『私』という人間
目の前に迫るヘッドライト。
避けるにはあまりにも近すぎる位置。
ああ、私はここで終わるのかと、悲しみと安堵を覚えた。
私はいつも何をやっても駄目だった。
人見知りで人と喋るのが苦手だった。
内気で電話も苦手だったし、メールとかのやり取りですら苦手だった。
体は小さくて食が細いせいか、体力もなかった。
勉強も分からない所があっても緊張して聞く事が出来なかったり、調べようにもどう調べれば良いのかすら分からなく、結局分からないままでいる事も多かった。
肌も弱く、吹出物も多かったせいか、虐められる事も多々あった。
幸いにも暴力を振るわれるようなものではなく、悪口や軽い嫌がらせ程度ではあったけど。
友人が多少たりともいた事も幸いしたかもしれない。
私はいざという時にも弱かった。
例えば、人前で何かを発表しなくてはならない事になれば、必ずと言っていいほど失敗した。
緊張のあまり、頭が真っ白になって何も考えれなくなってしまうのだ。
臆病で、馬鹿で、何一つ誇れるものが存在しない。
自分に自信がない。
それ故に誰かと付き合った事もない。
孤独で、でも誰かといるのは怖くて苦痛で…。
死にたいと思う事は何度もあった。
でも痛いのは嫌だ。
苦しいのは嫌だ。
口に出すのも憚れて心で叫ぶだけ。
卑屈で、人の目が、囁きが、いつも私を嗤っているように思ってしまうような妄想被害者。
そんな私がもうすぐ居なくなる。
ただ、思う事は、即死であまり痛くないといいな、なんてそんな馬鹿げた事だった。
「つまらない人生だね」
遠くで誰かの声が聞こえた気がした。