カナリア諸島7
ー残酷描写があります。ご注意下さいー
俺は甲板中央に足を向けた。
ダコスタが海賊の親玉を拘束している所だ。
「親分さん。さっきもそうだが、私はあんたに発言を許してないんだがね。」
そういうと俺は奴の顎を蹴り上げた。
俺特製のレザーブーツには鉄板を仕込んである。
蹴られた瞬間、頭の先まで激痛が走っていることだろう。
呻き、口から流血する奴の頭をつかみこちらに向けさせた。
「生きてるわけはねぇって言ってたな。何やりやがった!」
「何だとおもう?」
血だらけの唾を俺の顔にかけてきた。
ニヤけ面が汚い。
ダコスタは手に持った剣の柄で横っ面を何発も殴りつける。
「ダコスタ君。もうちょっと話をするからまだ殺さないでね。」
俺は顔を拭きながらダコスタをなだめた。
ダコスタは他の捕虜に怒りのやり場を持って行った。
気持ちはわかるが『労働力』に傷つけないでよ。
「質問を変えよう。さっき襲っていた船はずいぶんと念入りに収奪をしていたな。抵抗されたのか?」
「抵抗?いいやむしろ初めから降伏してたさ。『殺さないでくれー』って懇願してたやつもいたな。そんな奴らを簡単にぶっ殺すのなんかつまんねぇからな。1人1人じっくりと時間をかけて殺ってやったのよ。四肢を刻みフカに喰わせた奴もいた。マストに吊った奴等はは今頃血が無くなって干からびてんじゃねえか?さっきの炸裂弾は神父に巻き付けてやったやつだ。傑作だったな。」
ニタニタしながらこちらを見ている。
快楽のために海賊行為をしてんのかよ。
「あと2人ってところでてめぇらが来たからな。でけぇ船だし乗り換えるにはちょうどいい船だと思ったんだが…見誤ったみてぇだな。」
「あぁそうだな。てめぇの話なんか聞くんじゃなかったよ。」
「だが、あんた等もなかなかの悪党だな。こんだけ躊躇なく簡単に人間をぶっ殺しちまうんだからな。」
ケラケラと笑っている。
周りの捕虜になった海賊共も何人か同様に笑っている。
…クソッ…
虫唾が走る。
「俺はな…」
俺は右手を上げた。
「無法の者との対話術なんてものは持ち合わせてねぇんだよ!」
スッと右手を下す。
刹那、俺の足元には血しぶきが飛んだ。
周りにいた捕虜たちは黙り込んだ。
昨今の商船や冒険船でここまでする奴は今までいなかったんだろう。
カナリアも平和になったな。
海賊共が平和ボケしちまうほどか…。
「大将の首をもって我々の勝利とし、お前等の処遇は俺が決めさせてもらおう。今すぐ殺すことはしないが、俺の処遇に不満があるならば大海にこの船と共に沈むことを許してやる。」
全ての捕虜は俺の指示に従った。
捕虜共を俺の船に乗せる。
飯は少ないし自由はないけど我慢してくれ。
「さて、ダコスタ君。遺体は海に還してやってくれ。穢れた魂は母なる大海によって浄化されるのだよ。」
「叙情的ですね。マゼランですか?ガマですか?」
「俺のだ。胸に刻めよ。」
「了解です。」
「まだ陽がある。さっさと支度してポルト・サントに急ごう」
朱に染まった甲板の上で2人は空を見上げた。