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異世界転移したけどボクは帰ります。  作者: 夕刻
ウェスタン公国入国
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ようこそ!ウエスタン公国へ!

怒涛の展開だ!彼らの冒険に明日はあるのか!突き進め、サトル!行くんだ、サクラ!!


「よし、無事入れた」


「いやいやいや、ダメでしょ!」


私は内心混乱していた。

まずはお金も払わずに勝手に入国したこと。つまり不法入国だ。

見つかったらどんな目に合うか……お金もないし牢屋暮らしもありえる。

まったくとんでもない状況になってしまった……


「馬車は流石に目につくな。売ってしまおう」


「売る?そんな人目につく様なことはやめといた方が……」


が、私のことなど無視して彼女は馬を引いて道の真ん中を歩いていく。


「えぇ!?そんな見つかったらボクら捕まっちゃいますよ!」


「ビクビクすんな。怪しまれるだろ。堂々としてりゃこの人の多さだ、バレやしないよ。ま、ここでお別れってんなら別にそれでもいいけど」


「あぁ、うーー!わかりましたよ!待ってください!」


ここで置き去りにされたら余計不安だ。

私は彼女の後を追うことにした。


彼女は適当に見つけた質屋で馬車を売り払った。なかなかのお金になった様で機嫌がいい。


「クククッ、今日はいい酒が飲めるぞ」


「ボクは未成年ですけど」


「うん?確かに子供にゃあまだ早いかもな」


彼女は暫く考えた後、何か閃いた様だ。

いや、思い出した。もしくは考えついたか。


「夕飯奢ってやるよ。うまい飯屋があるらしいんだ。お前、ほとんど飯らしいもの食ってなかったんだろ?」


彼女はとびっきりの笑顔を私に向けた。


飯屋は私が想像していたよりはるかにうるさかった。居酒屋よりもさらにうるさい。

男も女もなんとも豪快に飯を食い酒を飲んでいる。


「さぁさぁ食え!奢りだからな。」


が、私の前に出されたのは白米と何か……エビの様だがノコギリの様なハサミと蠍の様な尾を持っている1メートルほどの謎生物の蒸し焼き。

見た目こそ怪奇だが匂いはカニでも魚でもない肉に近い匂いがしてお腹を刺激してくる。


「では……いただきます」


私は恐る恐る謎生物の肉をフォークで突き刺し口元に寄せる。

見た目といい色味といいでっかいカニカマみたいだ。

私は意を決して肉を口に入れる。


「!!うまい!!」


ジューシーで肉厚。噛めば噛むほど旨味が滲み出てくる。見た目通りカニに近い味がする。しかしなんと濃い味だろうか!それでいてそこまでくどくない。


「すごい!異世界すごい!」


語彙力を喪失するくらいうまかった。

かなりがっついて食べてしまった。


「久しぶりの食事では無理もあるまい」


固いパンと謎の甘いネバネバしか食べてなかったからこんなにも美味しく感じるのだろうか。

だが、しかし本当に美味かった。


「ありがとうございます。ご馳走してもらって」


「あぁ、いいさ。流石に君みたいな子を置いてはいけなかったしな」


なんだか悪い気になる。

まったく役に立ってないのにここまで親切にしてもらっていいのだろうか。

だが、彼女に頼らなければ生きていけないのも確かだ。

ここは申し訳ないが頼らせていただく。


「で、お前はあんなとこで何してたんだ?一人でいる様なところじゃないぞ」


私の食事が落ち着いたところで彼女は私に話しかけてきた。

私は少し戸惑う。話してもいいものか。信じてもらえるだろうか。


「あそこはあぶないところなんですか?」


「超危険地帯ってわけじゃないが街からは何キロも離れてるところだぞ。それにあそこは蜃気楼が起きるんだ。土地勘がないと霧が写した幻の街を追いかけて遭難なんてこともある」


かなりあぶない状況だった、ってわけか。

私はなかなか運が良かった様だ。


「あっ……えーとボクは……」


余計に本当のことを言いにくくなってしまった。別の世界から扉をくぐってここに来ました。扉は無くなっちゃいました。元の世界にはどうやったら戻れますか?なんて聞けるわけもない。


私が深刻そうな顔をしていたからなのか。彼女はなにやら別の意味で私の悩み事を捉えた様だ。


「まぁ、言いにくいこともあるだろな。あんなとこに子供一人だなんて何があったかなんて知れてるってもんだ」


彼女の顔は怒りに満ちた、しかしどことなく悲しげな表情だった。

私は違うとも言えず黙ってしまった。


しばしの沈黙。


「だが、困ったな。私はこれ以上お前の面倒は見れないぞ。貧乏冒険家なんでね」


うーむ、そうなるか。

彼女に頼ればなんとかなるかと思ったが。


「あ、そうだ。あいつならお前の面倒見てくれるかもな!」


「あ、あいつ?」


彼女はそういうと走って店を出て行ってしまった。まったく行動に移すのが早い。


「で、ボクはどうすればいいのでしょうか」


馬鹿騒ぎの店内に一人きり置き去りにされてしまった。これはこれで孤独とは違うが物凄く不安である。





それは まぎれもなく ヤツさ

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