長い物には巻かれろ
散髪したい
世の中とはとかくうまくいかないものである。私はいつになったら読者の皆様に異世界の異世界たるところを見せられるのであろうか、現状、なにやらベタベタしたやたら甘い生物しか異世界感を出せていないではないか。
ちなみにこの生物は食用することができるのは鹿の様な動物が食べていたことから推察できたことは前述のとおりである、だがこの生命体、コアというか体内に貝殻の様な器官を備えており、全てが食せるわけではない。そしてこの貝殻の様な器官、ちょうど、コッペパンほどの大きさがある。器官は貝殻型なので裏面は空洞なのだが、基本まるい方が上を向いてる。
つまり、なにが言いたいか。
もし、不幸な誰かが馬車から落ちたその下にあった場合、全身が甘くベタベタする上に割と痛いということだ。
甘くベタベタする方は、まあ、もしそうなった人がいたら、優しく服を差し出すか、そんなのはないから我慢しろ、と顔は綺麗な某冒険家のようにきって捨てれば良いとして。
問題は割と痛い、という事実である。
その不幸なだれかが意識を失った理由はそれと考えるのが普通であろう。
そして、何者かにより、馬車から落とされ、気を失った後、また馬車に揺られるうち、ケツに鈍痛と鼻をつく甘い香りという最悪な目覚めを提供してくれるならば、こんなに不快なことはないわけで。
私は心の底から声が漏れた
『帰りてえ』
「まず君は死闘の末、君の命を救った恩人に対し、礼の一つもないのか?」
たしかにその指摘は至極当然である、しかしどうであろう、この場合私には全く責任…
「蹴り落とすぞ」
「すみませんした、この度は僕のような存在をお救いいただき恐悦至極にございますれば…」
私はあらん限りの言葉で、口からでまかせで、お礼をいった。こんなナントカホイホイのような状態で馬車から蹴り出されてはたまったもんじゃない、そもそも生殺与奪を握られてんじゃないか、この状況は。
そうすればこの対応もあながち間違ってはいない、異世界を生き抜いたサバイバーとして読者の皆様にはこの知恵を授けよう。とくにチートとか、レベルマックス的な展開になっていない、もしくは目覚めていない状態の転生者諸君にはこれは必聴である。
強そうなやつにおもねろ。
幸い、この冒険家はその価値に値するだけのポテンシャルを秘めていることは間違いない、もしくはこの世界ではこれが普通なのかもしれないが。
匂い付きの服について切って捨てられたり、衝撃を和らげるという概念のない車両についての憤懣も現状ぶつける先はないのだ。
あゝ帰りてえ
抹茶アイスクリーム。