中編
それから体が修復するまでの時間二人は一緒にした。
アイリが好きという花を大量にもっていってそんなにいらないと苦笑された日もあった。
一緒に寝て寝顔が怖いと笑われた日もあった。
「ふふふ、君の料理ってサビみたいな味がして最高ね」
「最高? それならよかった」
そうやって楽しい日々は過ぎていった。
ある日僕はいつものごとく庭の花に水やりをしていた時虫が花にくっついてるのを発見した。
僕は潰さないように手に乗っけて空に手をかざすと虫は飛び立っていく。
それを見て僕の中でエラーが発生した。
「な、にこれ……あれ、なんで僕今虫を逃した、いつもなら潰してる、あれ……あれ、僕弱くなってる?」
それは軍事ロボットにとっては存在価値に関わることだった。
弱い軍事ロボットなどいる意味などないのだから。
「なんで、なんでなんで……」
僕の中でたくさんのエラーが発生する、このエラーを消すためには……原因を取り除くしかない、
——アイリを殺そう。
「あ、お帰り」
扉を開けるとアイリが笑顔で迎えてくれたが僕は無言でアイリに詰めその首に手をかける。
そしていつでも魔法弾を放てる右手を顔にかざす。
「そうだ、僕は弱くない、ちゃんと殺せる」
一瞬戸惑っていた表情をしたアイリだったがすぐに納得したのか優しい顔つきになり微笑む。
「いいよ、どうせ私にはもう時間ないし」
「時間ない?」
「私ね病気なの、末期でもう無理だって言われてだから最後は一人で死のうと思ってこの森に引っ越してきたんだけど君に出会えて、とても楽しかった、無色だった人生に色がついた。 ありがとう、今まで生きてきた中で一番楽しかったよ」
瞳から涙が溢れ僕の手に落ちた。
「僕おかしいんだ、アイリの笑った顔を見ると体内温度が上がってエラーが起こるし、アイリの泣いた顔を見ると胸のコアにノイズが走ってまたエラーが起こるんだ、アイリと会ってから僕は壊れ始めてきたんだ、虫だって殺せなくなった、こんな僕じゃ誰も必要としてくれない、僕は強くなきゃ廃棄される、僕は——」
「——そんなことないよ」
僕の悲鳴をかき消す優しい声が響いた。
「それはきっと大切なものだよ、心って言うんだよ、人が一番大切にしなければならないものだよ」
「心……僕は軍事ロボット」
「でも君は人であれと作られたんでしょ なら心を持っていても不思議じゃないよ」
僕は一番最初に聞いた言葉を思い出した。
「お前には心がある、だから自分で考えて自分のために行動するんだ、お前は兵器などではない、人を知るんだ、きっとお前を大切に思ってくれる人が現れるはずだ!」
やっとその言葉の意味が分かった。
「僕は君に恋をしたんだ」
手を離し溢れた言葉にアイリはふふっと笑う。
「私も好きだよX1、いやエックス」
「エックス」
「そう君の名前、X1じゃなんか変だからね、君はエックス」
「うん、僕はエックス、ねぇアイリこれからもいろんなこと教えてくれる?」
「いいよ、って言いたいところだけど、ごめんね、私あまり時間ないの」
アイリが言うには持って一ヶ月だそうだ。
だが
「大丈夫、僕がどうにかするよ」
「え?」
「捕まって」
ひょいとアイリを脇に抱える。
とても軽くほとんど重さを感じない、けれど暖かさは感じた。
抱えたまま外に出る。
「ねぇ、なにするの!?」
「北にある国にあらゆる病気を治すことのできる薬があるって情報がある、今から飛んでいけば明日には着く、そうすれば十分治る見込みはある」
「で、でもそんなお金ないよ」
「お金は心配ない、僕は石を金に帰れる、つまりお金は心配しなくて良い
「それって違法なんじゃ?」
「上司にはよく作ってたから問題ない」
「……君の上司最悪だね」
「どこが最悪かは理解不能、それより早く行こう、時間が惜しい」
——魔力解放。
「ちょっ、まっ——きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
アイリが止める前にエックスは飛んだ、魔力でアイリを守りながら進んでるため風や衝撃はほとんどないので最高時速で飛ぶ、景色は一瞬で変わっていき景色を楽しむ暇もない。
この時エックスはミスを犯した、こんなに魔力を放出しながら進んでは感知してくださいと言ってるようなものだ。
行方不明のエックスを探していた王国はすぐさまエックスが放つ魔力波を感知し追っ手を出した。
その数は8機、どれもエックスに劣らない性能を持つ者ばかり。