真っ黒卵と誰かさん達
闇から目が覚めればまた闇。
なんだこれ?
私には光など必要ないとでも言うのか?
しかもなんだか窮屈だ。
身体を捩ればなんだか固いもの当たった。
ん?
身体?
そういえば私は死んだのではなかったのかと思い、そして神様の事を思い出した。
そうだよ、転生させられたんだった…。
で、あれば、今の私は鳥だ。
つまり、私は今、卵の中?
とりあえず、外の状況を確認してみようと耳をすませてみれば、人の声が聞こえた。
「あ?卵?なんでこんなとこに…」
「あ、私、オムレツが食べたいです。ふわっふわなやつですよ?」
「ちょっと待て。なんでオレが作るみたいな流れになってんだよ?大体、お前は食う必要ねぇだろうが」
「やれやれ、細かい男ですね。そんなんだからモテないんですよ」
「やかましい!」
不穏な会話が聞こえた。
…こ、これは、もう既に死亡フラグ?
生まれる前に食べられました、なんて流石に私も嫌だよ!?
せめて生まれさせて!
いや、食べられるのは御免被るけどもッ!!
私はとりあえず必死に中に居ますよアピールした。
身体を必死に動かして卵を揺らしたり、頭を振って嘴らしきもので卵を突いてみたり…。
なんで破れないのかな、この卵…。
しかし、外には効果的だったようで、卵が中身入りである事に気付いてくれた。
「…おい、動いてんぞ」
「おや、では照り焼きですかね?」
「まだ食う気か!?」
「そうですね、鳥とは限らないし。いえ、でも蛇やトカゲならなんとか…」
「や、め、ろ!!」
ひぃー!!
不穏な会話しか聞こえて来ない!!
外に出ても食われる!!
どうしようどうしよう!?
いっそ、このまま卵の中に引き篭もっていようか!?
どうせ固くて破れないし、いいアイデアなんじゃないかな、私!!
ビバ、ひきこもり!!
「大体なんでお前はあんな得体の知れない卵を食おうとか思えるんだよ!?真っ黒だぞ!?」
私が現実逃避してる間に今度は不吉な単語が出て来た。
真っ黒!?
そんな怪しい卵の中に入ってんの、私!?
ひょっとしてあの真っ黒神様が原因!?
いや、黒というより闇ですけども!!
「大丈夫ですよ。ちゃんと毒見してもらいますから」
「オレは食わねーぞ!?」
寧ろなんで貴方はそんなに私を食べる事に執着なさっているんですかーッ!?
諦めてくれよ、本当にさ!!
ぐすん、やっぱりあのまま普通に死にたかった…。
「…それにしても、なかなか割れませんね?寧ろ罅すら入ってないとは…」
「お前が食う気満々だから出たくねーんじゃねーのか?」
はい、その通りです。
いや、まぁ普通に固くて出れないのもあるけど…。
「…割りますか」
「…は?」
…え?
「大丈夫です。どうせ胃の中に入るんですから、自らでも私からでも大して変わりませんよ」
「いやいやいや!?」
…拝啓、神様。
貴方が落とした世界は地獄でした。
優しい存在なんて架空のものでしたね。
アレです。
サンタクロース的なものだったんですよ。
今度はちゃんと普通に死なせて下さいね?
勿論異論は認めねーぞ、ごらぁ!!!
そんな事を考えていると浮遊感を感じた。
あぁ、今度こそグッバイ私…。
「ちょっ、何して…」
「流石に可哀想過ぎるわ!せめて自分で孵させてやれよ!」
パキッ
「「あっ…」」
…不吉な音と共に小さな光と、ちょっぴり身体に刺さり掛けの鋭い何かが入って来た。
……………。
…気絶したい。