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プロローグ

 そこは異世界。

 それは魔法のあふれる未知の世界である。

 そこから一つの軌跡は生まれる。

 山のふもとにて怒号が飛び交う。

 あちこちで剣や棍棒等による打撃音、そして、断末魔の雄叫びが響いている。

 どうやら、王国軍勢と魔族軍勢があり、互いに死闘を繰り返していた。

 全体的に、魔族軍勢から、山側ふもとに城塞があり、周囲に砦等が設置されている。

 また、砦を中心にそれらを守るように隊列を組み、魔族側が王国側に抵抗していた。

 そして、それら魔族側を取り囲むように進行しているのは王国側であり、騎士隊を壁に攻撃を防ぎ、さらに、その後を隙を突くようにして、剣士隊が魔物を攻撃するように連携がなされ、機能されているようになっている。

 その上、背後から魔導士隊及び弓兵隊が援護射撃していた。

 さらにその後方より、僧兵隊が攻撃や防御の支援、そして、回復等を行っていた。

 互いの軍勢をみれば、王国側戦隊は僧侶による回復が滞りなく機能されており、対し、魔族軍勢はただただ力任せに押し進むだけであり、明らかに王国軍勢が優勢になってきている。

 そればかりでなく、圧倒的なまでの兵数で推し進めている王国軍勢が有利な状況であった。

 もはや魔族軍勢が敗北するのは、もはや、時間の問題だった。

 実際、戦闘が数時間程経つ頃には、死臭や血しょうの匂いで充満し、王国軍の圧倒的勝利に終わっていた。

 後は魔族側の残党狩りが行われるのみであった。

 そうして、王国軍は剣士、騎士、弓兵、魔導士、僧侶によるパーティにいくつか分けられ、周囲の探索を行っていた。

 城塞の中では残党がまだ残っているらしく、斬撃音が時折している。

 その城塞の門から騎兵が軍馬とともに、悠々とゆっくり進む人物がいる。

 その騎兵は明らかに装備から見ても格が違っており、一際、周囲を圧する空気をを放っていた。

 そして、その騎兵に近付く者が一人。


「総大将、敵側はほぼ鎮圧しております。あとは残った魔物がいないか探索中です」

「うむ、奴隷商は捕えておるか?」

「は、そちらも含め、現在、進行中です」

「ごくろう、引き続き、気を引き締めて後始末を頼む」

「は、では・・・」


 その後、総大将は馬を降り立ち、城内へ進入する。

 中に入れば、かなり広く周辺には夥しいほどの人や魔物が倒れていた。

 どうやら大通路のようだ。

 その先には王の間へと続いているようでもあった。

 総大将は周囲を注意深く見渡すと、何を思ったか、脇の通路へと進み、下階段へと続く通路を見つけ出しては、そこへ降りて行く。

 それに騎士が何人か付いていく。

 長く続く階段を降り進むとやがては地下道らしき通路に出た。

 その両側には檻が並んでいた。

 檻の中には囚われた奴隷が怯え、隅っこに隠れるようにしていた


「総大将、これは・・・」


 先へと進もうとする騎士らを右手で制し、落ち着き払ったように話を始める。


「囚われし者よ、安心するがよい。

 我々は君らを救助するためにまいった。

 よって、諸君らをこれより保護下に置くので、我が軍の指示に従ってもらおう。

 尚、怪我や弱っている者がいれば回復する準備もあるので、申し上げて頂きたい」


 すると、周囲より安堵の声が漏れ始める。


「うむ、解放させよ」


 総大将は連れの騎士を見て指示を出した。

 そして、次々と前に出て檻を一つ一つ開放していった。

 だが、総大将はそれに構わず、さらに奥へと歩みを進める。

 すると、奥側からリザードマンが現れ、数人の騎士を押し倒していた。

 どうやら、この奥は厳重に守られているようである。


「総大将、下がって下さい!」


 倒れていた騎士がそれを言い終わらないうちに、総大将はリザードマンへ向かっていた。

 そして、一太刀の一瞬でリザードマンは倒れた。


「おぉ・・・」


 倒れていた騎士は安心と共に安堵していた。

 総大将はさらに奥へと辿って進んで行く。

 すると真正面に厳重に守られている扉があった。

 魔力により封じられているのを確認すると後方へ首を向ける。

 そこにはいつの間にか魔導士が付いてきており、無言の確認をすると、魔導士が前に出て、呪文を唱え始めた。

 そして、封が解かれると、魔導士は総大将へ視線をやるが早いか、総大将は錠前を壊し、その扉を開けた。


 そこには一人の少女がいた。

 その少女は膝を抱え顔を伏せっていた。

 やがて、少女は総大将がいるのに気付くと、静かに顔を上げた。


「総大将、まさか、この少女が?」


 背後から騎士が近づき声をかけたところ、総大将が牽制した。

 そして無言で少女に近づき、手を差し伸べる。

 少女はすべてを把握したかのようにその手を取り、ゆっくりと立ち上がっていく。

 立ち上がったその姿はけっして美しいとは言えないまでも、精悍な顔つきはまだ子供のようにあどけなかった。

 だが、腰まである流れるような髪は白金のごとく煌めいており神々しくも見える。

 総大将に比較して、その背丈はかなり低い。

 並んでるとまるで熊の親子のようでもあり、少女は華奢な体つきのためか、より一層小さく見えた。

 総大将は少女の安否を確認すると、部屋から出て行く。

 そして、その後を追うように少女はゆっくりとその牢獄を出て行った。

 新たなファンタジーの誕生を。

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