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第七話

沢山のPVありがとうございます。

念のために再度お知らせすると、更新再開時に初回から内容を改稿しています。

読み直して頂けると幸いです。

「まったく!父上は何を考えているのだ。気が狂ったとしか思えん。」

「落ち着いて下さいませ、若様。」



 仄暗い落ち着いた雰囲気の部屋。その中を苛立たしげに歩き回る青年と、その青年を諌める執事服の初老の男性が居た。部屋の雰囲気と似合わず豪奢な格好の青年と、部屋の隅に存在感が希薄な初老の男性は奇妙な組み合わせともいえる。しかし、青年は初老の男性を信頼しているようで、足を止めると男性に苛立たしげに言った。



「落ち着いてられるか!平民の女を妻にするなど愚の骨頂だろう?由緒正しきマルロノーヴェ家には貴族子女が相応しい。」

「若様、この老いぼれに少し考えがあります。」

「…いいだろう、じいやの話なら聞くのはやぶさかではないぞ。」



     * * *



 親友殿家の領地ロッソィーノ侯爵領は、王都からあまり離れていないところにある。そして山々の間に盆地があり、町は近くの鉱山からとれた鉱石を用いた機械等生活用品を作るのが盛んだ。町中は機械工房を中心に広がっており、技術者の町といった風貌である。そして、飲食店の中でもいわゆる居酒屋が多くあり、連日夜になると仕事終わりの工房の人たちが食事とお酒を楽しんでいる。

 親友殿の屋敷は王都とつながる大河とその賑やかな町の中心へとつながる川の間に在り、独自の港がある。よって、スムーズに入港して屋敷内へと招待されることに相成った。侍女の方々の歓待を受け、宛がわれた部屋で外出着から部屋着へと着がえると親友殿からお茶でもどうかと誘われたので、侍女の方に案内してもらう。親友殿の王都の屋敷にも滞在したが、こちらの領地の屋敷の方が調度品は少なく落ち着いているように思う。少し無骨雰囲気を感じるのはこの町の特徴からだろうか。



「やっと一息つけたわね、少し疲れたわ。」

「強硬突破すれば疲れますから、次からはゆっくり行くことも検討して下さい。」

「嫌よ、のんびりとした水上魔車なんて飽き飽きとしているもの。」



 お茶会と相成ったが、お互いの間にどことなく疲れた雰囲気が流れているのは親友殿に苦言を呈した通り、休みなしで水上魔車を運転してきたからである。何度かそれとなく休憩か交代を促したのだが、王都と親友殿の領地がそこまで離れていないということでそのまま強行軍となってしまったのだ。侍女の方々に気の毒そうな視線を頂いたのが印象的だった。



「失礼いたします。お嬢様、ファルミーナ様。」

「あら、ばあや来てくれたのね。ミーナ、紹介するわ。私の乳母、ロンディネよ。」

「お初にお目にかかります、ファルミーナ様。ただ、このロンディネ、老骨に鞭うってでも具申させていただきたいことがございますれば、お時間頂きたくございます。」

「私とロンディネの仲じゃない、もちろん許すわ。」



 部屋に入ってきた老齢の女性は、ロンディネと名乗り綺麗な一礼をした。親友殿とポンポンと会話が進んでいるところを見ると、とても仲の良いことが伺える。

 しかし、親友殿が上申を許可した瞬間、親友の乳母殿はくわっと目を見開き親友殿に詰め寄った。



「このロンディネ、お嬢様の成長を見守らせていただき立派なレディになられたと喜び申しあげておりました。しかしながら、私めの認識を改めざるを得ない次第でございます。お嬢様がまさか、配慮に欠けるレディであらせられたとは。時にファルミーナ様、お体の具合はいかがでしょうか?」

「…特には。大丈夫です。」



 回りくどく親友殿に話しかけていた親友の乳母殿が突然、私に水を向けてきて驚きつつ、体調に問題はないのでそう返す。



「それは大変よろしゅうございました。しかし、僭越ながら申し上げるのであれば、ご懐妊されているという認識は常に忘れずに行動されるのがよろしいかと。流産という恐ろしい事象もございますれば、大切な御子様がいることをお忘れなきようお願いいたします。」

「…話は分かったわ、ロンディネ。ミーナへの配慮が足りなかったことは認めるわ。」

「いいえ、お嬢様。まだわかっていらっしゃらない御様子。いいですか、……―――」



 親友殿は話が見えてきたらしく、罰が悪そうに非を認める。しかしながら、親友の乳母殿の勢いは止まらない。妊娠するとどうなるのか、体調の変化、胎児への影響などなど。話を聞けば聞くほど、私も意識が足りなかったかもしれないと思いつつ親友の乳母殿の話は止まらない。

 妊婦に対する扱いについての講義が始まり、私も巻き添えをくらいながら話を聞くこと数刻。話はレディとはという淑女教育にまで話が及んでおり、親友殿は痺れを切らしたのか話を遮ることにしたらしい。



「ロンディネ、そろそろ晩餐の時間だわ。私の親友であり今回は請負人でもあるファルミーナが来てくれたのだから、ロッソィーノ家をあげて歓迎しなきゃ。」

「むむ、左様でございますね。きちんと歓待せねばロッソィーノ家の名折れ。じいやに言い含めておきましょう。」

「そうしてちょうだい。」

「お嬢様、続きは明日行いましょう。では御前しつれいいたします、お嬢様、ファルミーナ様。」



 親友殿が見たことないくらい、ひどく困った表情をしていたが、侍女の方がすかさず扇で親友の表情を隠した。天下の姫様の貴重な表情ではあるが、私は見なかったことにした。すがられるような表情を向けられた気がしたが、気のせいだと思う。



「ミーナの裏切り者!」

「何のことか分かりかねます、ルミナス様。」

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