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ある意味前向き?
雪の結晶はそれぞれ個性がある。
皆違っていて、皆美しかった。
けれど私は、自分を美しいとは思わない。
大した特徴もない、極平凡な見た目だった。
その事実に悲嘆などしない。
だって、端から見れば私達はただの『雪』でしかないのだから。
美しい結晶であろうと、綺麗な結晶であろうと、舞落ちる雪の一枚毎に関心を示す者はほとんどいない。
地面に落ちて溶けてしまえば、完全に差が無くなってしまう。
ほら、運命なんてものは変わらないでしょう。
皆が自身の個性を活かせなければ、無個性の私と何ら変わらない。
だから私は、憧れも嫉妬も抱かない。
短い華やかさなんて求めない。
多少の劣等感を嘆きはしない。
持ち得ぬ優美を羨みはしない。
短く儚いこの一生は、誰に優劣を決められるものではない。