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【青白いカップル】

作者: 川島千夜

寒さ吹き飛ばすネタが入ってきたのでついつい……。

これは実際に経験した話。実際に聞いた話。

さ、部屋の気温に注意して読んでください。

先日、夫と一緒に犬の散歩に出た私。

時刻は夜の11時過ぎ。

安全の為に行きつけの公園は避け、住宅街を抜けるルートを選び、私たちは歩き出した。


住宅街と言っても、古いアパートや無人となった家屋が目立つ昼間でも寂しい場所。

時間も遅く、電気が付いている窓を見つけることすら出来ないほどで、私たちは静かに仄暗い街灯の灯りだけを頼りに歩いていたのだ。


途中、小さなどぶ川に橋がかかっており、そこを抜けるといよいよ道が狭くなる。

無人の家と荒れ果てたアパートの間にある道は、ひと一人が通るのが精一杯。


そんなところにポツン……と自転車が置かれている。


犬は置かれた自転車のわきをするりと抜けていくが、私も夫も廃屋となった家とアパートの階段の下に置かれたその自転車の隙間を、身体を横にして通らなければならなくなってしまった。


「邪魔だなぁ……」

思わず自転車の横を通り過ぎながら呟く私。


その時、アパートの階段のすぐ横。

自転車の影になる位置に、恐らく自転車の持ち主であろう、若い男の子と女の子が座っているのに気がついた。


(やべ……)


恨めしそうなめでこちらを見ているカップル。

私は、彼らの逢瀬の邪魔をしてしまったことに小さく苦笑いし、慌てて口を閉ざすと一足先に広い通りに出た夫の元に駆けつけた。


「今さぁ、思わず『邪魔』って言っちゃったんだけど、あのカップルが邪魔だって言われたって思っちゃったら悪いよね。可哀想なことしちゃった」


そう言う私に、夫は小さく首を傾げた。

「カップルなんていた?」


「え、自転車のすぐ後ろ。階段の横んところにいたじゃん」

「いたかなぁ? 暗くて何も見えなかったけど……あそこ、街灯の灯りも届かないし、危ないよね」

「………………」

そう言われてみればそうだった。


街灯はアパートの向こう側にしかない。

足下がギリギリ見えるか見えないかの暗がりで、さらに無人のアパートの階段の影になっているところに座っているカップルが、どうしてあんなにはっきり見えたのだろうか。

でも、確かに私は見ていたのだ。


青白く浮かび上がっていたカップルの姿を……。

※こちらの文面・内容を無断転載・引用・流用する事は絶対にご遠慮ください※


※この作品は自サイトの無料小説ページにも載せています※

サイト名:OFFICE KAWACHIYO URL:https://officekawachiyo.com/free-novel-%E3%80%90blue-couple%E3%80%91/

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― 新着の感想 ―
[良い点] どちらもが互いの目線に気づいていたらしいところ。距離が遠ければ遠いほどそうなる確率は急激に低くなっていくのですから。 [気になる点] 何故遠くの二人は主人公を恨めしく見ていたのでしょう。 …
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