神様事情
「まぁ、そんな事はさて置いて、ふんわり浮かぶ魂なキミはサクッと転生して下さい。面倒臭くなってきたし」
あ、やっぱり魂なのか私。
じゃなくて、面倒なら転生なんていいじゃん。
もう普通に死なせてくれよ、本当に。
「まぁまぁ、特典も付けてやるからさ」
いらないー。
「分かった。じゃあ適当に勝手に転生させておく」
鬼か!?
「残念ながらに神様です。速やかに諦める事をおすすめするよ」
…人間だけはヤメテクダサイ。
もう人間は嫌だ。
人間関係面倒臭い。
腹の探り合いなんて出来ないんだよ、ボケェ…。
「あー、うんうん。人間に嫌気がさしたんだねー。じゃあ、なりたいものとかはないのかい?エルフとかドワーフとか妖精とか」
全部人型じゃん!
「仲間には優しい奴ららしいけど?」
らしいって…。
「だって神様がほいほい地上に降りるわけにはいかないだろ?眷属からそれとなく聞いた話だよ?…記憶が
間違ってなければ」
なんだ、その怪しげな記憶!!
神様ならちゃんと覚えててくれ!
あー、もういいよ。
諦めれば良いんだろう…。
…だったら鳥がいい。
鳥だって生きるの大変だって分かるけど、自由に空飛べる鳥になりたい。
「なるほど。…うん、じゃあ丁度いいし、キミにお願い事をしようかな?」
拒否権は?
「ないね!まぁ、大した事じゃないよ。キミが空を飛ぶ時、何を想うか…。キミの生きる予定の世界が美しいと感じるか、それとも穢らわしいと感じるか教えて欲しいんだ」
え?
「キミがどちらを感じるか…選ぶのか、楽しみだよ」
そう言って、神様は少し、本当に少しだけ…
笑った。
「さぁ、転生の時間だ!キミには箱庭に落とそう。大丈夫だ、そこには優しい存在が居る。…きっとキミを受け入れてくれる誰かが居る。でも、忘れる事なかれ。…そうでない存在も居る事を」
…神様は感情がない。
心がない。
…はずだった。
なのに、なんでそんな…
哀しげで優しい瞳で見てくるのか…。
「…キミが今度は絶望しないように祈ってるよ」
彼の顔が見えなくなる瞬間、誰かの名前を聞いた気がした。