表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

第二話

(19.02.11 改稿)

 愛すべき親友殿のルミナス様に妊娠していることを告げたのがつい先ほど。よほどの爆弾発言だと思われたらしく、フリーズしたと思ったらものすごい勢いでぶつぶつと何やら言っていてすごく恐ろしい。前から何かあるとこの状態になるので、慣れていると言えば慣れているのだが。学生時代からの付き合いではあるが何か思うところがあるたびにこうなるので、もはや彼女の癖と言っても過言でも無い。

 この状態の時は、我に返って頂くのが一番なのだが部屋で魔術を使うのも…、と困っていると侍女の一人が水属性初級魔術のアクアボールをそっと彼女のうなじにあてていた。火魔術を得意とする彼女は、火の劣勢属性である水には反応がいい。案の定、ひゃあっ!?と小さく悲鳴をあげている。…侍女の方々は、仕える主の対処に慣れ過ぎていると思う。


 彼女は小さく咳払いをして、先ほどまで座っていた椅子ではなく私の近くの椅子に座り、居住まいを正すと身を乗り出して問うてきた。


「こほんっ。…ミーナ、貴女はわたくしに断りなく婚姻するほど愚かじゃないわね?」

「もちろんですわ。このファルミーナ、大恩あるルミナス様に黙って結婚などしませんわ。」

「なら、なぜ子を宿すことになるのかしら?そのような魔術が()るなんて聞いたこと無くってよ、禁術すら聞いたこと無いわ。このわたくし、古くから王家に仕えるロッソィーノ侯爵家令嬢である私でも知らない(すべ)を貴女が知っていて?」



 そうであって欲しい、という声が聞こえてきそうな懇願を含んだ威圧をかけられるが、その期待に応えることは出来ない。なぜならば、私としても半信半疑であり、またおいそれと人に話せないことであるからだ。しかし事実として、殿方と結ばれずして身ごもってしまっているため、浮世離れした話になる。そしてこの話は彼女に迷惑をかけることになるので、そういう訳にはいかない。

 だから、用意していたセリフをそのまま彼女に伝えた。



「魔術でも何でもありません。望んで殿方に子を授けて頂いた、それだけですわ。」

「…やはり、そうなのね。」



 彼女はぼんやり茫然と呟き、倒れるように座っていたソファへと深く腰掛けた。彼女は相当なショックを受けているようで、それもそうだと自嘲した。なにせ、学生時代からずっとお世話になっているはずの彼女に何も言わずに魔術師団を退団し、子供を身篭ったから故郷に帰ると言ったのだ。私が彼女の立場なら嘘か誰かからの差し金を疑うと思う。信じがたい事は無理ないし、こうして事実である前提で話を聞いてくれてるだけでも有りがたい事だ。


 思い出すのは身ごもることになったきっかけとなったはずのあの夜のことで、本当によく覚えている。夜遅くに、所用で外に出ていた私が見つけたのは竜巻のごとく渦巻く風の魔力の中にうずくまる殿方。気がつけばその周りを、舞っていた。母から教えられた古くからあるとやらの舞で、誰であろうと人前で舞うなと教えられた、秘密の舞。どうしても、今、舞わなければならない気がして。それを後押しする様に舞いに使う鈴が、普段はネックレスにしている鳴らない鈴がチリーンと静かに鳴り響いたから。だから一生懸命、魔力暴走が止まることを願いながら舞った。暴走が止まった頃には、人の足音がして慌てて逃げてしまったけれど。あの人は大丈夫だっただろうか、魔力暴走は止まったから大丈夫だと思いたいけれど。

 その後に、治癒士の方から妊娠していることを告げられたのだ。そっと教えてくれた治癒士隊長には感謝の念しかない。私自身がとても驚いたし、母から聞かされていた事が本当に起きたのだから、おとぎ話が現実になったくらいの衝撃だった。


 私が回想しているうちに気を取り直したのか、彼女は子どもの父親は誰なのか聞いてきたが、頑として答えなかった。答えようもない。が、それが良くなかったのかも知れない。



「強情ね…。まあいいわ、ミーナ、しばらく私の屋敷でゆっくりしなさい。貴女の家には我が家の者を使わすから安心なさいな。」

「ルミナス様!?」



 自分の耳を疑うようなことを言い出すので、尋ねなおすが再び屋敷に滞在するよう言われる。あれよあれよと言う間に侍女の一人に私が滞在する部屋だという客間へ案内され、腰を落ち着けることになった。

 よく分からないが、彼女がそうするよう言うのには何か理由があるのかもしれない。それに、急な展開ばかりとなってしまったが、そもそも久しぶりに彼女に会えたのだ。だから、お言葉に甘えて少しだけ一緒に話をさせてもらってもいいのかもしれない。

 そう考えていると、馬車で移動してきた疲れがどっと出て来た気がするので、この部屋に待機している侍女の方に夕食になったら起こしてほしい旨を伝えて、ベッドに飛び込んで夢の世界へ旅立った。



     * * *



「ファルミーナ・マジカの家を見てくるついでに、あの子のことを探っている連中がいないか確認してきなさい。ロッソィーノに来ることはバレてて不思議ではないけれど、動きを確認することに意味があるもの。いつも通り道中のことはお前の裁量に任せるわ、いいこと?」

「御意に、お嬢様。」

沢山の方に閲覧して頂いて驚いています。稚拙な作品ではありますが、お読み頂きありがとうございます。

また、評価・ブックマークも沢山の方にしていただいていて、手が震えています。

書きたいことが沢山で、物語もゆっくり進んでいくことになりますが、お付き合い頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=566247318&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ