

 つまり、場合によっては、王侯による騎士、はたまた、宮廷魔導士への道もあるって訳だ。

 ただ、可能性は低いぞ。

 そうした事が行われたのは過去、数年もない、が、ずっと以前には実際にあった話だ。

 他にも旅商人に買われて、ガーディアンとしても有望だな」

「へぇ、騎士かぁ」

「まぁお前はまだチビだしな、騎士は無理だろう」


 そこでロックが笑う。

 し、失礼な!

 でも、これは希望が出る話だ。

 奴隷から脱して、将来ある職へ付けるかも知れないからだ。

 コニーが聞いたら、喜ぶに違いない。


「あぁそうそう、この件は絶対に他言無用だ。

 もし・・・」

「もし?」

「お前がそれを誰かに話したら、闘技試合への出場権がなくなると思った方がいい」

「あ!」


 それは困るな・・・。

 正直、騎士とかどうでもいいけど、奴隷から抜け出られる機会がなくなる、かも。


「うん、承知したわ」

 ヒロはロックとの会話で大きな確信を得た。

 これからは闘って闘い抜く。

 より強くなっていくために。

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