闇と『私』
「おっめでとーございまーす!!」
死んだはずの私は、何故か妙に明るい声に目を開けた。
…開けたはずだった。
しかし何も見えない。
暗闇なんて生易しいものじゃない。
永遠に広がる常しえの闇。
なんて、我ながら厨二病チックな表現の仕方。
余裕があるのか、ただ単に現実逃避をしているだけか…。
…うん、考えるまでもなく後者ですね、分かります。
「まぁ、逃避しようが現状は変わりませんがねー」
尤もなご意見ありがとうございます。
って、うん?
「別にキミの心を読んでるとかそういったもんじゃないからね?だってキミが最初に感じた通り、キミは死んでいるんだもの。心なんてものは器があってこそ成り立つものだよ?」
全て闇だったはずの中、私の目の前には一人の青年が立っていた。
いや、彼の言う通りならば私には目どころか身体がないのだが。
…うぅむ、よく分からない。
私は頭が良い方じゃないんだよ、勘弁してくれ。
「あはは、そうだったね。んじゃあ、簡潔に言っちゃおうか」
是非ともそうしてくれ。
「あんまりにもつまらない人生を閉じたキミは神様の暇つぶしに選ばれたよ、おめでとう!!異世界に転生だよ、やったね!!」
わー、ぱちぱちー。
いりません、返却致します。
「拒否権はありませーん。神様の言う事は絶対って決まってない事もないだろう?」
そこは絶対って言わないのか…。
というか、そんなラノベ展開、私なんかじゃなくて他の人にしてくれ。
他の人なら喜んでやってくれるよ、多分。
「嫌がる人に無理矢理やらせるのが楽しいんじゃない」
ドSか。
「とにかく、これは決定事項だよ。覆りません。文句は神様に言って。指差して笑って下さると思うよ?」
わー、神様殴りたーい。
「出来るもんならどうぞ?」
なんて馬鹿な会話?を出来る辺り、この人?ノリがいいな。
ん?
というか、この人?が神様じゃないのか?
見た目はなんか中性的な美形だし、なんかこの闇そのものって感覚的に感じるし…。
「おー、意外と優秀。ご褒美に指差して笑ってあげようか?」
結構です。
「そんなキミは、きっと今の状況も分かってきたんだろ?」
…にこやかに笑う。
フリをした、神様。
この神様に感情なんてない。
ただ、そのフリをしているだけ。
そう感じるのは、きっと私にも感情がないから。
いや、ないとは語弊があるか。
嫌だとかそういったものは感じるし、希薄、と言った方が正しいかな?
恐怖とか、歓喜とか、憎しみとか強い感情が欠如している。
じゃなきゃ、こんな闇の中にいれるわけがない。
発狂ものだよね、これ。
なにより、人見知りで小心者の私がこんなに冷静に好き勝手喋れるわけがない。
「判断基準、そこでいいの?」
良いのです。
ともかく、だ。
器有りきの心とは、そういう事なのだろう。
肉体を失った私には、心なんてあるはずがない。