表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喫茶アーネンエルベの事件簿-1st Case-  作者: 青天
はじまり₋浴室の偽り₋
4/9

アーネンエルベのホームズ

「とにかく、騙されたと思って、行くだけ行ってみなよ」

 騙されては意味がないのだ。そんなことに付き合っていられるほど暇ではないのだ。

 胡散臭くはあるが、それ以外に当てがあるわけではないのも事実なのである。

「わかった、試しに行ってみる。それで、その店どこにあるの?」

「喫茶アーネンエルベってお店。調べれば出てくるよ。でも、今日は定休日みたいだよ」

 そう言いながら夏川はスマホを操作し、地図を瑠衣に見せる。

「そうなんだ、じゃあ明日行ってくるよ」

「そっか、あとで感想聞かせてね」

 瑠衣にそれを教えたのは、それが本音ではないかと思ってしまう。

「はいはい、覚えてたらね」

 それだけ言うと瑠衣は席を立ち、そのまま大学を後にした。


 昨日の友人たちとのやり取りを経て、瑠衣は今「喫茶アーネンエルベ」の前に立っている。

「よし!」

 瑠衣は扉に手を掛けると、一度深呼吸をすると意を決して扉を開け、その中に足を踏み入れた。

 木造の店内は、レトロという言葉が似あう。木材の持つ独特の温かさがどこか懐かしさを覚える。

「いらっしゃーい、アーネンエルベにようこそ~」

 店の奥から女性の声が瑠衣を出迎える。

 心を撫でるような、柔らかな声だった。

「好きな席にどうぞ~」

 そう言われて瑠衣は店内を見渡すと、カウンター席の端に腰を下ろした。


「ご注文は?」

「えっと、じゃあ…オリジナルブレンドのホットでお願いします。あと…すいません、アーネンエルベの探偵の噂を聞いてきたんですけど…」

「はーい、オリジナルブレンドのホットと、アーネンエルベ特別メニューね。ちょっと待っててね」

 店員の女性は瑠衣の注文を聞くと、にっこりと笑うと店の奥へと消えていった。

 出された水を飲み、のどを潤すとカバンから取り出した本を読み始めた。だが、緊張しているせいか内容がはいってこない。


「お待たせ―オリジナルブレンドだよ~」

 少し待っていると店員の女性はコーヒーを瑠衣の前に置く。

「ありがとうございます」

 瑠衣は礼を述べると、コーヒーを一口飲む。

ーおいしい

 独特の酸味の後に、濃厚なコクと甘みが広がる。コーヒーにそこまで詳しいわけではないが、いい豆を使っているのだろう。加えて淹れた人の腕がいいのかもしれない。

「ごめんね、彼ならもう少ししたら来るからもうちょっと待っててね」

 店員の女性は申し訳なさそうに微笑む。

 彼と言うことは噂の探偵は男なのだろう。

 コーヒーを飲んだからなのか、それとも目の前に女性の雰囲気のせいなのか、緊張はやわらいできたこともあり、読んでいる本の内容が頭に入ってくるようになってきた。

 

「お疲れ様です。すいません明里さんお待たせしました」

 しばらくコーヒーを飲みながら本を読んでいると、カウンターの奥から1人の男性が姿を現した。

 歳は同じくらいだろうか。長身で手足が長く、全体的にシルエットが細い。黒縁の眼鏡をかけ、その人の雰囲気と合わさり知的な印象だ。眼鏡の奥の瞳は黒曜石のような漆黒の瞳で、切れ長の目と相まってキツイ印象を与えている。

「理央くん、おつかれさまー。来て早々悪いんだけど、理央くんにお客様だよー。アーネンエルベ特別メニューのお客様だよ~」

 明里と呼ばれた、女性はゆったりとした口調で理央と呼ばれた青年に言葉をかけた。

 腰まであるウェーブがかかった茶色の髪、菫色の瞳のたれ目が特徴的で、おっとりとした雰囲気が全身からにじみ出ている。この喫茶店のオーナーなのだろうか。

「わかりました。はじめまして、四葉理央です。僕がアーネンエルベの探偵です」

 現れた青年は明里の言葉に頷くと、カウンター席に座る瑠衣にそう名乗った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ