カナリア諸島3
「おーい!ご飯できたよー!」
ライトが船室から甲板に出てきて大声を上げた。
「ムルーとルーシは一人ずつ食べろよー!」
二人ともマストトップのから降りかけていたがライトが注意するとロープにぶら下がりながら、こぶしを握ったりしている。
俺が教えた東洋の物事の決め方「蛇拳」だ。
ルーシが勝ったようでムルーはしょんぼりしてたが、
「ムルーの分はちゃんとあるからあとでゆっくり食べよーなー!」
ライト、ナイスフォロー。
ムルーはグッと親指を立てると器用にマストトップに戻っていった。
「飯ができたみたいだ。クリス食ってきな。俺が舵をやる。」
「それではお言葉に甘えて」
「他の持ち場も班員の半分ずつ食わせてやってくれ。」
「了解いたしました。」
ブリッジの真向かいに食堂のある船室がある。
そこからブリッジまでシチューのうまそうなにおいが漂っている。
マストトップの上にもにおいが来ているのだろう。
ムルーはフニャフニャしながらルーシが出てくるのを待っている。
しばらくすると前半組の食事が終わったようだ。
ルーシがクリスにじゃれついている。
クリスも大声で笑っているところを見ると昼間っから酒が出たみたいだ。
「ライトー!飯の制限は無くしたけど酒まで出して良いって言ってないぞー!」
「まあまあ良いじゃないですか。ルアンダ出てから今日まで禁酒でしたし息抜きですよ。」
まぁ一理ある。
「それもそうだな。ただあんまり飲ませすぎるな。万が一襲われたときにへべれけじゃ話にならん。」
「分かってますよ。船長たちも食べてください。」
クリスに舵を返そうとしたがどうも陽気すぎる。
「飲みすぎてないだろうな?酔っ払い運転は勘弁してくれよ。」
「なにを言いますか!私はこう見えても英国紳士!酒に飲まれるなどあり得ませぬ!」
ガーハッハッハッと高らかに笑っている。
あぁ、だめだ。
完全に酔っぱらってる。
「クリス。酔いがさめたら戻ってきて。」
アイアイサーというやいなやブリッジに寝転んだ。
だめだこりゃ。
起きたら何にも覚えていないだろう。
「ライトー!俺の飯はこっちに持ってきてくれ。酒はいらんぞー!」
ライトは陽気だが加減を知らんな。
これから仕事のない奴だけ飲ませていいと指示を出しておこう。