色と鳴き声と空腹
私に出来る事は最早震えるだけだ。
逃げようにも身体が動いてくれないし、第一私は蜥蜴人間さんの手の平に居る。
飛び降りようにも高過ぎる。
ぶっちゃけ怖い。
「…闇、鳥…?」
「…いえ、でも、アレに雛がいるだなんて聞いた事がありませんよ?」
「しかし、この色は…」
驚いていた2人は困惑に変わり、私を怪訝な目で見てくる。
特に美人な毒舌さんの眼差しは、酷く、冷たい。
…怖い。
私が何をしたって言うんだ…。
転生だってしたくなかったのに無理矢理させられただけなのに、なんで…こんな目で見られなきゃいけないっていうんだよ…。
「ぴぃ…」
私の嘴から情けない声が出た。
ははっ、ぴぃだなんて完全に鳥なんだなぁ。
「…な、鳴いた…」
「…鳴きましたね」
「…ぴぃ」
「なななな、鳴いたぞ!?え、これ、どうすればいいんだ!?」
「知りませんよ!」
「ぴぃぴぃぴゃー」
「あわわわわ!?」
…はっ!?
沈んだ気持ちを浮上させようとしてたのに、蜥蜴人間さんの反応が面白くて鳴いてしまっていた。
ごめんよー、ちょっとだけ美人な毒舌さんの気持ちが分かっちゃったよ。
それにしても美人な毒舌さんも慌てるんだなぁ。
しかも鳥の鳴き声一つで。
…やみどりって言ってたな。
そのまま変換すれば闇鳥。
そしてちらっと見た私の身体は真っ黒というより闇色。
何しろ光が反射しない。
どうなってるんだ、これ。
まぁ、どうせあの神様のせいに決まってる。
とりあえず……お腹空いたなぁ。
「ぴぃーぴぃーぴきゅー」
お腹空いたー、と鳴いてみるが、ちょっと変な声が出た。
鳥の鳴き声として正しいかなんて事は分からない。
しかし(一方的に)言葉が通じないって素晴らしい!
めっちゃ楽だ!
まぁ、言いたい事は通じないけどな!
「…とりあえず、エサ、とかですかね?」
「あ、ああ、そうか。…闇鳥って何食うんだ?」
「え?…死体、とか?」
「ぴゅいぃぃー!!」
ちっがぁーう!
奇跡的に分かってもらえたと思ったら死体!?
何処からその発想出て来たのさ!?
「うお!なんか怒ってないか、こいつ…」
「はぁ?」
「お前が死体とか言うからだぞ、きっと。大体闇鳥は死体食うわけじゃねーだろーが。なー?」
「ぴぃ!」
そうだよ!
もっと言ってやってくれよ、旦那!
…そうやって調子に乗ってた頃もありました。
「ふむ。…どうやら私達の言葉を理解しているようですね」
にっこり笑う美人な毒舌さんの笑顔はとても美しく…凍える程に恐ろしかった。
だから言ったんだ。
私はいつもいざという時に絶対失敗するって…。