カナリア諸島2
「ライト~!みんなの昼飯の準備頼むぞ!今日からは食事の制限なしで好きなだけ食わしてやってくれ~!」
呼ばれたのはラインハルト。
船上ではライトと呼ばれている。
船員の生活を取り仕切る給養班長であり、資金管理をする主計班長。
そして腕利きのコックだ。
「はーい!それじゃ30分で用意するからそれまでまっててなぁー。」
飯を作るのはフランス人かイタリア人がいい。
陽気な分イタリア人のほうが俺の船にはあっているな。
その中でもライトは飛び切り陽気な奴だ。
「「ライト~!おやぶ~ん!今日の飯はなんですか~!!!?」」
マストトップの上から聞こえるのんびりした声。
ムルーとルーシの兄弟だ。
彼らはアフリカ大陸の出身。
行きのケープに寄港した際に船員を募集しこの船に加わった。
その時募集したほかの船員たちは帰りのケープで船を降りたが二人は降りなかった。
こちらとしても目のいいムルーと耳のいいルーシにはずいぶん助けられている。
「今日は牛肉のシチューと青魚のレモンパスタとザワークラウトだぞぉー!」
「今日から食事制限なくしたから好きなだけ食っていいぞ!」
マストトップの上で小躍りする二人。
身体能力も高く揺れる船上でも驚くような動きをする。
「やった~!ライト~びっくりするぐらいおなか減ってるからたくさん作ってね~!」
「おいらは乾パン飽きてたから助かったよ~!おやぶ~ん!ありがと~!」
「できれば夕方までにポルト・サントに上陸したいんだ!ちゃんと仕事してくれよー!」
「「は~い!異常があったらすぐ報告するよ~!」」
あとは航海士に指示だな。
「クリス。風が良くないな。」
「予定より航海に時間がかかってしまったので風が弱まる時期になりかけています。ですが今日中にポルト・サントに上陸できますよ。」
彼はクリス。
本名はクリストファー・ブロイツなんたらかんたらという長ったらしい名前だったと思うが、もう覚えていない。
初めて会った時からクリスと呼んでいる。元英国海軍の士官らしいが縁あってうちの船員募集に応募してくれた。
ジェノヴァで乗船した人員ではライトと並んで重要な人材だ。
「分かった。引き続き舵を頼んだ。問題があったらすぐに言えよ。」
「えぇ。分かりました。」
時間にして約5分。
船長さんのお仕事は終わってしまった。
船員たちが優秀だと船長は気が楽だ。